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03-花落ち種が落つ-

「テミスさん。ギルド長が呼んでいるのですが、このあとお時間はありますか?」


「ええ。大丈夫です、今すぐですか?」


「お願いできますと幸いです。」


分かった。と返答を返せば受付嬢は内線で通話を始めた。ギルド長に声をかけているのだろう。

さて。なんの話だろうか?

とはいえ、選択肢はそれほど多くはない。魔族の討伐依頼か。強力な魔物の討伐依頼か。ギルド長が直々に話をしてくることなんてそれくらいしかない。ただ、今回その可能性は限りなく低い。


このギルドで最上位の実力をもつ私に直接依頼が出されるのは、他の冒険者が失敗した時だけ。

そうでなくては下の冒険者たちが育たないし、私への指名依頼を毎回していたら報酬金が馬鹿にならない。

だから基本的に指名依頼がくるなら、先に私の耳に被害報告が入る。

だけど今回はそんな話は聞いてないんだよね。


だとしたら……ようやくかな?そうだといいな。


「お待たせしました。奥へどうぞ」


連絡は済んだのだろう。私を見送る受付嬢に感謝の言葉を告げて、ギルド長の執務室へと向かう。

受付嬢はついてこない。まぁ()()()()()()()()()、の方が正しいのだけど。


ギルド内の廊下を進めば徐々に空気が重くなっていく。その先。その深部に執務室はある。

ノックもせずに入れば、ひとりの男が待ちかまえていた。

岩のような図体で、鋭い眼光の()()

この人を老人呼んでしまえば私の中の老人の常識が壊れてしまう。身から溢れる闘志が、存在感が。彼は老人ではなく、老兵だと主張しているのだから。こんなにも戦意の漲っている老人がいてたまるか。


「テミス。よく来てくれた。まぁ座ってくれ。」


「3か月ぶりですか?お久しぶりです、ギルド長」


「あぁ。魔族討伐の依頼だったか?まだその礼を言っていなかったな。遅くなったが、ありがとう。助かった」


ギルド長はギルドに顔を出すことができない。それはギルド長の持っているスキル「重圧」のせい。

本人の意思に関係なく常に発動している「重圧」は、所有者よりも弱い敵の体力を減少させ続ける。多少強い相手にも有効で、体力の減少は起きないものの精神汚染や耐性低下のデバフが発生する。

ギルド長を目視することが発動の条件だからこそ、ギルド長はギルドに顔を出せないし、受付嬢もここにくることができない。


私の知る中でもトップクラスに強いスキル。

ギルド長は他にも「筋力増大」に「絶対切断」を持ってて、そっちのスキルはめちゃくちゃ欲しい。

まぁ「重圧」の対象が無条件なのがなぁ……。デメリットすぎていらないよね。


「それで、私を呼ぶなんてどうしたんです?」


「久しぶりの会話を楽しみたいが、仕方あるまい。テミスは長話が嫌いだと知っているからな。

ここから先の話は他言無用だ。

結論からいえば王都からテミスへの招集があった。

招集時期は来年の年初。全ての冒険者ギルドのトップ冒険者の中で最強の者を決めるそうだ。」


ほー。まぁそれは構わない。退屈だけども。だってやりすぎたらダメでしょ?

うちの冒険者ギルドのメンツもあるから相手を嬲ることも許されないし。ただ……


「最強を決めて、どうするんです?」


ギルド長は一拍置いてから話を続けた。


()()()()が現れた。その二人と共に魔族領へ侵攻する者を決定する、それが招集の目的だ。

……あまり驚いていないな。」


「驚いた方がよかったですか?物語にしか登場しない勇者と賢者が二人も現れた!?なんて。

そもそもギルド長だって同じ穴の狢でしょう?物語にしか存在しないと言われていた()()なんですから。」


「それもそうか。まぁそういうことでウチのギルドからはテミスに行ってもらいたい。どうだ?」


どうだもなにも、私の目的はそこなのだから答えは一つ。


「いいですよ。勇者と賢者と一緒に魔族領に行ってきます。」


「大きく出たな。まぁそうなるだろうが。……任せたぞ。そして、死ぬな。」


微笑みを返してギルド長の部屋を後にする。


さあ、面白くなってきた、のかな?これだけ待ったんだから面白いよね??

少し高ぶった気持ちを抑えるためにも魔獣でも焼きに行こうかな、楽しみ。

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