19-慈雨-
4人の足取りは迷いなく。荒れ果てた軍事エリアを進んでいき、中央エリアの防壁が視界に入る。
「防壁を破壊します。なので、下がっていてください。」
3人からの返事はない。代わりに3人の足音が止まり、私の足音だけが響き渡る。
この程度の防壁なんて飾りでしかない。
私の熱線を防ぎきったハンスの障壁魔法の強度の足元にも及ばないのだから。
熱線を展開する。
最大火力ではない。それは周囲の環境を侵攻不可なものに塗り替えてしまうから。
火力を調整し、熱線を解き放つ。
その熱量は空気を焦がし。
防壁をめがけて一直線に突き進んでいく。
熱線に触れた防壁は溶け落ち、綻び。周囲に熱という暴力を振りまきながら輝く。
その輝きが照らす先を消しながら町へと破壊をもたらし。
――熱線の軌道が上方向に曲げられた。
そのまま熱線は空へと向かい、細くなり消えた。
「よかったぁ。防いでくれた。そうだよね。そうじゃなきゃね。」
防いでくれるって、信じてたよ。
もし防がれずに終わってしまっていたら。それだけが不安だった。
その不安は払拭され、逆に予想外の防ぎ方をされて期待は高まった。
どんな方法で。どんな魔法で防いだのか。
今すぐ戦って知りたい。
でも、私にはやらなきゃいけないことがある。神様の代行者として、魔族の数を減らさなきゃいけない。それこそが当初の目的なのだから、見失ってはいけない。
今の一撃をもって、中央エリアからは住民の避難が開始するだろう。
その魔族をここで仕留めれば目的の達成が楽になる。逆に、逃がしたのなら面倒になる。
自制して、戦いたいと逸る気持ちを抑え込んでいれば、3人が駆け寄ってくる足音が聞こえてくる。
「道は出来た。進め、勇者アーサー!
…死なないでね。私もすぐに行くから。」
3人は、早く先に行ってね?
覚悟のこもった応答もいらないから早く行って。
私を置いて先に侵攻する三人を見て、思う。
バカだよね。
私がただの一度の熱線で、魔力消費を回復する時間が必要になるわけがないのに。
冒険者の頂上決定戦で熱線を連発していたのに。
その様子をゲイルは知らないけど、アーサーとマーリンは見ていたのに。
私は魔法を展開する。
――属性混合魔法。
岩と火を主軸に。
遠隔魔法展開のスキルを使用して。
同時魔法展開のスキルを使用して。
中央エリアを囲うように。
マグマを放出した。
溶融した鉱物の液体は、ドクドクどろどろと脈打ち、近づくもの全てを飲み込む。
この時間稼ぎがしたいから、私は残ったのだ。
雨が降れば固まってしまうし、それは水魔法をかけられても同じ。ただ、どちらにしても時間はかかる。
炎の壁を作りだしてもよかったのだけど、継続的に魔力を消費する上、範囲が広い。私の魔力量でも、それは無視できない影響を与える。なら、展開自体の魔力消費は膨大でも長期的にみれば得なマグマが最適だった。
ただし、この魔法は火魔法だけでは使用できない。それに中央エリアの周囲に展開するなど一人で使用できる規模の魔法ではない。
だからこそ、3人は先に行かせた。まだ私のことを明かすには早いから。
「私も早く行かなくちゃ。魔王、楽しませてね?」
時間稼ぎが成功しているうちに魔王を倒す。
時間制限つきの戦いは今までしてなかったなあ。
この縛りは面白くなるのかな?楽しみ。




