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09-慈雨-

出立して軽い挨拶が済めば、勇者と賢者から質問が飛んできた。戦う時に心掛けていることや魔法のイメージ、戦術の立て方など。

戦う時に心掛けることなんて自分が勝つ道筋だけだし、魔法のイメージは簡潔で速度優先。戦術なんて一度も立てて戦ったことがないのだから私はまともな解を答えられない。

仕方がないから、そのまま私の答えを伝えれば「すごい」と()()()返してくる。


不愉快な時間だった。


アーサーもマーリンも何がすごいのか言わない。

それを補足するように治癒魔法使いのゲイルが一般的な答えを教えてくれたことだけが救いか。

自分にとっては当然のことを言ったら驚かれて、どうして驚くのか説明されなかったら胸にしこりだけ残るじゃないか。


戦闘面じゃなく、こんなところでゲイルがいることに感謝するとは思わなかった。

まぁ戦闘面で感謝する機会なんてなかっただろうけど。


一般的な答えは知っているだけで出来ることが増えそうで、私としても無駄な時間じゃなかった。

戦う時に心掛けることは、敵の初撃を絶対に防ぐことが重要とされているらしい。

役職に準じたスキルしか取得できないのだから一撃目を防いだ先は読み合い。

これ、私には通用しないね。可哀そうに。


魔法のイメージの一般論は私と真逆で、威力優先で精密なイメージだった。

これは魔法使いがパーティーで動くことが軸に考えられているから。突破口になる火力。味方に当てない精密さ、それが求められているから。…退屈じゃないのかな、一般的な魔法使いたちは。


戦術は、どうやって初撃を当てるか。そこに至るまでの道筋を組み立てて望むとのこと。


まぁ一般常識を知ったからと言って、私がそれを実践することはないけどね。

「この戦術で戦ってやろう」「初撃はこれだったからこう来るはず」なんて思ってる相手の予測を無駄なものにさせたら相手はどんな顔をするだろう。勝ち筋の見えない戦いを前にどう思うのだろう。きっと絶望するよね。


あれ?これ、知らないうちにやってたな?

まぁ絶望の表情の意味が知れたし、いいか。


「というか、アーサーもマーリンも。トップ冒険者同士の戦いを見ていたでしょう?

彼らは全員、私と同じ。初撃を防ぐことなんて考えず。ただ高めた一撃を相手に通すことだけを考えてる。攻防じゃなくて矛同士のぶつかり合い。

私がどう戦うか、よりも自分の矛をどう磨くか。それを聞く方がいいと思うけど。」


「矛を、磨く…」


「そうしたら私も。テミス姉様のように、魔法を使える…?」


これ以上、答えにくい質問をされてもイライラする一方だから質問の方向性を変えさせないと。

私について聞かれるのは探られてるみたいで不快だしね。


「二人のスキルは何で、どんな効果なんです?それを知らないと答えられないし、分からない。」


「僕のスキルは、聖剣召喚と不屈の2つです。」


アーサーの話した勇者のスキルは、さすがというべきか。異常というべきか。

不屈は戦意がある限り継続回復するという常時発動型のスキル。

そして、聖剣召喚。こっちが異常。不屈も十分強力なスキルではあるけど、聖剣召喚の前だと霞む。

聖剣を召喚するという簡潔なスキルだが、聖剣の性能がエグい。

・破壊無効

・所有者の身体強化

・所有者の直感強化

・与ダメージへの治癒阻害

・剣身に硬度無視効果

聖剣を召喚した時点で身体と直感が強化され。剣身に触れたものは問答無用で切断し、その怪我は治癒することができない。

聖剣を使えば圧倒的に有利に戦うことができるわけだ。ダメージトレードが成立しないのだから。

強いけど、私としては聖剣召喚はいらないかな?硬度無視があると戦いがつまらなくなりそうだし。それよりも不屈の方が魅力的かな?治癒魔法を使う手間なく、より長く戦えるわけだから。


で、マーリンの賢者のスキルはひとつだけ。

なのだけど。こいつらのひとつはスキル上でしかない。

全魔法適正。それが賢者のもつ唯一のスキル。その言葉の通り、全ての魔法を扱うことができる。

私が持っている魔法を補助するスキル、魔法威力向上や魔力消費減少、魔法速度向上などを持っていないのは全魔法適正が単体で強すぎるからか。それともマーリンがまだ取得できていないからなのか。

…このスキルは欲しいなぁ。でも我慢しないと。

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