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救星の大樹  作者: キララ
第1章 白き騎士の誕生
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第3話 悪を狩る牙

 捕らえた犯人達の移送を終え、2人は魔警本部へと任務の報告へ訪れていた。

「それでは、任務の報告を」

 魔警本部は、100の階層からなる高層ビルである。

 ビルの80階、豪華な家具に彩られた一室で、1人の女性が口を開く。

 ()()()()()()()、対魔力災害警察の副局長

 今年で30代後半とは思えない美貌を誇り、金色の長い髪を編み込んだ彼女は、虎条星羅らを魔警に推薦した人物であり、魔警内部ではその鋭い眼光と厳格な性格から恐れられている。

「では、私の方から振り返る意味も込めて、最初から説明致します。」

 湊は、ホログラムで今回の作戦の概要を映し出す。

「事の発端は2週間前、()()()()()()()()から1つ目の”()()”が盗まれました。

 犯人は今回の事件と同じく、裏組織の小規模犯罪グループ

 研究所の防衛は極めて厳重でした。

 ですが、犯行グループは樹宝を奪取」

 そう、本来であればこんな小物に研究所のセキュリティが敗れる筈が無い。つまり……

「我々は事件の裏には、犯行を手助けする黒幕がいると考えました。

 ですが、後日この犯行グループを発見した頃には組員の全員が死亡。

 樹宝も消えていました。」

 湊は顔をしかめながら言う。

 おそらく、口封じだろう。

 今回の犯人も、あの時逃げられたとしてもそうなっていた筈だ。

「この事件から、我々は()()()()の樹宝を護る為それぞれに更なる警備を施しました。

 そしてここからが今回の事件。

 今回は()()()()()()()()が標的となりました。」

 研究所にはそれぞれ、樹宝の警護の為、追加で魔警から人員が派遣されていた。

 ちなみに、星羅と湊は研究所の警護ではなく黒幕の調査に当たっていた。

()()、研究所の近くにいた私達が樹宝の奪還に向かいました。

 が、我々が取引場所に付いた頃には既に取引相手は立ち去っていました。」

 ルナが、手元の資料に目を通しながら若干顔をしかめる。

「そんな顔しないでくださいよ、まさかあんなに早く姿を消されるとは」

 星羅が申し訳なさそうに弁明する。

「お前は悪くない、悪いのは指示を出したこっちの木偶だ」

 ルナは湊を指差しながら、ジト目で見つめる。

 湊は苦笑いしながら、報告の続きを再開する。

「ボスを追い詰める所までは問題無かったんですが、追い詰められた犯人は樹宝と共に盗んでいた”()()()”を服用し肉体を強化、捕縛が困難と判断した為、星羅が制圧

 残りの構成員は捕らえて尋問中ですが、何か核心に迫った事を知っているかは微妙ですね」

 一息吐いて湊はホログラムに映った情報を整理した後

「以上が今回の犯行を含めた事件の全容です」

「未だ黒幕の正体は不明、樹宝も2つ盗まれた、状況は最悪ですね」 

 湊の発言に星羅が付け加える

「いいや、2つじゃ無い。

 そっちの事件と同時刻、()()()()()でも樹宝が盗まれた

 そちらの事件の犯人達も裏社会の人間だ、未だ捕まっておらず追跡中。」

 ルナが発した新たな情報に二人は驚く。

「二人も知っての通り、樹宝は()()()の封印を護る計5つの宝石、つまり、あと2つだ」

 宇宙樹とは、巨大隕石から変貌した4つの魔力を発する大樹

 その樹は人類に魔力という恩恵をもたらした、だが、それ以上に大きな破滅をももたらした

 その樹の発する魔力は非常に高濃度かつ広範囲に広がった。

 魔力に対する耐性が弱い者は、その命を枯らす事となった。

 その上、宇宙樹の周囲には様々な天変地異が巻き起こった。

 ”建造物を軽々と吹き飛ばす竜巻””大地すらも焼き焦がす炎””荒々しく島をも飲み込む津波”

 様々な自然災害に加え大樹からはその環境に適応し、人間を喰らう”()()”が生まれ出でた。

 そのような天変地異から人類を護る為、ここ()()()()()()()()では宇宙樹に対し魔力による封印を施し、その鍵を5つの宝石に分けた。

 それが、樹宝である。

「今更なんだけど、なんで奴等はそれを知ってるわけ?」

 樹宝による封印は今回の様に狙われる事を防ぐ為、騎士団及び魔警の一部の人間にしか知る事は出来ない。

「まぁ、黒幕に情報を流している奴がいるんだろうな」

「それは間違いないだろう、騎士団内部かはたまた魔警内部かは定かではないがな」

 湊の発言にルナが同意する。対して驚いていない所を見るに薄々検討は付いていたのだろう。

「それで、これからどうする?

 その裏切り者を探す?それとも残りの樹宝の警護?」

「それについてなんですが、こちらをご覧下さい。」 

 そう言うと湊は新たな情報をホログラムに映し出す。

 映し出されたのは一枚の写真、今回の犯人が最後の瞬間服用した液体の入っていた小瓶だ。

「星羅はまだ知らなかったよな。ここに入っていたのは”()()()”と呼ばれるもので、宇宙樹の幹から高濃度の魔力が染み出したものだ。

 研究所の研究対象の一つでもある。」

 確かに小瓶の側面には、研究所のマークが印刷されている。

 研究対象である宇宙樹を現したものだ。

「この液体を服用すると一時的に驚異的な力を得られると言われている。

 俺もこの目で見るのは初めてだったがな」

 湊の発言を聞いていると一つの疑問が生まれた。

「一時的?時間が経つとどうなるの?」

「魔力に対して適正のないものは10分程で死に至るらしい」

 湊が若干言いずらそうにそう言う。

 それを聞いた星羅は拳を握り締める。

「その情報も極秘だったんでしょ?てことはそれも裏切者が漏らしたって事だ。」

「そう言う事、そして魔樹液を知っている奴はかなり限られる。

 一人だけその情報を知っている可能性のある”心当たり”がいる。

 これからそこを当たりたいと思います。」

 湊の発言にルナは頷き、真剣な顔つきで言う。

「了解した。虎条湊、虎条星羅、両名に命ずる。

 二人は魔樹液に関する情報を集めろ、こちらは今回捕らえた構成員達から新たな情報が出ないか調べてみよう。

 分かっていると思うがもう後が無い、宇宙樹が解放されればボレアスは混沌に陥るだろう。

 最終手段だが、騎士団への救難要請も視野に入れている」

 騎士団は通常、活動している宇宙樹への対応をする組織だ、その上今回は裏切者が騎士団にいる可能性もある以上、迂闊に助けを求める訳にはいかない。

 もし、その裏切り者が騎士団でも上層部の人間であった場合、騎士団全体が魔警と敵対してしまう可能性だってある。

 決定的な証拠を掴む迄は、騎士団に対しコンタクトは取れない。

「「了解」」

 それに……

 自らは手を下さず弱者を捨て駒の様に扱うそんな卑怯者が裏にいる

 例え悪人で在ろうともそんな仕打ちを受ける姿を見せられて気分がいい筈もない

 必ずこの手で報いを受けさせてやる、悪を狩る牙として……

 

 そうして星羅は拳を強く握り締め決意を固める

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