意志
「どう言うことだ?」
「言っただろう、俺は言葉を現実にできる」
「だからってなんでこんなこと」
「この結界を破れる可能性がある刀をそのままにしておくわけがないだろう」
握った柄だけが虚しく残り、金属の重みすら失せていた。
「どうすれば」
『お前は刀がなければ戦えないのか?』
「え?」
そこは真っ白い彦齋の精神世界だった。
『お前は刀がないと戦えないのか?』
「それしか教わってないし」
『そう言うことではない』
「じゃあどういうこと?」
『刀を持った時お前はなんと言った?』
「それは」
『言い訳を聞きたいわけではない、お前はただ世を良くしたいのではなかったのか?』
「そうだけど」
『武器に頼るな、お前自身が戦い誰かを守ると言う意思を掴めば自ずとそれは見える』
「意志」
刀がなければ戦えないのか、そう言われて正直心に来るものがあった。でも俺自身が戦うと言う意志は朧との戦いですでにできているはず、あとは誰かを守る意志これは今まで漠然としたものだったが柚葉が人質に取られたことで身近な人が危機に陥ることを実感している。今まで実感はなかったがそれでも柚葉ではなくとも誰かを守ると言うことは誰かの大切な人を守ると言うこと、だから俺はここでそれを身を呈して実践しないといけない。
「分かった、それがなにを意味するのかを」
『ならもう見えてるはずだ、お前の刀が』
俺は気づかないうちにもう一本の刀を握っていた。
それは今まで共に戦ってきた刀。
『これは名がない、だから使える』
「そうだな、俺は戦う「無銘」を持って」




