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星の贈りもの  作者: ちゃもちょあちゃ
第二章 真涙偽血
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第39話 好奇心に飲まれる悪意②

 「そうだ!さっきは葵君に色々聞いたから、今度は君が私に聞いて良いよ!何でも!」


 「ええ?質問ですか?」


 何も思い付かない。せっかく目の前に研究者がいるのに。今後の役に立ちそうな事を聞きたいが、とりあえず無難な質問で繋ぐことにしよう。


 「荒冷さんは普段、何を研究してるんですか?」


 「私はね〜、ギフトの研究がメインかな。中でも人間とギフトの分離に目をつけてるんだ」


 人間とギフトの分離。全く耳にした事のないワードの組み合わせに困惑する。


 「人間とギフトの分離!?な、何ですかそれ?え?そ、それは人間とギフトがバラバラになるって事ですか!?」


 「そうそう」


 自分の発言だが、人間とギフトがバラバラになる、全く意味が分からない。荒冷さんにそうそうと言われたが何も分かっていない。理解がないまま、次のステップについて聞く。


 「え?そんな事してどうするんですか?」


 「今に始まった事じゃないけどさ、クズハキ足りてないんだよね。基本的に、ギフトを有してない人はクズハキになれないから、人材の確保が難しいの」


 「あー、確かに。ギフトを持ってても、クズハキにならない人が大半ですしね」


 「そこでだよ!人間と分離させたギフトを、何かしらの武器とかに付与するの!それが安定して量産出来れば、ギフトを有してない人でもクズハキとして活躍しやすくなる!それが私の目標!」


 「なるほど!そうなったら人手不足も、多少は解消されそうですね!」


 「そうなんだけどね、これが中々難しいんだよね」


 「人間とギフトの分離ですか?」


 「それも難しいし、分離させたギフトを何かに付与させるのもね」


 「へぇー、そうなんですね」


 「そもそも難しい以前に、人間とギフトを分離させること自体かなり危険でさ」


 「まあ、なんか明らかに危なそうですもんね」


 「そうなんだよね。ミスったらワンチャンどころか、普通に死んじゃうんだよね」


 「し、死ぬ?え、え!?」


 「だからね、分離させて付与させて、みんなに使わせたいレベルの優秀なギフトを扱うのがすごくリスキーなの。ギフトの持ち主が死んじゃったら、元も子もないし」


 「は、はあ。なるほど」


 「そこで岐阜は実験の場所に最適なんだよね!死んでも問題なくて実験台になれる、ギフトを有した犯罪者がうじゃうじゃいるから!バイオレンスで実りのある実験し放題だよ!」


 「え!?岐阜って犯罪者で溢れてるんですか?めっちゃ平和で安全になったってよく聞きますけど」


 「えー?何それ。そんなの嘘っぱちだよ。岐阜はクズハキか犯罪者の2つの人種しかいないよ」


 「そ、そうなんですか。そんな危ない所だったんですね」


 何か聞いてはいけない話題を聞いたような気がした。話を変えようと新しい話題を探していると、理恵加さんが言っていた月見里家の事を思い出す。


 「ギフトって遺伝したりしますか?あっ!特に深い意味とかはないですよ!ちょっと気になって。さっき荒冷さんも、僕たちの親のギフト聞いてたし」


 「するよ。ギフトは遺伝する。今まさに、その研究も進めているとこだよ!もう少しで、遺伝する条件も判明しそうなんだ!そうなれば世界はもっと良くなるよ!」


 荒冷さんは、常識のようなテンションで遺伝することを言う。理恵加さんは一般の人は知らないと言っていたが、WSEOの研究者は一般の人ではないだろう。まあ、ギフトの研究をしているなら知っていてもおかしくない。


 「葵君とか理恵加ちゃんのみたいな、優秀なギフトが増えたら良いんだけどね」


 「理恵加さんの鑑定が優秀なのは分かるんですけど、僕のギフトもそんなに優秀なんですか?」


 「もちろんだよ!ポテチって大きいのも小さいのも入っているでしょ?その大きいポテチが君」


 「絶妙に凄さが分かりにくいですね」


 「ポテチが入っている袋は地球だよ」


 「僕ってかなり凄めですね」


 研究者の例えのうまさは別格だ。


 「それにしても最近の研究は、アメリカの研究所での経験が生きてるよ」


 「アメリカの研究所ですか!?すごいですね。めっちゃ頭良いイメージしかないですよ」


 「確かに、めっちゃ頭の良いやつしかいなかったな。アメリカにいる時に星石を思い付いたんだよね!かなり技術はパクったけど」


 「え!?星石って荒冷さんが作ったんですか!?」


 「そうだよー。日本に戻って来てから、あっちの技術に色々付け足して作ったの」


 「すご!でもパクったって、大丈夫なんですか?アメリカに怒られたり...」


 「大丈夫大丈夫!アイツら細かいこととか気にしないし、国土と同じで心もバカみたいに広いの!今頃ハンバーガー食べて笑ってるよ。あははっ」


 そう言ってから荒冷さんは、手を叩きながら1人で爆笑し始める。笑い疲れたのか、急に静かになる。


 「10数年も前だけど、楽しかったなぁ。今でも思い出せるよ」


 「え?荒冷さんは何歳なんですか?20代じゃないんですか!?」


 勝手に20代だと思っていた。アメリカに行ったのが数10年も前なら、今は少なくとも30代?20歳以下でアメリカの研究所に行けるはずがないだろう。

 

 「出世が速い男!ここにも1人発見!年齢は秘密だね」


 「えー、秘密ですか?制服着て高校に居ても違和感なさそうに見えるんですけどね」


 「もー、君はそんなに出世がしたいのか!」


 照れ隠しか通常運転か分からないが、あたふたしている荒冷さんは可愛い。


 「そう言えば、月見里君も初めて会った時、そんなこと言ってくれたな」


 「月見里さんが?月見里さんと会ってから1日も経ってないけど、何か意外ですね」


 「あの子は心の底から思ってない可能性が高いけどね。おっ、もうこんな時間だ。今日はありがとね!」


 荒冷さんは腕時計を見ながら言う。


 「こちらこそありがとうございました!


 「また今度ね〜。ばいばーい」


 手を振る荒冷さんに、お辞儀をしてから研究室から出る。

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