2軒目③それからひとりめの彼女についてと、初デートの思い出
なんで教えてくれなかったの
まったくそんなの、気付かなかった
むしろミサ姉は俺に無関心だと思ってた
節目節目で連絡しても素っ気なかったし
「いやいや、君ずっと彼女いたじゃん」
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学生時代、この子と添い遂げるんだろうな、と思う彼女がいた。
俺はアイスホッケー部員で、彼女はマネージャーだった。
優しくて可愛くて献身的で、こんな素晴らしい彼女がいるなんて俺はなんて幸せなんだろう!って思ってた。
4年間の終わりは、呆気なかった。
「やっぱり君との未来は想像できない」
みたいなことを言われた翌月には、彼女には別の彼氏ができてた。
多分、もう次の相手ありきで、俺に見切りをつけたんだろうな。
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「そんな相手がいて幸せそうな君に近付くなんてできなかったよ、私には」
「別れたの知ったの、5年前のあの時だし」
ぐうの音も出ません。
「連絡くれるの結構嬉しかったんだよ。やっと医学部受かったよ!とか救急科に決めました、とか今年のクラブはどうする?とか」「そんなつもりなかったけど、素っ気なかったかな。ごめんね」
それは素っ気なかったと思う。俺に興味なんてないと思ってたし、会話が続かなかった。
「はは、私あんまコミュ力ないからさあ、ごめんね……」
いや別に謝ってほしいわけじゃ……
「じゃあどうしてほしいのよ」
ぐうの音も出ません。
「君が浪人生だった頃に、話を聞きたい、聞いてほしいって遊びに来てくれたことがあったじゃない?あれ、すごく楽しかった」
そっか。
「別れ際に『抱きしめさせてほしい』って言われたの、すごくキュンとしちゃった」
そんなこともあったなあ。
「またいつか誘ってくれるかな?とか思ったけど、そんないつかは来なかった」
……
………………
実は、何度かひとりで奈良に行ってた。彼女がいた間も、別れてからも。
「もしその時声かけてくれてたら、二つ返事で付き合ったのに」
「そうやって繋がりがあったら、何かの拍子に付き合って、もしかしたら」
「もしかしたらいま、一緒に暮らしてるのは、私だったかもしれないね」