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夢のまた夢  作者: みゆき
7/10

5年前のこと

久しぶりに、かがくクラブの卒業生たちに招集がかかった。

マキが挙式するから、って。


いい式だった。

それと同時に、少し苦しかった。結婚も考えていた彼女とお別れした後だったから。


--------------------


結婚式だからって着飾ったミサ姉は綺麗だった。


ミサ姉は研修医で、俺は国家試験に向けて猛勉強中の学生。

「彼氏できたんだよね」

ってミサ姉の報告に、胸を刺された。


飲みすぎて真っ直ぐ歩けなくなったミサ姉を介抱しながらホテルに送り届けたら、そのまま部屋に連れ込まれた。


「ねえ君は、私の事どう思ってるの」


って聞かれて

なんかもう、感情がぐちゃぐちゃだった。考えたことなかったんだよ。憧れだった。尊敬だと思ってた。


その感情が、実は愛情だったのかもしれないって気が付いてしまった。

いま気付かされても、手遅れじゃないか。


ミサ姉はいま幸せなんでしょ、と聞いたら

「どうかな、わかんない」だって。


昔からミサ姉は、すごいのに、俺がこんなに尊敬してるのに、自己評価がとても低かった。

自暴自棄で自傷的で、自分を大切にしないところがあった。


それにつけ込みたくなんてなかったのに、その日俺はミサ姉を押し倒してしまった。ミサ姉はふにゃふにゃ笑っていた。すごく気持ちよかった。俺にとって忘れられない夜。


何度も「私の事どう思ってるの?」って聞かれて、苦しくて、刻みつけられて、忘れられなくさせられて、ミサ姉を恨めしく思った。

自傷に巻き込んだだけのくせに、って。


でも俺にとって忘れられない夜で、その後何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も

その夜を思い出しては焦がれた。


--------------------


「あの時、すごく悪いことしたなって思ってるよ」


というミサ姉になんてこたえるべきか、俺にはわからない。

ずっと俺のことが好きだっただなんて言われたら、全部説明がついてしまうじゃないか。

ただの自傷じゃなくて、好意故の過ちだったとしたら。


あれは過ちじゃなくて、最後のチャンスだったのかもしれなかったとしたら。

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