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夢のまた夢  作者: みゆき
5/10

ふたりめの彼女

結構、焦ってたんだよね。


学生時代付き合ってた子と別れてから、誰かから好意を向けられてもその気になれなかった。

誰も俺に興味を示さなくなってから気付いた。このままじゃダメだって。


マッチングアプリ、街コン、相席屋

空いた時間をそういったものに費やした。

結果は散々。東京では、医者という肩書きにはあまり意味がないらしい。

それでも何人か会ってはみた、けど、

話とか価値観とか全然合わなくて、この人とはやってけないなとしか思えなかった。


そこまで思い詰めてることは知らずとも、俺がフリーであることを知る友人が、とある看護師を紹介してくれた。


「はじめまして、ミユキです」

へー...ミユキちゃん、ね。


話してみると、まあ悪くないじゃんって思った。

これまで出会った子たちに比べれば全然、話も合うしうまくやってけそうだと思ったし、

なにより友人の紹介だ。

俺は、そういうのに弱い。


『誰か』の好意を無下にできない。誰も傷付けたくない。誰にでも優しくしたいし、誰も傷付けたくない。


何回かデートしてから、酔った勢いもあって手を出して、それから付き合い始めた。

--------------------


そんなに好きじゃなかったけど、それなりに順調だったんだよ。


時間を合わせて会って、出かけたり家でダラダラしたり。

ちょっと金銭感覚が合わないというか、俺頼りすぎるかな?と思うことはあったけど。


1年くらいたった頃かな。彼女に異動の命がくだった。

「新しい場所でもがんばらなきゃ」とか言ってた。

でも無理だった。


実際なにがあったのかは知らない。でも彼女は追い詰められて、心が壊れてしまった。

元々東京が地元なわけじゃないし、家族ともうまくいってないそうで、拠り所は俺だけだと言った。


俺は、そういうのに、弱い。

退職した彼女を俺の家に迎え入れて、衣食住を提供して、病院に連れて行った。

行きたいというところ、食べたいというもの、彼女の心を癒せるかもしれないものをできるだけ与えようとした。

でも彼女はどんどんダメになっていった。


なにより彼女は、よく食べるようになった。ベッドの上から降りないのに。

そして吐いた。太りたくないからって。

いつの間にか、彼女の体重は出会った頃の2倍をゆうに超えていた。



そもそも金銭的に余裕があったわけじゃない。


医者といっても、勤務医はそんなに裕福になれない。都内で生活すると、なかなか貯金もできないくらいの給料しかもらえない。

でもまあ、看護師の彼女と2人で稼げばそれなりに余裕を持てるくらいのはずだった。

それがまあ、無給で家に転がり込んできてしまった。それだけなら全然支えられるくらいだったんだけど。


食費がかかるんだよ、膨大な。

それを吐くんだよ、食べて食べて食べて吐いて吐いて吐く。

やめろって言ってるのに、高額なダイエット薬を買う。しかもまずいからって飲まない。

通院費もばかにならない。何錠も必要なんだ、でも本当に効いてるのかわからない。

まあ、放っておくとすぐ死のうとするわけじゃなくなったから効いてるのかな。最初はそんな感じだったから、そばに居るためにバイトも行けなくなった。

光熱費も水道代も、節約という概念がない。余裕がないからだと思うけど。


貯金をするどころか、借金してるんだよ俺。医者でもない親族に。


それを伝えても彼女は「それでもいいから見捨てないで」しか言わない

通院先にも、役所にも相談したでも彼女と俺を救ってくれるひとはどこにもいない


彼女は家にずっと居るけど、炊事も洗濯も掃除もしない、というか、ほぼベッドの上からおりない。たまに近所で大量のお菓子を買ってくるくらい。

電気をつけるのも消すのも彼女が勝手にする。当直明けで帰って眠くても電気は消せないし、構えといってくる。朝早く出なきゃいけない日も、彼女が起きないなら電気をつけられない。


そんな状態で、俺を全く気遣うことをしないで、

「見捨てないで」「死ぬから」「はやく帰ってきて」「死ぬから」「他の人と連絡とらないで」「死ぬから」

とか言うんだ。


そのまま2年経った。

見捨てればいいよな、もともとそんなに好きだったわけじゃないし。

でも、もしそれでなにかあったらって思うと、どうしようもなく怖くて。

優しさだけが取り柄だと思っていたのに、彼女に優しくできなくなっていく自分も嫌になって、それで

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