2軒目①
どういうわけか、ミサ姉と2人きりである。
どういうわけもこういうわけも、マキの息子が急に熱を出したとかでやっぱり帰る、ってなって
まあそれは仕方ないことで
ミサ姉と2人きりである。
「どうする?私はこっちに宿とってるから、何時まででもいけるよ」
彼女、のことを考えると、遅くなりすぎるわけにもいかない。女性と2人で飲みに行ったとバレればたぶん監禁される。
……まあ、バレるわけないし。
行こうか、というとミサ姉はにやにやしながら
「そう来なくっちゃ」
と言った。
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「いい雰囲気のお店だね」
ほの暗い照明の下、俺たちは向かい合って座った。
「飲みすぎて酔いすぎないようにしなきゃ」
と嘯くミサ姉に、俺はなにも応えられなかった。
「こういうとこ、よく来るの?」
いや、はじめてだよ
「へえ、シティボーイなのに」
お金も時間もあんまりなくてさ
「あー、忙しそうにしてるもんね。救急科とかやばいでしょ
しかも薄給なんだ……東京、怖いね」
うん、それにかかるお金もばかにならないし
「ひえぇー」
「で、相談したい話って?」
ゴクン
喉が鳴る音が、ミサ姉にも聞こえたかもしれない。
言っていいのだろうか、
言ったらミサ姉、苦しむだろうな。ミサ姉のことだから。
でも、
やっぱり聞いてほしくて。
俺、彼女ができたんだよね。
「へえ、よかったじゃん」
それがそうでもなくてさ
時計を見る。まだ時間は十分にありそうだ。