かえりみち
からっぽの右手
終電を降りて、夜道をひとりで、とぼとぼ歩いている
連なる着信履歴をみてため息をつく。また数分後には鳴るだろう。
本音を言えば、ミサ姉の部屋で朝を迎えたかった。
でも僕らは大人になってしまった、
責任とかしがらみとか、そういうものに雁字搦めにされている。
全て捨てて、君を攫ってしまいたい。
そんな必要もないはずだった、かつての自分に勇気があれば。
鳴り止まない電話のなかでスマホが揺れる、メッセージ通知だ。
『今日はありがとう 気をつけて帰ってね またなにかあれば連絡して
こっちからあとは連絡しないから』
俺の彼女は俺のスマホの暗証番号を把握している
勝手にみられる。メッセージも着信履歴も。
SNSでのやりとりもすべて。
女性と連絡をとるだけで発狂する
だからミサ姉とのやりとりを見られたら、終わる。
・・・終わればいいんじゃないか?とも思うけど、俺にその勇気は出せない。
『おやすみ 大好きだよ またね』
返信を送った後、ミサ姉のアカウントを非表示にした。
さて、来ないであろう君との未来を迎える準備をしなきゃな。
まずは身軽になって、お金を貯めて・・・
がちゃ
ドアの奥から怒声が飛んできた
「なんで無視するの」
「遅い」
「待ってたのに」
夜中なんだから大声出すのはやめなよ
散らかったままの部屋。彼女が静かになると、やりかけていたであろうゲームのBGMが響いた。
つい、ため息が漏れた。
「わたしなんていらないんだ!!!」
俺は、否定も肯定もしなかった。




