scene.03
八月二十二日。
時刻は十三時半。
一日がもう直ぐ終わる。
最後の授業であるロングホームルームでは文化祭で何をやるのか話し合いだった。
「普通に喫茶店でよく無いか?女の子はメイドで」
男子生徒の声に女子生徒のブーイングが飛ぶ。
「それは男子がメイドが見たいだけでしょ?私達にメリットがないから却下よ」
「男ならメイドに憧れて当然だ。それのなにが悪い!」
「なに?図星を刺されて開き直ったの?」
「それなら男の娘カフェ」
女子生徒の反撃。
そんなやりとりを訊きながらオレはどちらでもいいのでボーと時間を過ごしていた。
「…也!優也!」
久志に呼ばれオレは現実に帰る。
「ゴメン飛んでた」
「後お前だけだ」
現状の把握の為に黒板を見た。
男装喫茶か男の娘喫茶。
その二択で正の字で記入され、お互いに同数の票がある。
明らかに男と女の戦いが垣間見える。
「優也後はお前の投票で俺たちの勝ちだ」
久志がガッツポーズで訴えてくる。
「優くん、唯たちの味方だよね」
また、別サイドから唯が涙目ですがってくる。
オレは席を立ち上がり黒板へ向かうとチョークを手に取る。
男装喫茶と男の娘喫茶に大きくバツをつけた。
クラスメイト全員から批判の声が上がる中。
「うるせ〜」と声を上げる。
「男とか女とか関係ないだろ。その方向で行くなら」
『逆転メイド執事喫茶』
黒板にデカデカと書いてやった。
「逆転、つまり男がメイド。女が執事。どうだ!」
教室が静まり返る。
「顔の濃い男子は裏方。女子でも接客が駄目な人は言ってくれ話は訊く。意見がないならこれで決定。それでいいか?」
意見の代わりに拍手が広まり『逆転メイド執事喫茶』に決まった。
「藤ノ井祭まで一ヶ月切ってる。クラス全員で準備する明日のホームルームまでに喫茶店で出すメニューを考えること、文化祭とは言えその時はオレたちは経営者。お金をもらう立場だ。馬鹿な考え方でもいいが全力で馬鹿をやろう」
なんか知らないスイッチが入ってしまいオレが文化祭だけの実行委員長になってしまった。
それからは滝の如く時間が流れて行った。
授業の合間を縫って文化祭の準備は行われ、休み時間、放課後を使って話し合いや衣装の作成。休日返上しての買い出し、滞りなくと言うのはおこがましいが今のところ順調に進んでいた。