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ハンドメイドダンジョンってこと~?



「作戦会議?」




優雅に食後のティータイムをおっぱじめたゼニスくんは、怪訝そうな顔を向けてくる。




「そうだよ。これからこの《迷宮(ダンジョン)》を復興するにあたって何を優先課題として行動していくかの話し合いをするの」

「優先課題、ね・・・」




お行儀悪くテーブルに肘を着いてお茶を啜って思案顔のゼニスくん。

私も腕を組んで考える。




「てゆーか、復興する為に必要な条件って何?」

「【人族(ティアーノ)】の《探索者(ダイバー)》が来る事と【異世界人】が来ない事」

「【人族】"だけ"来る様にするのか~」

「アイツらが《迷宮(ダンジョン)》で活動する事によって溜まる《(おり)》が復興に一番必要だな。異世界人だと意味無ぇ」

「異世界人云々は置いといて、とりまこの《迷宮》に人を集めれば良いって事ね?」

「早い話な。でも餌が無ぇ」

「エサかぁ」

「《魔物》を倒したら一定確率で落ちる、ドロップアイテム。

先ずはそれを確保しなきゃ《探索者》達がわざわざ此処に潜りに来る、意味も旨味もねぇだろ。

餌の無ぇ《迷宮》に人は来ねぇよ。

だからある程度の数の餌を確保する事が"最優先事項"になんな」

「ふーん・・・・・・じゃあその餌って言うのはどうやって確保するの?」

「作るに決まってんだろ」

「誰が?」

「俺が」

「・・・・・・・・・は?ゼニスくんが?作るの?全部?」

「あぁ。さっきも言っただろうが、【魔族(ナハトーン)】は物作りが得意だって」

「言ったけど、魔道具ってやつだけじゃないの?ドロップアイテムもなの?!全部手作りなの?!全部?!」

「当たり前だろ?何処の《迷宮》も《管理者》が用意してる。そういう設定になってっからな。

そうじゃなきゃどうやって魔物から便利アイテムなんか落ちてくんだよ。そもそも無から有は生まれねぇだろうが」

「いやそうだけど!そうだけれどもっ!!」




驚愕の事実。



ドロップアイテムは生産者の方々がひとつひとつ丁寧に、丹精込めて作っていました!



ドロップアイテムなんて、ゲームなんかじゃダンジョンに湧いて出てくるモンスターを倒せば、当然の様にポロポロ落ちてくる物だからなんの疑問も持たずに貰ってたけど・・・・・・。




「《迷宮》の舞台裏ではそんな苦労があったなんて・・・・・・」




そりゃオマケ付きキャラメルだって、オマケの玩具は別の会社が製造してそれを製菓会社が仕入れるんだろうけども。


ファンタジーRPGの世界にそんな裏事情があったなんて思いもしなかった。




「その餌・・・じゃないや、ドロップアイテムは大体どのぐらいの数必要なの?あと作るのにかかる時間と費用は?」

「数は有るに越したことはねぇ。どんだけ作っても『不足』する事はあっても『余る』事はないからな」

「費用に関しましては、我が領土にて基本的に必要な材料を栽培しておりますからな。あとは調合に足りない細々した素材を他者から仕入れる際に幾許か・・・」

「栽培?調合?え、此処って何がドロップアイテムのメインなの?」

「薬草とポーション、あと宝石」

「此処は《薬草》と《宝石》の迷宮だと最初に申したじゃろう!」

「あ、最初頃のやり取りは、異世界召喚の驚きでまるっきり脳に入ってきてないから覚えてないと思って貰って結構です」

「自信たっぷりに言い切るでないわ!」




掌をロプスさんに向け堂々と言い切ると、触手をふりふりプンスコ怒る埴輪。


だって仕方ないと思わない?

いきなり知らない場所に連れてこられて化け物と対峙させられ、挙句私も骨になってるとか頭回るわけないじゃん。


何か色々言われても、右から左に光の速度で通り抜けるに決まってる。




「その薬草とかポーションを作るのに時間がかかるの?」

「薬草は生えりゃそこそこ直ぐに用意出来る。ポーションはその薬草を元に調合すっから、乾燥とかで割と時間がかかる」

「宝石は?」

「・・・・・・それが一番時間がかかる。今は全く手元に備蓄が無ぇ。入手も困難。準備出来ないと思っていい」

「そうなんだ・・・・・・。

ハッキリ言ってその"宝石"目当ての探索者さん呼ぶのが手っ取り早い復興方法だと思ったんだけど」




この世界で宝石にどのぐらいの価値が付くのか知らないから、元々この《迷宮》にそれ目当てで来る人が居たのかもよく分からない。


でも、昔は八十層?ぐらいあったんでしょ?この迷宮。

それってそれだけ賑わってて澱が溜まりやすかったって事だよね?


つまり、薬草にしろ宝石にしろ需要はあったアイテムという訳だ。


ふとゼニスくんを見ると、俯き加減で苦い表情をしていた。

さっきの会話の中に、何か引っかかるモノがあったのかしらん?




「・・・・・・・・・ま、無い物ねだりしても仕方ないしね。ドロップアイテムの薬草はゼニスくんにお任せするとして、他にも出来る事からやるしかないよ」

「そうだな」

「出来る事とは?」

「んー・・・私もどっか県か市の観光課で働いてた訳じゃないから"復興"って言われてもそんな大層な知識があるって程じゃないんだけどね~」

「《迷宮》と観光地を一緒にすんなよ」

「似たようなもんでしょ。どっちも人が来ないと経営が成り立たないんだから」




寧ろ《迷宮》の方が人が来ないの死活問題じゃないの?文字通りに。




「ド素人の私でもなんとなーく想像出来る復興に必要な条件は、


①そこに行きたくなる要素。

②そこでしか手に入らない限定商品。

③お得感満載のサービス。

④何度もリピートしたくなる中毒性。


・・・って感じかな?偏見入ってるかもだけど」

「だから観光地じゃねえって言ってんだろ」

「それは具体的にはどんな風にじゃ?」

「えっと、①は見応えのある自然風景とか、リラックス効果のある名所とか?

あと、パワースポット巡りとかアニメとかドラマに使われた場所の聖地巡礼ね。そういうの集客の目玉になるよ」

「聖地巡礼って、随分と信仰心強えんだな異世界人は」

「あ、そっちの聖地じゃないから」

「は?」

「ぱわーすぽっとのぅ・・・」

「②はご当地グルメとか名産品だね。

美味しい物はどんなに長時間並んでも買いたい食べたいって人は沢山居るし。

"限定"って名のつく商品はすっごいくだらない物でも絶対欲しいって手に入れたがる人種は一定数居るから」

「ご当地グルメ・・・」

「③はホテルとか旅館、食事処が(もっぱ)らかなぁ・・・。

細やかな接客とか配慮があって、お金払ったら食べ放題飲み放題は勿論、そこで採れた新鮮食材で作る豪華お食事!そんで施設の設備は使い放題だと嬉しいかな!

豪華な部屋で、エステとかマッサージなんかも受けれたりするとお姫様気分が味わえるって聞くし」

「なんで《迷宮》で接待すんだよ。魔物ぶっ倒すのにお姫様もクソもねーだろが」

「細やかな配慮のぅ・・・」

「④に関しては観光地って言うよりアミューズメントパークに近いかも」

「あみゅーずめんとぱーく?」

「遊園地とかの娯楽施設ね。

色々な乗り物やアトラクションがあると、一日じゃ制覇しきれなくて何度も訪れて遊びに来るのよ。

それに期間限定とか季節のイベントが加われば年間通して来てくれるお客さんもいっぱい居るね。年間パスあるともっと頻繁に来てくれるんじゃない?」

「年間パスとはなんじゃ?」

「前以て一年分の入場料を払っておくと、毎回入場料払うよりお安くなって、何時でも遊びに来る事が出来る、年間パスポートの略」

「そもそも《迷宮》は何時来ても無料だわ。要らねーだろ年間パス・・・・・・」




思い付く限りをつらつらと喋っているが、二人はあまり理解できていない様子で首を傾げている。

ゼニスくんに至っては半眼で、完全に私の意見をマトモに聞いてない感じだ。




「あ、あとゆるキャラ?ご当地キャラとかの可愛い着ぐるみも人気あるよ~」




地元のゆるキャラを思い出して、ピッと人差し指を立てる。

ゼニスくんは眉間に深く刻まれたシワを伸ばすように揉みこんで、大きくため息を吐いた。




「・・・・・・・・・それを全部、この《迷宮》で再現すんのか?」

「・・・・・・・・・えーっと?」

「リラックスとかパワースポットとかグルメとか?」

「宿屋やマッサージ・・・按摩の事かの?"えすて"は分からんがソレ、ワシらがやるのかえ?」

「それは、その」

「娯楽施設やら、イベントやらやんのか?ゆるキャラ?可愛いってのが《迷宮》に必要か?」

「・・・・・・・・・そーゆーのも、これからの迷宮に有っても良くない?」

「良いわけあるかよ」




復興案として言っただけなのに、ゼニスくんの視線は冷ややかだ。それはもう、北国のダイヤモンドダスト並に。


一般論じゃん。そもそも、迷宮の復興なんて何が正解なんか分からないっつーの!




「べっ、別に全部まんま取り入れようって訳じゃないわよ!無理な事もあるとは思う。でも全否定するのも可笑しくない?」

「いや、するじゃろ」

「ものは取りよう。考え方次第よ!

例えば①の行きたくなる要素。

この場合探索者さんがウロウロする迷宮内の内装を、見応えのある意匠(デザイン)に変えればいいのよ。

一見の価値有りな芸術的な造形でも、女子向け夢かわメルヘンでも、マニア垂涎の廃墟ホラーでも、ファンタジーかつリアルなミニチュアの世界でも・・・・・・。

そうすれば今までに無い斬新な迷宮に誰しもが興奮するし、また見に来たいって気持ちになると思う!」

「なるほどのぅ」

「おい、納得すんな。《迷宮》をただ見学に来るって何だよ」

「だから例えばの話!それと②は名産品でしょ?

それならこの迷宮でしか手に入らない薬草とか新しいポーションを開発するの。で、その新薬の効果が良ければ皆が欲しがる!

ポーションって言わば薬でしょ?あって邪魔になる物でもないだろうし。持ち運びが不便って言うならソコを改良するだけでも利用者は喜ぶもの!

それを最初はドロップ率上げて誰でも手に入りやすくしておけば、口コミで良さも広がるわよ」

「簡単に新しいポーション開発とか言うなよ。これまで先人が散々調合と開発繰り返してきてんだわ」

「そうかもしんないけど、それなりに付加価値ないと人は興味を持たないよ?」

「とりあえず新薬の開発は置いておくとして、宿屋はどうするのじゃ?」

「この迷宮の規模にもよるけど・・・宿じゃなくても休憩所的な場所は有ってもいいと思う。

セーフティゾーンとか。

そこに居れば魔物が出てこないとか体力回復出来るとかにすれば安心出来るよね。

ベテラン探索者じゃなくても気軽に迷宮に来てくれる人が増えるかもだし、そこに食事の提供が有れば尚良!」

「じゃあ娯楽施設っつーのはどうするつもりなんだよ」

「それは、迷宮に謎解き要素を加えるんだよ!」

「謎解き?」

「暗号とか問題を解かないと次の階の階段が現れない仕掛けや、鍵付きの扉を開く為には鍵を持ってるボスを倒すとか!

中ボスとラスボスを決まった階層に配置して、中ボスを倒すとラスボスの弱点が分かる様なヒントが書かれた紙が落ちてくるとか!」

「たった五階しかないこの迷宮でか?」

「う、とりま二階に中ボス配置して五階のボスが居る扉の鍵持ってるようにしたらなんかソレっぽくない?」

「めんどくせぇだけだろ」

「めんどくさいって言っちゃうと何も出来ないでしょうが!」

「"ゆるきゃら"とはなんじゃ?」

「見ると癒される存在っていうか、和む様なゆるーいデザインの生き物・・・?

着ぐるみ・・・デカイぬいぐるみの中には人が入ってるんだけど、基本短い手足でわちゃわちゃ動いてるのが可愛いって感じのやつ」

「中身が人って、そりゃ全身鎧(プレートアーマー)と同じじゃねーか。しかもそれ分かってんのに可愛いって思うのか?どんな感性してんだお前ら」

「そもそもそんなよく分からん生き物が動いておるのを見て癒されるのか?気持ち悪いだけじゃないのかぇ?」

「そうは言うけど、ロプスさんどっちかってーとゆるキャラ寄りの存在だからね?」

「なんと・・・?!ワシ、ゆるキャラじゃった?可愛い?」

「可愛くねーわ」

「ゆるキャラってーかキモキャラ・・・」

「骨っ子、それは悪口じゃな?悪口なんじゃろ?」

「そーゆー所は勘が鋭いよね・・・」




グイグイと顔を近付けて来るロプスさんを押し返しながら、この迷宮でも出来そうな事を考える。

それを聞いてゼニスくんが、顎に手をやって考え込んだ。




「あ、あと立地条件もある。

あんまり近場過ぎると特別感無いけど、かと言って交通の便が無い所とか辺鄙な場所は、そこまで行くのが大変だと皆足が遠のくかな。送迎があれば喜ばれるかもね」

「元々人は来てた場所だ。その心配はねぇが、迷宮行くのに送り迎えがあるってどうなんだよ」

「直通の送迎バス・・・は無いか。送迎馬車?とか、転移魔法陣があれば便利じゃない?旅行って案外交通費が高いから。それと移動って疲れるじゃん」

「そんなもんかよ」

「そうだよ~。まぁそれも含めての旅行なんだけどね」

「転移陣なら、何とかなるかもな」

「あ、ほんと?」

「つっても転移先は限られるし、勝手に設定も出来ねぇから要相談案件だがな。許可が下りなきゃ実行不可だ」

「誰の許可が要るのか知らないけど、掛け合ってみる価値はあると思うよ!気軽に行き来できたら、皆探索に来ると思うし」

「あんまりフラットに来られるとドロップアイテム作成が間に合わなくなるがな」

「そうでした・・・。先ずはそっちの問題解決が先かぁ~」




気軽に来れる迷宮を目指そうにも、先立つ物が無くちゃ意味無いのか。




「今はどうしてるの?

毎日のアイテム作成数は何個?製造時間はどれぐらいかかってる?」

「ポーションなら一回で出来る量は小瓶で十本程度だな」

「十本!?少なくない!?」

「仕方ねぇだろ。薬草自体の収穫量が少ないんだよ。世話も収穫も俺らだけで他にやる奴が居ねぇからな」

「そっか~」

「薬草にしてもポーション用にしても、葉が育つのに三日~五日かかる。

そっから乾燥に大体一週間。粉末にして水で煮込んで数時間。

煮込んだ汁を濾して甘味を加えて更に煮詰めて数日は熟成させる。後は濃度調整して瓶詰めにするから、十日以上はかかる」

「十本作るのに最短でも十日はかかるのか~」

「何処でも大体それぐらいは時間食う。初級でそれだ。中級以上の効果のあるポーションや薬は材料も段違いに多くなるし、時間も倍以上かかんぞ」

「うわぁ・・・そんなの今まで一人でやってた訳?大変じゃん」

「出来るわけねーだろ。そんなくそめんどくせぇ作業。前は手伝いが居たんだよ」

「従業員って事?」

「違ぇよ。"ブラウニー"っつう【妖精族(レイツェル)】が住み着いてたんだ、此処には」

「ブラウニー!」




聞いた事ある!焼き菓子じゃなくて、お手伝い妖精ってヤツだ。

小人の靴屋とか有名だよね。アレ、ブラウニーがモデルじゃないかと思うんだけど。可愛らしい三等身の妖精さん。いいなぁ~。




「え〜、そんなおとぎ話的存在本当に居るんだ!絶対可愛いやつじゃん~。見てみたい!てか見せてよ~」

「はしゃいでるとこ悪ぃがもう此処には居ねーよ。

《迷宮》が規模縮小する度に減ってって、今じゃ一匹も住み着いてねぇ」

「そうなんだ・・・世知辛いぃ~・・・残念~」




て事は迷宮が大きくなればまた、ブラウニーちゃんが戻ってくるかも?


まぁでもそれは無事に迷宮が復興出来たらって話だよね。

私が本当に復興に一役買えるかどうかも分かんないし、様子見てからまた聞いてみよう。




「えっと、じゃあ今はそのお手伝い妖精も居ないから、今以上の量産は難しいって事よね?」

「そうだな」

「そんなので今って迷宮回せてんの?」

「回せてねぇよ。今は入口封鎖して探索者共を入らさないようにしてる」

「えぇっ?!じゃあ実質今、此処は臨時休業中なの?!」

「そーだよ。」




言わば、


『只今この《迷宮》はリニューアルに向けて一時閉鎖・改装中です。

お客様にご迷惑おかけしております事を心よりお詫び申し上げます。

なお、工事期間の目処は立っておりません。改装終了次第お知らせ致します。

もう暫くお待ちくださいませ』


って状態な訳だ。




「それって大丈夫なの?だって澱が無いとゼニスくんは魔力が作れなくて、魔力が無いとこの迷宮を維持できないんでしょ?」

「・・・迷宮はそもそも、自然界で魔力が濃い場所におっ建ててんだ。つまり澱が自動的に溜まりやすい場所でもある。

人が来なくても最低限稼働するぐらいに自動補給できんだよ。心配すんな」

「そうなんだ」

「それはあくまで《迷宮》を維持するに必要な"最低限"の魔力であって、魔王様の《核》回復迄には至らんのじゃ。なんも安心できんし、不安要素は山盛りじゃわい」

「ダメじゃん!それ!!」

「・・・だから余計な事言うんじゃねぇって言ってんだろ」




ロプスさんの追加情報により、結構切迫してる状況なのは分かった。




「じゃあ此処を再開させる為には先ず、ドロップアイテムを沢山作る事が優先だね」

「そうなんな」

「で、その作業が出来るのは今の所ゼニスくんとロプスさんだけ?他に居ないよね?」

「そうじゃが、魔王様は《迷宮》全体の管理もせねばならんから、アイテム作成ばかりに時間はさけんぞ。ワシとて雑務もあるから、長い時間は出来んわい」

「という事は、実質アイテム作るのにかけられる時間は一日の内?」

「五時間程度か」

「少なっ!」

「その為にテメーを呼んだんだが?」

「あ、そゆこと」




本気で労働力目当ての召喚だった!




「異世界人は俺らが考えつかねぇやり方を思い付くだろ?しかも訳分からんスキル持ちが多い。賭けてみる価値は有ると思ったんだよ」

「そっか~。で、ゼニスくん的に賭けの結果はどんな感じ?勝った?負けた?」




ゼニスくんは私をじっと見て、眉間に皺を寄せた。




「・・・・・・どうだろうな」

「え、そこは嘘でも賭けて良かったぐらい言って?」

「お主自己評価高いのぅ」

「いやいや、無理くり召喚された身よ?せめて自分だけでも己のポテンシャルを信じてあげなきゃ可哀想じゃん!」

「さっきも言ったが」

「あ、覚えてないと思う」

「・・・・・・テメーのステータスを表記化してみても、文字化けして見え難いんだわ」

「なんで?」

「多分、だがその召喚媒体の骨の元々持ってた身体能力値とかスキルとかと混ざって表記されてんだと思う」

「この骨の?」

「あぁ。名前からしてもう読めねぇ。

こっちの言葉と恐らくテメーんとこの言葉が重なって潰れてる。しかもそれが、大量の小さな黒い虫みてぇに蠢いてる」

「気っ持ち悪っ!!」

「お主の事じゃろうが」

「違うから!私自身じゃなくて、ゼニスくんが見た私のステータスだから!」




ゾワゾワっと背中に悪寒が走り、私は両手で自分の体を抱きしめた。

虫、得意じゃないんだよ・・・・・・。




「そんな訳で、テメーが当たりがハズレかは見当つかねぇな。

・・・ただまぁ人手が増えた事に変わりはねぇよ。どんな見た目でカスのステータスだったとしても、労働力としては有り難いからな」

「言い方」

「魔王様の為に一生を捧げ、その貧相な身を粉にして働けることを誇りに思うがよいぞ!」

「貧相言うな!結局そこに行き着くわけね!?」

「ま、頑張ってくれや」




そう言ったゼニスくんはどこか満足そうに笑っていた。


その顔さぁ、やっぱ私は"当たり"だったんじゃないの?

・・・まぁ違うって言われても、私はそう思っとこう。そうじゃなきゃ、私の存在意義無くなるからね!


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