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誰か夢だと言ってくれ

あらすじでネタバレしてるので、しばらくは駆け足投稿したいと思います。







ふと、意識が浮上した。




あぁ、朝か・・・・・・何かすっごい変な夢見てた気がする。


私は知らない場所に居て、一つ目の化け物埴輪とか三つ目のイケメン化け物少年とかが出てきた、おかしな夢。


最近、ホラー映画も動画も見た記憶は無いのに何でこんな夢見ちゃったんだろう?


その上、私が骸骨お化けになってるだなんて・・・・・・・・・。




「・・・変な夢」

「お、目が覚めたようですぞ!」

「ぎゃあああああああああああああああっ!!!!!!」

「うわ、うるさっ!!」




寝そべっていた私を覗き込んできたのは、夢の中に出てきた一つ目の埴輪だった。



夢だけど夢じゃなかった!



某森の中に昔から住んでる隣のアイツの登場人物の幼女の台詞が頭を過ぎる。


飛び起きてその化け物から距離を取ると、その動きに合わせてカラカラと乾いた音がした。


恐る恐る自分の体を見ると、そこにはやはり、骨しかなくて。




「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!私の体ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「やっかましーな。一々騒ぐな、それぐらいで」

「騒いで当然の状態でしょうよ!」




これに騒がす、一体どの状況で騒げと言うのだろう。


心底煩わしそうな声が聞こえ、そちらを見れば三つ目のイケメン少年が私を呆れた目で見ていた。


いやいや待て待て。何故に私がそんな目で見られねばならんのだ。

おかしいよね?だって骨だよ?体が骨だけになってんだよ?


ぷにぷにのお肉もカッチカチの筋肉もピンクの新鮮な内臓も・・・皮膚も血管も何も無いこの状態に驚いて何が悪いの?


その上、見知らぬ場所に連れてこられて化け物と対峙して。


頭がおかしくなりそう。


現状を悲観し骨の両手で顔を覆えば、顔がやたらとゴツゴツしている。


まさかと思ってその手でぺたぺたと顔に触れて確認する。




「まさか、まさか・・・」

「何をしておるのだ?」

「顔も、骨・・・?」

「? 勿論顔も骨しかないぞえ?安心せい!何処にも欠けも罅も無い、綺麗な頭蓋骨じゃ!」

「嬉しくないわよ!そんな事!!」




安心要素が何処にあるというのだろう?


一つ目埴輪が『ちゃんと全身のパーツが揃っておるのを確認してから持ってきたのでな!』と自慢げに言う。




「どういう事・・・?私死んだの・・・?」




知らない間に私は死んでて、白骨化した状態でここに連れてこられたのだろうか?そういえば此処は何処なんだ?

てか、そもそもそんな状態なのにどうして私は生き返ったの?

いや、この状態を『生き返った』と呼んでいいものなのだろうか・・・・・・?


両手を見つめたまま、考える。




「落ち着いたかよ」




静かになった私に、再び三つ目のイケメン少年が声をかけてきたので改めてそちらに顔を向ける。


どっかの公園か野球場・・・ぐらいだだっ広い石造りの部屋。

その、恐らく上座に当たる位置に置かれた、座り心地の悪そうな石造りの大きな椅子。

それに行儀悪く腰掛けてふんぞり返った、三つ目少年がこちらを見下ろしているのと目が合った。




「あんまり落ち着いては、ないけど・・・」

「話できるぐらいにはなったか?」

「まぁ、一応・・・」

「じゃあ説明してやるよ」

「・・・・・・・・・」




彼らの様子を伺い見れば、今すぐ私に危害を加えようという気は無さそうだった。


状況を把握しようにも私の理解の範疇を超えている。

さっきはパニクって対話に失敗しちゃったからね。

まともな会話も出来てないし、何の情報も得られてないから、是非とも説明して頂きたい。


だって私は昨日まで極々普通の生活を送る一般人だったんだから。

こんな訳の分からない異常事態に陥るなど想定外すぎる。


説明を求めてそちらを見つめると、三つ目イケメンは椅子から立ち上がってスタスタと何処かに歩いて行く。

途中、一つ目埴輪に何か話しかけて部屋の隅まで行くと、その姿が一瞬で消えてしまった。


そんな手品のような出来事に呆然としていると、一つ目埴輪が私に近寄ってくる。




「魔王様のご慈悲である!茶でも馳走してやろう。持て成してやるから着いて参れ!」

「・・・・・・・・・」




上から目線の物言いにムカッとしたけど、ここに放っておかれるのも困るので無言で立ち上がった。


カチャカチャと音を立てながら一つ目埴輪に着いて歩き、さっき三つ目イケメンが消えた位置まで来ると、骨の足の下がほんのりと光る。


光が円を描き『これ魔法陣ってやつ?』なんて考えてる内に、景色が一変していた。


移動先らしいそこは、さっきの場所よりは明るいものの簡素な事には変わりない石造りの建物の一室だった。


中世の古い台所―――といった雰囲気の部屋で、使い勝手の悪そうな石造りの竈や水場、食器棚、食糧棚、木製テーブルと椅子が置いてある殺風景な場所。


その椅子のひとつに既に腰掛け、テーブルに肘を着いているのは先に此処に来ていた三つ目イケメンだった。


一つ目埴輪は私をほっぽり置いて、いそいそと水場に近寄ると手をニュルンと(文字通り)伸ばす。そしてその上の作り棚の中からヤカンを取り出して水を汲んで竈の火にかけた。

ティーポットと人数分のカップ、茶葉らしき缶を取り出すと、手際よくお茶の準備を始める。


それをボーッと立ったまま見ていると、座れと尊大な態度で三つ目イケメンに顎で促されたので、苛つきつつも仕方なく空いている椅子に腰掛けた。




「あの、アンタって・・・」

「ゼニス=フォラス。ゼニスでいい」

「・・・私は、紫。深空紫(ミソラ ユカリ)よ」

「へー」




名乗られたので私も名乗り返したのに、他人の名前なんてどうでもいいと言わんばかりの返事にムッとする。


目は三つあるけど、どう見ても年下の中学生か高校生ぐらいの男の子にしか見えない。

そんな相手にさっきまで感じていた恐怖は薄れ、代わりに怒りが込み上げてくる。




「・・・・・・あのさ。キミなんな訳?人をこんな目に合わせておいてなんでそんなに偉そうなのよ」

「・・・・・・・・・」

「大体此処はどこ?なんで私はこんな姿なの?これって私、何かに巻き込まれた感じよね?だったら被害者よね?責任取ってもらえるんでしょうね?!」




知らない場所、有り得ない状況、信じ難い私の状態・・・・・・。

考えれば考える程理不尽な目に遭っているとしか思えない。


ふつふつと湧き上がってきた怒りに任せてダンッ!と骨の手でテーブルを叩けば、ゼニスと名乗った三つ目イケメンは溜め息を吐いてそっぽを向いた。




「ちょっと聞いてるの?!説明してくれるんじゃなかったの?!何とか言ってよ!」

「こりゃ、大声を出すでない!

それについては今からちゃんと説明してやるから、大人しく待っとれ。魔王様に噛み付くのはよさんか!」




お茶の用意ができたらしい、一つ目埴輪がお盆を抱えて近寄ってくる。


埴輪の癖に優雅な手(触手?)つきで茶器を扱い、繊細で美しい造りのティーカップに鮮やかな橙色したお茶を注ぐと、それを恭しくゼニス・・・くんの前に置く。


一方、私の前にはちょっと欠けた飾りも何も無いシンプルなカップがぞんざいに置かれた。



おいコラ、こちとら(一応)客ぞ?持て成すんじゃないんかい!



そんな文句をたっぷり込めた目で睨むも、一つ目埴輪はそ知らぬ顔だ。


自分の分のお茶を用意し、ゼニスくんの近くの席を陣取る。


ゼニスくんが置かれたお茶に口を付けるのを見届けてから、一つ目埴輪もお茶を飲み始めた。


ムカつくと思いながらも一応用意してもらったので、私もカップを手に取った。

化け物が好んで飲むお茶って大丈夫なんだろうか?と、一瞬考えて手を止めたけどパッと見は紅茶にしか見えない。

それに同じティーポットから注がれたお茶なので毒物の混入も無いだろう(そう思いたい)。


改めてカップを持ち直し、ふー・・・と息をかけて冷ますと、砂糖もミルクも入っていないお茶を飲んだ。



ダバダバダバ。



口に入れた瞬間、顎の辺りからお茶がダダ漏れた。




「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」




全員がテーブルと床に零れたお茶を見つめる。

一瞬にして怒りが引っ込み、代わりに居心地の悪さが胸に広がった。




「・・・・・・・・・なんか、ごめん」

「そういえばお主、骨だから飲めなんだな・・・」

「てかこれ、飯も食えねぇんじゃねーのか?」

「そのようでございますな!魔王様」

「嘘でしょ?!飢え死にするじゃん、そんなの!」

「栄養吸収する器官も、供給する肉も無ぇんだから飲食出来なくても問題無いだろ」

「既に死して朽ちた体ですしな!」

「そうだけども!それでも食べれないのはショックだし・・・って、そういえばそもそもソレを説明しろって言ってんですけど?!私!!」




お茶で濡れたテーブルを一つ目埴輪が布巾(フキン)で拭いているのを見て、ちょっとだけ申し訳なさを感じる。


汚れたテーブルと床を掃除し布巾を片付け、手を洗ってから戻ってきた一つ目埴輪が椅子に座り直して、ふぅと一息着く。




「では説明してやろう。ひとまずワシの名前はロプスと呼ぶがよい。正式な名ではないが、これで通っておるのでな。

そしてこの《薬草》と《宝石》の《迷宮(ダンジョン)》を治める魔王ゼニス=フォラス様の右腕にして第一の僕である!」

「私は・・・」

「ユカリ、と言ったな。聞いておった故名乗らずともよい」

「あ、ハイ」

「そして端的に言えばユカリ、お主はこの《神露球(トレーネン)》に異世界より召喚されたのだ!」

「とれー・・・ねん?召喚・・・?」




???


ポカン、というか、カクンと口が開いた。


え?これは俗に言う『異世界召喚』って事?冗談でしょ?

いやでも、そういえばさっきからちょいちょい聞こえてたな?そんな単語が。

じゃあ最近流行りを通り越して最早ファンタジー小説や漫画でお話の導入としてテンプレのアレ?

異世界召喚って事はここは地球でも日本でもない、異世界って事?




「異世界召喚・・・え、じゃあ私チートだったりする?」

「ちーと?」

「異世界から来た人間がテキトーな神様とかポンコツ女神様から授かる、とんでもスキルとか俺TUEEEE能力で、この世界を無双するぐらいのご都合主義最強凡人」

「そりゃ凡人っつー枠に入んのかよ」

「だってどう見たって私、勇者とか聖女とかって柄じゃないし・・・」

「確かにのう」

「おいコラ納得すんな埴輪」

「チートかどうか知らねぇが、テメーの能力は測れねぇな」

「そうなの?!て事は私チートで無双で二度目の人生ちょー楽勝!ってやつ?!」

「そーいう意味じゃねぇよ。単にテメーの能力が文字化けしてて読めねぇだけだわ」

「へ?」

「文字化けっつーか、ダブってて読みづらいって方が正しいがな。それでも読めそうなとこ見りゃ、能力値は平均ぐらいになってんぞ」

「なーんだ・・・・・・・・・って、キミ他人の能力値とか見えんの?!」

「魔王様の『魔眼』を持ってすればそんな事造作もないわい!特殊眼力の『鑑定眼』でお主の事も鑑定済みよ」

「おお、鑑定眼!」




それってよく、ファンタジー系小説の中でも重宝しまくる能力じゃないか!私もソレ欲しい!


しかしその鑑定によると私の能力は"普通"らしい。

あ、でも召喚された初めは能力に目覚めてなくて無能呼ばわりされても、後々凄いスキルが発見されたり開花するパターンとかもお決まりお約束展開なので、特に悲観する事もないのかも。


・・・って、何私この異常な状況に馴染んできてんの?!

異世界召喚はともかく、骸骨だよ?!




「で、その異世界召喚された私がなんでこんな骨オンリーになってんのよ?!」

「召喚媒体が骨だったからな」

「召喚媒体?!」

「お主を異世界より呼び寄せる為に使った触媒じゃ。魔力が強い物程召喚の触媒に向いておる」

「そうなの?でもよく漫画とか小説とかだと魔法陣ピカー!で異世界召喚やってるけど・・・」

「俺の魔力が足りてりゃ、それも出来たんだがな」

「魔王様は現在、そのお力の大半を削がれ弱体化せざるを得ない状況なのだ。それを補う為にワシがその骨を拾ってきたのじゃわい」

「別に骨じゃなくても良かったんだけどな。

魔石でも植物でも・・・召喚に耐えうる器だったらなんでもいい」

「私が骸骨なのはお前のチョイスかこの埴輪野郎」

「ハニワ?!先程から聞こえるソレはワシの事か?!それ絶対悪口じゃな?!骨の分際で生意気なヤツめ!

下手に意識の有るモノを使うと一つの器に二つ分の人格が入る事になろうが。

そうなると後々困ると思うてのワシ配慮じゃぞ!この骨っ子め!」

「そもそも人骨は無いでしょ、人骨は?!それと人を犬のオヤツみたく呼ばないでよ!」

「骨を骨と呼んで何が悪い?それに腐乱死体か動物の骨の方が良かったと申すか?」

「だから死体から離れろっつーのよ!もっとホラ!あるでしょ?!

自動絡繰人形(オートマタ)とか、人工生命体(ホムンクルス)とか!」

「テメーよく知ってんな」

「そんな創るのに時間と魔力を要するもの、直ぐに用意出来んわい。そもそも魔王様の得意魔術の範囲外だしの」

「外注すっと金もかかるしな」

「召喚するのが人間ならば同じ人骨に入れるのが一番手っ取り早いわい」

「異世界召喚を手っ取り早く済まそうとしないで!!」




椅子を蹴倒して立ち上がりバンバンとテーブルを叩いて抗議するも、二人共何処吹く風でお茶を飲んでいる。


私がいくらこの現状を怒っても、最早骨として此処に召喚されてしまったという事実は覆らないのだろう。


半ば諦め、怒りを鎮めるためにフーッと長い息を吐いて、椅子を起こして座り直す。




「・・・・・・・・・で?

そんなまでして私をこの・・・とれーねん?だっけ?此処に召喚したのはどういう理由があっての事?」

「おお!そうじゃった、お主を召喚した理由が知りたいんじゃったな。それは・・・」

「《迷宮》復興」

「そうじゃ。我らの《迷宮》にかつての威光を取り戻す為、異界の能力を存分に発揮し魔王様の手足となって働いて貰う為に召喚したのじゃ」

「まさかの労働力目当て?!」




もっと高尚な目的があってわざわざ異世界に召喚されたのかと思ってたのに・・・!


ガックリと肩を落とし、テーブルに突っ伏す。




「そんな事の為に、こんな骨の姿になってんの?私・・・」

「そんな事とはなんじゃ!魔王様のお力になれるなぞ、とても栄誉な事ぞ!もっと喜び誇りに思わんか!」

「思えるわけないでしょ?!

いきなりこんな得体の知れない場所に強制的に連れてこられたと思ったら骨で、ましてやその目的が労働力だとか・・・どこをどう思えば栄誉なんて考えに行き着く訳?!」

「魔王様にお仕えできること自体、誉れ高き事ぞ?」

「ちょっ、本気(マジ)トーンの『魔王様の手足に成れるのに?何が不満なの?なんでなんで?』って純新無垢な瞳で語って来ないで!気持ち悪い!」

「気持ち悪いとはなんじゃ!」

「・・・まー俺も前々から無駄にキラッキラした目で『敬愛しまくってます』っつーロプスの視線は常々気持ち悪ぃとは思ってたが」

「魔王様?!」

「もう呼んじまったんだ。送還(かえ)る事は不可能。諦めて俺の配下になっとけ」




空になったカップを静かにソーサーに置き、ゼニスくんが私を見つめた。


揶揄う訳でも、脅す訳でもなくただ淡々と事実を述べている口調。


それは私に、選択の余地が無いという残酷な現実を突きつけてくる言葉だった。




「ゼニスくんの配下になる、っていうのは決定事項なの?」

「ゼニスくんじゃと?!骨っ子!魔王様を"くん"付けで呼ぶなど不敬ぞ!」

「別に俺の呼び方なんざ何でもいい」

「しかし魔王様の威厳が!」

「俺がいいっつってるんだ、口出しすんな。

・・・・・・話を戻すが、こっちに召喚()ぶ時の魔法陣に契約術式を組み込んである。テメーは俺が死ぬまで俺の眷属っつー契約だ」

「貴方が死んだらどうなるの?」

「魔王様が死ぬなど、縁起でもないことを言うでない!」

「ロプス、うるせぇぞ」

「ですが・・・!」

「俺が死ねば全部消える。

この《迷宮》も、ロプスも、テメーもな」

「どうして?」

「全部俺の《魔力》で成り立ってっからな。

一蓮托生。俺が死ねば魔力補給が止まって、その形を維持できなくなる」

「ふぅん・・・」




私は自分の体を見た。

次にテーブルと置かれたティーカップ、私を見ているロプスさん、今いる部屋全体・・・ぐるりと見渡し最後にゼニスくんを見る。


病的なまでに白い、不健康そうな顔。

真夏の青空のような、澄んだ水色の瞳が静かに私を見つめていた。




「この《迷宮》ってのを復興させるのに、私が必要だっていう理由は?」

「別にテメーじゃなきゃ駄目だったって訳じゃねーよ。異世界人なら誰でもいい。ただ、」

「ただ?」

「このどん詰まった現状をひっくり返す、起死回生の一手が必要だった」

「起死回生の一手?」




その言葉に首を傾げると、ゼニスくんは視線を外して何処か遠くを見つめる。


空になっていたカップに、ロプスさんがお代わりのお茶を注ぐとそれを受け取り、一口飲む。


そして再び口を開いた。




「・・・さっき、この《迷宮》を復興させるって言っただろ?」

「うん」

「その為に、異世界人ぐらいのぶっ飛んだ"能力"が必要だった。

その理由(わけ)を話すにゃ、この世界の成り立ちから知る方が分かり易い。ただ、ちぃーとばっかし長くなるぞ」

「・・・意味分からない状況よりマシだわ。多少長くても聞くわよ。どうせ帰れないなら時間なんて気にしたってしょうがないし。

でもあんまりいっぱい情報詰め込まれても困るから、簡潔に言って貰えると助かるかな」

「分かった」




魔王様の手を煩わす訳には!って、てっきりロプスさんから説明があるのかと思ってたら、話はゼニスくんから聞けるようだ。


長丁場になると踏んだのかロプスさんが席を立ち、流しに近付いて何か作業をし出す。

見るに、どうやら料理でも始めるようだ。


埴輪が調理する風景にも凄く興味は惹かれるのだが、真面目な話をしようとしている気配のゼニスくんの様子に、なるべく其方を見ないようにする。


なんか伸びたり縮んだりしてるのが視界にチラつくのだが・・・・・・気にしないようにしよう。


ロプスさんが気になる私の意識を自分の方へ向けるように、ゼニスくんはコツン、と指でテーブルを叩いた。


そして、




「さっきロプスが言った通り、ここは《神露球(トレーネン)》。お前らからすると、異世界ってやつだ―――」



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