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花邑杏子は頭脳明晰だけど大雑把でちょっとドジで抜けてて馴れ馴れしいがマジ傾国の美女【第17話】

ついにこの日がやってきた。

大徳エンジニアリングの初出勤日である。

義範は周りを見渡すーー足取りの軽い者、そうでない者と、様々であるが・・・その中でも一番奇妙な足取りをしているのは、間違いない。奴らだ。

そのカップルはーー女の方は鼻歌を歌いながら意気揚々と、彼氏の腕にしがみつきながら歩いている。

一方・・・彼氏は、眠れなかったのか、はたまた、この会社でやっていく自信がないのか、なんだか浮かない顔。この世の不安を一挙に背負った彼氏は、足取りが重い。それよりも・・・先ほど彼女にTシャツのボタンを切られてしまった。彼は今、一生分の恥ずかしい思いをしているーースーツがダブルなので、大体は誤魔化せるのだが、彼女がことあるごとにスーツのボタンを外し、Tシャツをはだけさせるので、ちらちらと印刷された彼女のキス顔が見え隠れしてーーその度に彼女の頭をぶん殴りながら、身だしなみを直す彼は、端から見れば暴力的な彼氏であろう。ふえ~んと泣きながらも彼の腕に絡み付くのを止めない彼女は、健気な彼女に見えるのかしら。ただし、彼女は耳元で「てめ、ぶっ殺す」だの「あとで若いもんを呼ぶからな」だのとおよそ健気とは程遠い台詞を吐いてくる。これが最寄り駅から会社までの十分間。彼には二~三時間くらいに感じたであろうーー

着いたのは、大徳エンジニアリングの本社。新宿の、とある高層ビルの四十一階。ちなみに入試を受けたのは、世田谷にある本社工場である。

その日は、軽く会社の説明を聞いて、その後に配属が発表される手筈となっていた。

殆ど聞いていなかった会社説明のあとーーいよいよ配属が決まる瞬間が!

最初に名前が出たのはーー義範だった。これは本人も予測していた。なんてったって、名字が赤坂だから。

彼の配属先はーー広報であった。

(まあそうかーーでも、やりがいはありそうだな、うん)

その後は、一喜一憂の表情が垣間見れた。しかし省略。

注目の、入試成績ナンバー1の花邑杏子は何処へ・・・

なんと!開発部に大抜擢!

これには本人も「よっしゃぁ!」と、人目も憚らず大喜び。のあとで・・・採用担当に詰め寄っていた。

「なんで、広報は本社工場に行かないんですかぁ?」

義範はーー小さくガッツポーズ。やった。花邑杏子と別れられる!これで、毎日奴が部屋に泊まることもなくなる。強引に腕を組まれることもない。

「広報は、世界中から取材依頼を求められるのです。あなたのいう通り、機材を見ながら説明するのがいいかと思うのは自然なことかもしれない。しかし、開発前開発中の人工衛星は、機密の山なのです。公に話せないことのほうが、実は多い。一方で私たちは1042件もの特許を取得しています。だからこそ、こうやって人工衛星製造で生計を立てられるのです。当社の定義する広報の仕事とは、BtoBではなくBtoCなのです。勿論、我々の技術を淀みなく解説できるようになっていただく必要はありますがーー」

それを聞いた義範は、恐怖を感じていた。

花邑杏子はというと・・・義範にVサインをしている!あの野郎!

義範は、手を挙げた。

「ということは、機密保持のために広報と開発が密に連携することは、この会社では、あり得ないとの解釈でいいのですね」

広報官が、やや面倒臭そうに答えた。

「そういう冷たい関係では決してありません。ただ、少々穿った言い方をすると、広報にも話せないことが多々あるのです。そのくらい人工衛星の開発というのは、デリケートな判断が随時求められるのです」

なんか、軽く煙に巻かれたなーーでも人工衛星製造とは、口が軽いとやっていけないことと、そこまで重要な機密は広報では扱わないことが分かったし。

そんなこんなでーー配属先も決まったし、あとは頑張るだけよ。

「それでは、本社工場に配属が決まった方は、これからタクシーであちらに向かいます。こちらでの勤務の方は、そのままお待ちくださいーー」

花邑杏子からラインが。

「私たちは、決して離れない!」

と記されていた。

義範はというとーー

「"&%>¥!@{#0+!}」

と、解読不能な文章を彼女に送りつけた。その意味は、義範だけが知っているーー

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