西のダンジョン➁
さっきの雷?は何だったんだろう。
まあいいや。ドロップアイテムを確認、確認っと。
流石に極上小麦は出なかったか~。
それでも、羽が出たっていうのは良い。だって卵みたいに割れないからね。
私はアイテムボックスとかアイテムバックは持っていないから、ただの大容量の登山用リュックサックで来ちゃったし、扱いが難しいものがドロップすると困るのだ。
幸先は良い。
私は遠くに見えるオークの集落に向けて歩き出した。
今回の目的の、オークキングの肉が手に入るのはもちろん、このダンジョンにおいてオークの集落はボス部屋と同義だから、ここを攻略しないと踏破もできない。
ちなみに集落内の魔物はどれだけ劣勢になっても絶対に集落から逃げないで立ち向かってくるらしい。
健気だね。
聞いたところによれば、集落ではレッサーヒヒという魔物も出てくるらしい。
ペット枠なのかな?
ヒヒ系は比較的強いらしいけど、レッサーヒヒだけは例外ですこぶる弱いらしい。
ただ、ものすごい臭いガスを身にまとっているので極力近づきたくない。
そうそう、このダンジョンは大体の挑戦者が1回目で死ぬか1回目で踏破するところまで行くらしい。
食料は無限にあるけど、ウィートハーピーの奇襲が多いし、火なんてつけたら逃げ場がなくなるし、入り口のポータルは草に埋まっててどこにあるか分からない。
そしてこのダンジョンにおける最大の問題は、水が無いことだ。
常に湿度は低く、雨が降らない。
こういうところでダンジョンって意地悪だと思う。
なお、なんで水が無いのに作物がたわわに実っているんだという質問には答えられない。
地下水があるんじゃない?くらいに思っておけばいいと思う。
このダンジョンで迷子になって、しかも踏破するほどの実力が無かったらどうすればいいのか。
とりあえず集落を目指して歩き、ウィートハーピーや見張りのオークなどから逃れつつ、他の冒険者の救援を待つという方法しか取れない。
あるいは偶然やってきた冒険者に寄生するか。
誰もやってこなければきっと長くは生き延びられないだろう。
なんせ迂闊に火が起こせないから調理の難易度が青天井なのだ。
そういえば、どっかの吟遊詩人が、このダンジョンで迷子になって奇跡的に生還した人の歌を歌ってた気がする。
昔は、作物があるのに水が無いなんてそんな馬鹿なと思って聴いていたけど、今実際のダンジョンに来てみるとあの歌のようなことは確かに起こり得るなあと感じた。
そんなことを考えていたら、2匹のオークに見つかった。
どうやらいつの間にか集落の前まで来ていたようで、この2匹は見張り番だろう。
他の一般的なオークよりちょっと大柄な気がする。
中ボス戦ってやつかな?
私は武器をかっこよく構えてみる。
結果は見えているけれど。
私を曲者と認識したオークたちのヘイトは、次の瞬間には相方のオークの方へと移っていた。
2匹とも、盾とロングソードを持っている。
だから、お互いに切りつけ合っているけど、力量が同じであるせいか互いに大したダメージは与えられていない。
今こそ私の必殺技をかますとき!
私はまず私から見て右側のオークの背後にまわった。こうして近くに立ってみると、人間がいうところの平均身長である私が子どもみたいに思える身長差だ。
見張り番の体長は………うーん、200㎝くらいかな?もっとあるかもしれない。
私の身長では首を切りつけることはできないので心臓を狙って………
「えいっ」
次の瞬間、この道中で何度も見てきた、ビリビリ雷もどきが起こって、オークは倒れた。
茫然自失といった様子のもう一体も背後からぐさっと。
ドロップアイテムは牙と肉。
鞄に仕舞う。
一度にドロップする牙は1本で、食物は1㎏と決まっている。
軽装で来たというのもあって、私の荷物はまだそこまで重くはない。
私の戦闘スタイル的にも荷物の重さは歩行速度低下以外にこれといったデメリットはないから良い。
鞄の容量にはまだまだ余裕がある。
さすがに、集落のすべてのオークが肉をドロップしてしまったらいくつか諦めなければならないけど、まあ、牙とか油とかも落ちるから大丈夫なはず。
問題はオークキングが肉以外を落とした時だ。今が丁度14時で、リポップはオークキングを倒してから10分後だから………まあ、おやつの時間までには終わるだろう。
1個でも手に入ったら今日は終わりにする予定だ。
この後他の人が来ないとも限らないしね。
私は集落の中に足を踏み入れた。