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酒の肴ってそういうこと?

「私のスキルは魔力を消費しないよ?」


「え?」

「「は?」」


トラピチェ、アウイン、バライトは、よく分からないと首を傾げた。


「あっ!あたし知ってるよ。」


皆の注目がおそらく仲間内で一番説明役とは程遠い……と思われているルーベライトに向く。


「えーっとね、確か、ベルデライトは生まれつき魔力を持ってないの。先天性なんたらかんたらってやつ」


ルーベライトの尻尾がゆらゆら揺れている。これで合っているかな?と少し不安げだ。


ちなみにベルデライトとは私の名前だ。今日もカッコイイ?名前だ。


「なるほど、先天性魔力欠乏症か」


バライトが納得といった表情で頷く。


「病名まんまじゃねえか。なんでアホ猫は知ってるんだ?……そうか、親がうちの村の医者だからか」


アウインも納得したらしい。


「なんで医者の家系からこんなアグレッシブなアホの子が生まれるのよ」


トラピチェは解せぬ…という顔をしている。


「まあまあ、これでトラピチェが懸念していた魔力切れが起こらないってことがはっきりしたし、いざ行かん、ボス部屋へ!」


キリっとした顔で私はボス部屋の観音開きのドアをバァンと開ける。


「あっ」とか「まちなさいっ」っていう声が聞こえた気がしないでもないけど、私は自分の能力を信じてボス部屋に入る。


ボスはコボルトだ。ゴブリンより若干強いかな?でも、そうでもないような?といったレベルの強さの魔物だ。


短剣を装備して私たちが来るのを待ち構えていたコボルトが、私の入場と同時に錯乱状態になる。


壁に頭をぶつけたり、鋭い爪で体をかきむしったりする。


そして最後は、持っていた短剣で、自分で自分の首を掻き切って自滅した。


この光景には、私の後を追ってボス部屋に入ってきた皆 (アホ猫を除く)もドン引きだ。


皆口をあんぐり開けて固まっている。


あ、口を開けているといっても、ルーベライトだけは欠伸してるんだけど。


こうして私の初めてにして単独でのダンジョン踏破は為されたわけだ。


――――――――――――


ダンジョンから帰ってきた私たちは無言で酒場に行く。


一人は「飲まないとやってられっか」と言って。

一人は「今まで村でやってきた戦闘訓練は何だったのかしら」と嘆いて。


この二人は概ね考えていることは一緒だと思う。


一人は「俺はベルデライトを信じてたからな」と尻尾を振って。


アウインはお調子者…まあ、確かに私のことそれなりに信じてくれてはいるみたいだけど。


一人は「魚~魚~」と歌って。


ルーベライトは正直、ダンジョン攻略前からずっとご飯のことしか考えてないと思う。


私は「むふん」とこれから始まったり始まらなかったりするであろう冒険に思いを馳せつつ酒場に向かう。


ちなみに、打ち上げ?は皆が酔っぱらって足元がおぼつかなくなり、ルーベライトが寝落ちするまで続いた。


――――――――――――


翌日――


「つまり、お前の言うスキルで"酒の肴を釣る"っていうのは、酒の肴になりそうな出来事を引き起こすっていうことか?」


昨日のやけ酒で絶賛二日酔い中のバライトが私の能力を分析する。


「そういうこと!ちなみに、酒の肴にするには生きて帰らなきゃいけないでしょ?だから、スキルで何が起こっても、どんな敵が立ちふさがっても、"私"だけは生き残れる……と私の勘が言ってる」


何となくだけど、そんな気がする。


「ええ……じゃあ、強い敵が出た場合、俺たちは生存できないかもしれない、お前だけが守られるってことか?」


何となくだけど、そんな気が……


「英雄譚みたいに、あたしたちが足止めするからベルデライトだけでも~ってなるのかな?」


何となくだけ……


酷いな!?よく考えたら酷い能力だな!?


私だけ常にセーフポイントにいて、その分のヘイトは皆に集中するってことか。


「あれ?でも、その場合、ベルデライトが逃げなければ俺たちもワンチャン生き残れるんじゃ…」


「甘いわよ駄犬。その場合、私たちは五体満足じゃないかもしれないし、そのセリフが出るときにはもうだれか死んでるかもしれないのよ」


「俺、駄犬じゃないし。ベルデライトとパーティー組むのヤダ」


がーん。アウインに嫌われちゃった。


「まあまあ、そんなこと言うなって。もしこいつとパーティー組んでても冒険しすぎなければ最悪の事態にゃならねえと思うぞ。」


「そうね。その場合、そもそも私たちにとって分不相応な相手と戦っているのが前提だものね。調子に乗らなければ大丈夫よ」


ごめんトラピチェ。私、現在進行形で調子乗ってるかも。


「ねえみんな、私も昨日みたいなゲスト登録じゃなくてさ、冒険者の本登録……してもいいよね?」


一瞬、場がシーンと静まり返った。


あれ?これダメなやつ?


「はあ……。だめだ…とは言えねえんだよな。俺たちの中で素のスペックが暫定最弱のお前が最低限、身を守れるようになった……なったというか、身を守れることが判明したからな」


最初に口を開いたのはバライトだった。意外にも肯定的だ。


「「「(俺も)(私も)(あたしも)いいと思う」」」


皆も同意見みたいだ。


日が暮れたし、今日はこれでお開きということになった。


明日はずっと夢見ていた冒険者登録をしに行くんだ!


家に帰ってご飯を食べた後、ワクワクした気持ちを胸に私は眠りについた。

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