能力は≪さかな釣り≫
「スキル≪さかな釣り≫でダンジョン無双したいって言ったら笑われるだろうか?」
不意に放った私の一言で、潮風香る掘っ立て小屋の空気は凍り付いた。
……
………
…………いや、白けちゃったけど、一応真面目な話なんだからね?
「お、おう……頑張れば行けるんじゃねえか?」……と他人事なのは人間の大男。
「おい馬鹿!ガキに無駄な希望もたせるな!でも…もしかしたら……」……と空想に耽っているのは小柄な狼系獣人。
「いやあ、魚系の魔物ならワンチャン…?」……と涎を垂らしたのは無駄にグラマラスな猫系獣人。
「無理ね………なんで皆私の方見るのよ?あ゛!?誰が魚だって?」……と凄んだのは清々しいほどのまな板人魚。
残念なことに私の悪友たちは、私がダンジョンで無双することは概ね不可能だと思っているらしい。
それもそのはず、私には攻撃系スキルが皆無。
唯一のスキルも、≪さかな釣り≫という地味なもの。
全く、なんで私は漁師の家に生まれてしまったのか。
せめて猟師の家なら狩り向けのスキルを持って生まれることができただろうに…。
しかし私の希望はまだ潰えていない!今からそれを証明しようじゃないか!!
「まあまあ、見たまえ諸君。私にはとっておきの秘策があるのだ」
私は得意げに胸を逸らす。あっ!今誰か鼻で笑ったな!?
「秘策だと!?」
ああ、なんだかんだ言いつつ信じてくれるのはいつも君だけだよアウイン。
「じゃあ実際にダンジョンに行って証明し―――」
「おい犬、コロッと騙されてんじゃねえ。こいつのスキルが魚釣りだってのは村人全員が知っているだろ」
アハハハハハと笑い声があがる。
くっバライトめ……あとちょっとで犬もとい脳筋な狼系獣人のアウインだけは道連れにできると思ったのに…!
だが、甘い、甘いぞバライト!私は長年抱いてきた違和感からスキルの抜け穴を見つけたのだ
最初に違和感を抱いたのは…そう、私が5歳の時―――
「まあ、一度くらい信じてあげてもいいんじゃない?なんかこの作戦は会心の出来!みたいな顔してるし、それなりに根拠があるんでしょ。そう、根・拠・が」
「ああ、君も信じてくれるんだね!嬉しいよトラピチェ……ぐえっ」
感極まって抱きつこうとして近づいたところ、トラピチェのボディーブローが私の鳩尾に!鳩尾にきれいに決まった。いたい。
「勘違いしないでよね。私はあんたに早く現実を思い知ってほしいだけよ」
ツンデレなところも嫌いじゃないよ☆
「そうと決まったら目指すはダンジョンだね!やっふーーー今日の夕飯は魚だ――――!」
猫獣人ルーベライトはそう叫んで小屋から飛び出していった。
「全く……お前ら、纏まりがなさすぎるだろ。何年の付き合いだよ?」
バライトがため息をつく。
「生まれた時からだね。それはさておき、皆に質問だ」
私はたっぷりと息を吸い込んでから問う。
「私のスキルは≪さかな釣り≫であって≪魚釣り≫ではない――――この意味が分かるか?」
……
………
…………
「「「は?」」」