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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

Dr.Tの書庫漁り【一頁完結型短編の何か】

ここにいる【一頁完結型童話調・T書庫シリーズ】

作者: 【語り部】Dr.T

__幕間


 ここに一冊の本がある。タイトルは【ここにいる】。

 それは、私たちにとっては物語であるかも謎らしい。

 しかし、コレが残されているという事は彼等は確かに存在していたのは確かだ。

 そういう世界らしいからね。ココは。

 さて、短いが少しばかり話に付き合って貰おうか。

 弟よ。ココの書庫は蔵書がいっぱいで私はとてもわくわくしている。

 どうせ少ししたら存在が曖昧になって私たちは消えてしまうらしいからね。

 ちょっと位、盗み見たところで罰は当たらないだろう。

 それではDr.Tの読み語りの始まり始まり。



__



 景色もなく、見る事を忘れ、音もなく、聞く事を忘れる。



 匂いもせず、嗅ぐ事を忘れ、舌もなく、味わう事さえ忘れる。



 手は何も掴めず、踏む足場もない。ただ、何もない様な虚空に存在している。



__



 考える事だけしか出来ない虚空で。考える事もない虚空で。



 ただ夢想する。思い出す事が出来ない自分を。自分がどんな姿だったのかと。



 思いを馳せ、そしてまた忘れる。そしてまた夢想を始める。



 しかし、いくら夢想してもこれといった形は見つからない。


 私には何があったか、形は作るそばから崩れていく。


 形を生贄に私は存在し続ける。終わらぬ様に存在を示すように。



__


「おや、まだ消えて無いようですね。変態を繰り返す存在ですか、これもまた進化でしょうか」


「目も無く、喋る口も無く、ただそこに存在する為だけの存在を進化と呼べるのなら、ですがね」


「さて、回収して釜に入れても良いんですが、こんなの直接入れたら見るからに駄目ですよね。下処理するのも面倒ですし。彼を呼びますか」


「俺様は雑用係じゃないんだが?」


「そう言いながら来てくれる貴方が好きですよ。コレどうにかできる所に持ってってください」


「何故、皆、俺様を雑用に使うんだ?」


「コミュ力の問題でしょう。選択を迫る君の能力はこういった対話出来ない者にも効きますしね」


「コミュ力低い奴ばっかだろ……さてと、お前のなりたい形はなんだ」



__


 ただ、形を作っては捨てるそんな存在だった。何処からか声が聞こえた。久しく聞いていない言葉の意味は分からない。ただ、言葉の指示に従わなければならない気がした。


 自分が何になりたかったか。一つ一つの形が作られて行く、先程までとは違い形が残る。そして形は自己を作って行く。


「お前の成りたい形はなんだ。顔はあるのか?無いのか?」


 顔はある。あった筈だ。


「お前の成りたい形はなんだ。その顔に目はあるか?無いのか?」


 目はある。そう思った瞬間に視界がひらけた。目の前には黒い何かと白い何かが立っている。


「お前の成りたい形はなんだ。その顔に口はあるか?無いのか?」


「口はある。」


「では耳はあるのか?無いのか?」


「ある」


「おぉ、凄いな顔が出来た」


「まだだ。鼻はあるか?無いか?」


 

 形を作っていた情報量よりも遥かに多い情報が私に流れ込んでくる。



__


「おっと、意識を失った様だ」


「進化する方向を選ばせてるのですか?」


「そうなるな。試してみたが上手く行ったようだぞ。これで話せるだろ」


「……今、生首だけですが身体は?」


「面倒だ」


「頼むから身体もお願いしたい」


「しょうがないな。夢の中なら選択させるのも容易だ。面倒臭いからお前の能力使うか。選択しろ」


「突然そんな事言われても」


「理想の人を想像するだけで良い」


「君の能力、万能過ぎない?」


「人が居ないと無能力だ」


「確かにそうですね」


「……終わったようだな。好みの女性か?」


「馬鹿を言わないでください。昔の娘の姿です」


「嘘だろ、お前、娘が居たのか?」


「駄目ですか?」


「いや、駄目と言う訳ではないぞ。取り敢えずそれで意思疎通は問題ないだろう。お前の部下にしたらどうだ?」


「いや、駄目じゃないんですか?」


「なんだお前、この状態にしといて釜に放り投げてはい、終わりだと思ってたのか?」


「いや、この状態にしたのは君じゃないか」


「えっとコレが申請書だゼロに渡しておけば正式に配属されるだろ」


「まさか、最初からこの流れを?記入済みじゃないか」


「安心しろ最近多かったから何十枚か用意していただけだ」


「それは良いのか?」


「余りにも人手不足だからな。ゼロに頼んだら書類だけ提出で良いよ!って言われた」


「……人手不足?成程、君だけブラック企業か」


「ブラック?まぁ取り敢えずコレ提出しとけ」



__


 私は気付いたらまどろんでいた。必死にあらゆる形を作っていた私は形を得ていた。


 目を覚ますと何かに揺らされていた。それはとても心地よく。幸せな感覚だ。

 揺り籠に揺られ私はまどろむ。私は確かにここにいる。



__終幕


 どうやら自分が主役の物語を読んで欲しかったようだ。とても時間を無駄にしてしまった気分である。


 ん、どうした弟よ。何?そうじゃない?だと。あ、これ遠回しの勧誘なのか。仕事熱心だなあの黒光り男。



シリーズと銘うってありますが何処からでも読めます。

形を捨てるとはどういうことなのだろう。しかし、自我と言う形を捨てない様にトカゲのしっぽの様に再生しては切ると言う事を繰り返していたのでしょうか。それともバクテリアの増殖と同じような物なのか。

それでは皆様また次回。


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