「第4回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品シリーズ
シスコンな兄と星座の物語
俺の妹は天使だ。目に入れても痛くないほどにかわいい。
そんな妹に好きな男が出来た。
中尾梨音、妹と同じクラス。
最初女の子だと思って油断したじゃないか!! 俺を騙して妹に接近するつもりだったに違いない……気に食わない奴だ。
背が高くてイケメンで運動神経抜群なのに文化系の部に所属していて頭も良い。実に気に食わない。
調子に乗っても良さそうなのに、実に謙虚で奥手な性格。ますます気に入らない。調子に乗れよ! 欠点が無いイケメンとか存在自体犯罪だろ?
言葉数は少ないが、余計なことは言わないし、それでいて面倒見も良く、気が利く几帳面さもある。嫌がらせレベルの良い人だな。
趣味の読書が高じて書いた小説が書籍化して、絵画で賞をとって、気晴らしで作った曲がヒットしてアニメの主題歌になるだと……ふざけるな!! 兄の威厳が失われるわ!!
しかも、どうやら向こうも妹に気があるらしい。身の程知らずが!!
二人がくっつくのを阻止するために俺はある計画を思いついた。
オリオンとアルテミス計画だ。
神話によれば、妹のアルテミスがオリオンと付き合うことに反対したアポロンは、妹を騙してオリオンを射殺させたという。
妹はああ見えて毒舌だ。妹ラブの俺ですら心が折れそうになることがある。
妹に奴の悪口を言わせて、それを聞かせれば、百年の恋も冷めるだろう。
実は、隣の部屋に奴を待機させているのだ。くくく。
「え? 梨音くんの悪いところ? あるわけないじゃん、兄貴じゃあるまいし」
ぐはっ!? なぜ俺にダメージが……!?
いや、聞き方が悪かったな。不満に思っているところくらいはあるだろう?
「あるある~いっぱいあるよ」
きたー!!! さあ妹よ、思いの丈をぶちまけるのだ!! 梨音くんざまあ!!
「私はこんなに好き好きアピールしているのに、全然反応してくれないし、告白してくれないのよ? 酷くない?」
そうだよな!! 鈍い男は駄目だよな。臆病者の卑怯者で小心者じゃあ将来が危うい。そんな奴に妹は任せられん。
「美月さん、勇気がなくてごめん。こんな俺で良かったら付き合ってください!!」
「うわっ!? り、梨音くん? どうしてここに? でも嬉しい!! こちらこそよろしくお願いします」
……あれえ? どうしてこうなった!?
「お兄さんが煮え切らない僕のためにセッティングしてくれたんだよ」
「そうだったんだ……ありがとう兄貴、そういうところ大好きだよ」
……梨音くん、思ったより良い奴!!