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囚われた獣に心はあるか  作者:
獣の悪夢
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アーロンが、フーンとモニターを監視しながら言った。

「…躁状態に簡単になるのでよく見張っておかなければなりませんね。精神の振れ幅が大きい。」

新は、頷く。

「緊張状態に長く置かれるとそうなるな。まして、薬で無理やりその環境の中で正気を保たされているわけだから、少しの事で一喜一憂するんだろう。」

彰は、見つめながら言った。

「最終日だな。ここまで生き残ってくれて良かったよ。特等席で滅多に見られないショウを見せてやれるじゃないか。ま、村が間違えなければだが。」

ジョアンが、こちら側から言った。

「皆結構単純ですし、時間が短いので気が付いた時には遅いような感じですよね。真占い師に噛みが通りましたし、頑張るんじゃないですか。」

新は、言った。

「通ったか。ま、そうだろうな。連続噛みして来るのは分かっているだろうに、占い師などに護衛を入れる狩人が悪い。ここは捨て護衛で、次はどこでも守れるように備えるところだったのに。」

ジョアンは、頷いた。

「さ、始まりますよ。見守りましょう。ジョン、待機してください。出るんでしょう?」

彰は、頷いた。

「真ん前で聞いていてやる。そこに居るのに認識させないというのは便利だな。あちらから見たら私は透明人間というところだろう。ま、ホバーで上から高みの見物でもしておく。後は、手筈通りに。」

そこに居る全員が、頷いた。

「任せてください。」

そうして、彰はそこを出て円形の部屋へと向かった。

皆が、どこかの冒涜的な森の中だと思っている、ただ映像が投影されているだけの場所へ。


《朝になりました。№12が犠牲になりました。昼議論を始めてください。》

噛みが通ったのは、昨夜の音で知っていた。

ジェイは、今夜は自分の身に起こることかもしれないのだと自分を奮い立たせて、皆を見回した。

境が、言った。

「4人になった。」と、皆を見回した。「最終日だ。今日は、昨日も言っていた通りジェイか林のどちらかを吊る。」

林が、言った。

「昨日あれから考えたが、みんな目線木村は黒だろう?ジェイは、あの日三谷に入れている。ライアンが皆に木村が怪しいと言っていたのに。」

だが、ジェイが反論する前に境が言った。

「それはジェイ目線では自然なことだ。ライアンは最後には占い師に入れろと言った。ジェイ目線、自分に黒を打っている三谷の方が確実に人外だと分かっているから入れたと考えられるし、それが自然だ。逆に、分からないのに確定で人外だと分かっている三谷に入れていなかったら、怪しいぐらいだった。それよりも、昨日林はどうしてジェイに?」

林は、それには不満げに言った。

「それは、自分目線じゃジェイが絶対に人外だから。今境も言ったじゃないか、オレ目線じゃおかしな投票先じゃないんだろ?」

だが、それには清水が首を振った。

「いいや。昨日は違う。なぜなら、狩人の決め打ちは次の日にすると境が指定して、細田を吊るのは確定だった。なのに、君はジェイに入れた。オレもおかしいなと思ったんだ。あれで、もしかしたら細田が狼で、林が庇ってるんじゃないかって。細田は、木村の白でもあるしな。」

ジェイは、自分も対抗狩人に入れた方が良かったかと昨日は思ったものだったが、こうなって来ると上手く行っていて笑い出しそうだった。

だが、神妙な顔で言った。

「そうか、木村は細田を囲っていたんだな。オレは木村がオレを囲っていないのを知ってたが、みんなが囲っているだろうと言うからそんなものかと。だが、よく考えたら初日から囲ったりしたら、すぐにバレるだろう。木村は上手い事やっていたんだな。」

林は、首を振った。

「違う!オレは木村に入れてるぞ!その日木村に入れていないジェイが良くて、どうしてオレが怪しまれるんだよ!おかしいだろうが!」

ジェイは、言った。

「あの日は身内切りしていてもおかしくはない日だった。村人なら自分の黒でも打って来た占い師でなければ、どこか偽だか分からないだろう。確定村人のライアンが怪しんだ場所に入れるのが順当だった。オレからは、三谷しか偽は分からなかったがな。」

境が、ため息をついた。

「まあ、しっかり考えなければならない。清水、投票を合わせないといけないぞ。同票になるのが一番まずい。いや…」と、化け物を見た。「同票になったら、どうなるんだ?」

その化け物は、答えた。

《ランダムで一人処刑されます。》

それはまずい。

ジェイは、思った。

自分の運命を運任せにはしたくなかった。

「それはまずい。」思わずジェイが言うと、二人はこちらを見た。ジェイは付け足した。「運任せで間違えたら、これまで死んだ者達が浮かばれない。」

臭いセリフかと思ったが、二人が納得したように頷いたので、上手く行ったとホッとした。

《投票してください。》

もう、時間か。

昼時間は毎回縮んでいるように思う。

やはり人数が減ると議論時間も短く設定されているのだろう。


1ジェイ→3

3林→1

4清水→3

11境→3


…勝った…!

ジェイは、心の中でガッツポーズをした。

ついぞこんな達成感は味わっていなかった。

《No.3が追放されます。》

「そんな!」林は、必死に言った。「オレは狩人なのに!ライアンを守ったのに、どうして信じてくれないんだよ!」

もう、何を言っても後の祭りだ。

触手がワッと穴から出て来て、林は逃げる間もなく足を掴まれ、涙と鼻水を溢れてさせながら皆を縋るように見つめた。

「狩人なんだよ…!!」

清水が、顔をしかめて横を向く。

林は引き摺り込まれて行って、見えなくなった。

そこで、化け物が言った。

《狩人は生存していません。人狼陣営の勝利です。》

境と清水が、目を見開いた。

そして、ジェイを見るのに、ジェイはニヤリと笑った。

「間違えたな。林は狩人だ。本人があれだけ必死に言っていたのに。」

「そんな!」

二人が叫んだ時、今目の前で林を引き摺り込んだ触手が戻って来て、二人の足を掴んだ。

「騙したな!自分だけ生き残るのか…!お前が元凶なのに!オレ達は雇われただけだ!」

二人は、引き摺り込まれて行く。

ジェイは、それを冷たく見下ろしながら、フンと鼻を鳴らした。

…何を言っても、生き残らねば意味がないんだよ。

ジェイは、そう思いながら穴に飲まれた二人が、クチャクチャと潰されて行く音を聞いていた。

だが、さすがに一気に3人は多かったのか、穴の中からげっぷのような音が聴こえたかと思うと、3人の成れの果てだと思われる肉塊や白い骨が穴から放り出されて来た。

ジェイが顔をしかめると、クックという笑い声が聴こえて来た。

ハッとその出所を探すと、最初に自分を神だと言ったあの男が、空中に浮いてこちらを見ていた。

化け物が、ひれ伏すように地面に這いつくばるのが見える。

ジェイは、言った。

「勝ったぞ。帰れるんだろう?!」

その男は、言った。

「まあ、平凡だな。」言われたジェイが顔をしかめると、男は声を立てて笑った。「一度目にしては上出来だ。だが、我は満足しておらぬ。こんなものではないだろう?お前は何度楽しんで来たのだ。我だってお前が楽しんで来た分だけ、楽しみたいと思うもの。」

ジェイは、叫んだ。

「一人で何ができるというのだ!みんな死んだぞ、約束通り帰せ!」

相手は、フフンとまた笑った。

「我は全能だと言うたよな。何度でもお前達は殺され、また我を楽しませるのだ。我が飽きるまでな。」と、手を上げた。「まあ一度目はお前は生き残った。だが、次はどうだ?その次は?殺された者や裏切られた者はお前を容赦しないだろう。殺されるがいい、何度でもな。」

すると、地面に転がっていた肉塊が、ウズウズと動き始めた。

そうして、段々に人の形になり始め、何かを求めるように四肢を動かしてもがいた。

ジェイは、腰を抜かした。

…どういうことだ…!?

大きな穴の回りは、蠢く何かで埋め尽くされていた。

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