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囚われた獣に心はあるか  作者:
囚われのヒト
15/27

15

『朝になりました。No.13は襲撃されます。』

真矢は、慌てて手を口に当てた。

薬を口に入れたのだろう。

…新でなく狩人を抜きに行った。

章夫は、思った。

ということは、噛み放題の状態に持って行こうとしたということだ。

天井から槍が飛んで来たが、真矢は恭介と同じように、その場にぐったりと座ったままそれを胸に受けた。

『議論時間は10分です。どうぞ。』

タブレットの数字が減っていく。

もはや無感動で、章夫は言った。

「結果貼ったよ。チャットで。総二さんは白だ。恭介さんで終わらなかったから、恭介さんも白。オレ目線じゃ、もう幸次郎さんしか人狼は居ない。」

幸次郎は言った。

「オレは総二黒。だから藍は狂人だ。」

広武が言った。

「みんな分かってるだろうけど、恭介は白。今日は占い師の決め打ちだけど、もし幸次郎さん真だったら平太さんか識さんが狂人だったら間違えたらヤバいよ。」

藍は、頷いた。

「オレ目線じゃ確実に幸次郎さんで終わるから幸次郎さんを吊って欲しい。でも村目線じゃそれじゃまずいんだよね?」

広武は、頷いた。

「幸次郎さんが真の時は総二さんが黒だからね。君が狂人で明日PPだ。」

新は、ため息をついた。

「ということは、村人は確実に人狼を狙って行かないといけない。なぜなら、もし藍が真で狂人が白先に残っていたら、これで狼がどっちなのか分かったはずだからな。藍が狂人の場合も、総二が人狼だって分かった。つまり、どっちの場合も狂人は間違わない。村人が間違えたら終わりだ。」

総二が、ため息をついた。

「オレ目線じゃ藍が本物だと分かった。幸次郎さんが偽物だからだ。つまりは、オレの票は確実に幸次郎さんに入る。今日はオレか幸次郎さんのどちらかに投票って事になるな。」

今は6人残り、新、章夫、平太、総二、広武、幸次郎だ。

確定村人は広武しか居らず、白が確定している新と平太でさえ、狂人の可能性があって人外ではないとは言えなかった。

総二か、幸次郎が必ず人狼なのだ。

「…オレ目線じゃ、狂人が居るとしたら総二さんじゃないかって思ってる。なぜなら、初日の投票先が明らかに発言量の少ない竜彦さんではなく、平太だから。狂人なら狼っぽい所を吊りたくないから避けたとしたら合点がいくし。だから、オレ目線ではどっちを吊ってもとりあえず明日のPPは無いと思ってる。」

新は、言った。

「そう考えるのは自然だが、綺麗に潜伏している狂人が居たら終わりだ。今日は、総二が狂人だと思うなら幸次郎に、狼だと思うのなら総二に入れてくれ。時間が減って来るぞ。幸次郎な何か無いか。」

幸次郎は、言った。

「オレ目線じゃ総二が狼だと分かってるからな。総二を吊ってくれとしか言えない。初日の投票だってだから竜彦に入れてないんじゃないかって思う。オレはただ分からなかっただけだったけどな。」

総二は、首を振った。

「初日にたった一度間違えただけなのに!オレは本当に村人だよ!狂人でもない!そもそも狂人が、潜伏するなら回りに気取られたら駄目じゃないか。最後まで疑われずに生き残って最終日にCOしなきゃ潜伏する意味がない!目立って吊られるようなヘマはしない!」

広武は、減って行く数字をタブレットに見ながら、頭を抱えた。

「分からない!マジで無理だよ、どっちなんだ!どちらにしろこの中の狂人はもう人狼位置が見えてるんだろよな?!平太は?どう思ってるんだ、黙ってるけど、お前が狂人か?幸次郎さんが狼なのか?!」

平太は、ブンブンと首を振った。

「オレは狂人じゃないよ!でも他の狂人らしい位置が見当たらないから、総二さんが狂人なのかもって思ったり…だって、藍は初日から狼に入れてる。狼を追い詰めてるんだ、狂人にしてはやり過ぎな動きって気がする!だから、幸次郎さんが黒なんじゃないかって思う。」

『投票してください。』

画面が真っ赤だ。

皆苦悩する顔をしていたが、新は冷や汗一つかかずに、すっと指を動かしている。

そうして、皆が悩む中、投票は終わった。

『投票が終わりました。』


3平太→15

5識→15

6藍→15

8総二→15

10広武→15

15幸次郎→8


狂人が居ない…?

章夫が思っていると、声が言った。

『№15が追放されます。』



「…準備ができました。」ジョアンが言った。「いつでも薬品が噴霧できる状態です。」

彰は、頷いた。

「すぐに足輪を外せ!RD65を噴霧!」

「はい。」

早くしないと、また犠牲者が出る。

彰が焦って見ていると、画面の中では『№15が追放されます』という音声が流れていた。

それを同時に、そこに座っている全員の、足輪がガチャンと音を立てて床に転がった。

全員が、何が起こったのか分からないようで、自分の足と皆の顔を見て、困惑した表情をしている。

「突入だ!薬が効いただろう、早くしろ!」

彰が怒鳴る中、ジョアンは工作班が頭に着けているカメラで、それらが見ている映像を見ながら、言った。

「突入。全員昏倒しています。」

彰は、足を丘の上へと向けて、言った。

「拘束しろ。陰圧。ガスが抜けたら私もすぐに入る!アーロン、ハリーのAS502を準備しておけ!ジョアン、救護班を外に待機させろ!行くぞ!」

まだ助かる命があるかもしれない。

彰は、必死に丘を駆け上がって行った。


「…あれ」幸次郎は、薬を飲もうとして、驚いた顔をした。「なんか外れた!」

新は、それを見て椅子から立ち上がった。

「お父さん!」と、幸次郎を見た。「薬は飲むな!恐らく大丈夫だ。」

皆が困惑した顔をしている最中、章夫は新を見上げた。

「え、もしかして間に合った?」

何をもって間に合ったと言うかというと難しいが、新が無事だという点に置いては間に合っている。

新は、頷いた。

「私の父が来た。恐らくどこにあるのか知らんが指令室が制圧されているはずだ。」

総二が、混乱した顔をして、言った。

「え、え、つまり、君の父親が助けに来たとかか?」

新は、また頷いた。

「それしか考えられない。私の居場所は、どんなに隠しても分かるのだ。」と、どこで聞いているのか分からないが、天井に向かって叫んだ。「お父さん!扉を開けてください、i630054の投与が間に合っている者達が居ます!」

すると、室内のマイクから、知らない声が響いた。

『ジョン、指令室は制圧しました。RD65を噴霧して今陰圧を掛けています。全ての扉を開きます。』

皆が目を白黒させている間に、一斉に扉が開いた。

中には、死体が累々と見えていて皆が思わず立ち上がって退くが、新は構わず叫んだ。

「№7、12、17は投与できている!すぐに運び出せ!後は、ここに転がっている竜彦と恭介、真矢の三体だ!優先順位は、17!急げ!」

17は、絵美里だ。

絵美里は、初日にゲームをしないと言って、槍で処刑されていた。

新が様子を見に行っていたが、息があるが何もできないと言っていた。

だが、恐らく調べている時に、口に錠剤を押し込んだのだと思われた。

この中では、一番先に犠牲になった人だった。

「…待て、つまり秀幸も、茉奈さんも、絵美里さんもこの薬を飲んでるのか?」

幸次郎が言う。

新は、頷いた。

「そう。完全に監視されているので、全員に渡すことはできなかった。それに、私はこれを1ダースしか持っていなかったしな。2日目の朝に見つかった者達4人は、諦めるしかない。もう…腐敗が始まっている。」

血の匂いとは違う、物凄い臭いが辺りに充満しているので、それは皆にも分かった。

つまりは、新が直接に関わって看取る状態だった人にだけ、この薬を監視の目をすり抜けて飲ませられたということなのか。

「…でも、茉奈さんは?」章夫が言う。「襲撃されたよね。」

新は、答えた。

「狩人だとCOした時、茉奈さんが自分の襲撃先を向けようとしているのを感じたのだ。なので、部屋に戻る前にゲームの話をするふりをして、サッと薬を渡した。死にたくなければ、襲撃の前にこれを飲めと。時間制限があるので、なるべく直前に。飲んでいるはずだ。」

そこへ、わらわらと20の部屋の奥から、ガスマスクをした男達が駆け込んで来た。

どう見ても怪しかったが、新は言った。

「よく来てくれた。父は?」

その男は、マスクを外して言った。

「はい、外に。救護班が待機しています。」と、竜彦を見た。「…効いてますね。運びます。」

新は、頷く。

見ると、小部屋の奥の壁がぱっかりと開いて、そこからもわらわらと他の男達が出て来て茉奈や、秀幸を運び出して行くのが見えた。

秀幸はここで死んでいたが、どうやら死体は部屋へと放り込まれていたようだった。

それは、絵美里も然りだった。

「遺体は一応、調べてくれないか。無理だとは思う。何もできなかったからな。」

男は、頷いた。

「はい。死体袋に入れて運び出していますが、とりあえずは見てみるつもりです。ですがこの臭いですし…恐らく、無理かと。」

新は、また頷く。

幸次郎が、困惑したまま言った。

「オレ達はどうなる…?オレ達をこんな所に閉じ込めていた奴らは?」

新は、幸次郎を見た。

「そいつらには、それ相応の思いをさせようと思っている。私達は寛大だが、卑劣な輩は許せないのだよ。死ぬより酷い思いをさせるので、安心して欲しい。」

それを聞いて、幸夫は身震いした。

新がこう言うということは、死んだほうがましだと思うような事をさせられると思われたからだ。

だが、新の正体を言うわけにも行かないので、黙っていた。

すると、章夫も知っている、アーロンが入って来て、新を見た。

「ジョン。お父様のジョンが来てますよ。それで、残った方々の検査もしておきたいと。変な薬品を投与されたりしていたら大変ですからね。」

章夫は、それを聞いてハッとした。

アーロンは、脳神経の関係の研究をしている責任者だ。

つまりは、恐らく記憶をどうにかしようと思っているのではないかと思ったのだ。

新は、頷いた。

「そうだな。皆見た感じ普通だが、今まで変な輪を足に付けられていたし。皆、一度外の救護班の所へ行くといい。その後で、家に送って行こう。」

総二が、ホッとしたような言った。

「良かった。もう疲れた…本当に、助かったんだな。」

新は、頷いた。

「ああ。もう帰れる。だが…」と、小部屋から黒い袋に詰められて運び出されて行く、者達を見た。「全て助けられなかった。丞、一明、沙月さん、杏奈さん。それに、最初の襲撃で犠牲になった隆司という男。この5人が、恐らくもう助からない。」

広武が、言った。

「でも、竜彦と恭介と真矢さんは助かるんだよね?それに、さっき言ってた絵美里さんと茉奈さん、秀幸も。もう絶望的だと思ってたのに。」

新は、それでも悲し気に死体袋を見送った。

「何もできなかった。私は、ヒトを助ける研究をしているのに。それだけに、この犯人は許せない。何のためにこんなことをしたのか知らないが、助けることもできない傷を与えるなど…。徹底的に痛めつけてやろうと思う。」

「さあ、こちらへ。」アーロンは、総二、広武、幸次郎、平太を見た。「ジョン、指令室にはケントがご案内を。藍さんは、ジョンと一緒に行かれます?」

章夫は、頷いた。

「うん。オレはどうせ識と一緒に帰るから。」

総二が、言った。

「助かった。またどうせ警察の事情聴取とかで会うかもしれないな。またな。」

章夫は、微笑みながら頷いた。

「うん。またね。」

そうして、4人はそこを出て行った。

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