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日本語訳について


このパーリ語教科書は Charles Duroiselle 氏の 古い教科書 Practical Grammar of the Pali Language を日本語訳したものです。 底本は http://www.buddhanet.net/ Buddha Dharma Education Association Inc. による「第三版」です。これは第二版を現代の方が電子テキスト化し、 誤字脱字等を修正したものだそうです。底本にはその作業を行った方の 「第三版序」がついているのですが、それには著作権がありますので訳出しませんでした。 ですのでこの翻訳は「第二版序」から始まります。 訳者はこの翻訳を作るにあたり明らかな誤植をできるだけ正しました。 韻律論の校正は vuttodayaṁ に拠りました。


訳者はこの翻訳データ (この序文を含む) をパブリックドメイン (CC0) に置きます。 ご自由にお使いください。


訳者記す

第二版・序


この文法書が著わされたのは、学校や大学においてそれが喫緊に必要とされている時でした。 ですから三か月とちょっとという短い期間に構想され、書かれ、校正され、 出版されました。少し間違いが混入していたにも関わらず ――これは今回修正されました―― この本はヨーロッパにおいて、 著者の期待を、もし期待していたとすればですが、上回る贔屓を頂きました。 しかしインドにおいては、そのような好意的な反響はありませんでした。 インドの紳士たちによれば、この本の大きな欠点は二つありました。 まずこの本は、太古のヒンドゥーによる文法解説の体系にあまり忠実でありませんでした。 この偉大な体系は、全ての学者がすぐにわかることですが、 確かに非常に適切なものです。――実際、 最初のサンスクリット文法と、それをモデルにした最初のパーリ語文法が編まれた時代の、 その当時には、教授法として唯一の適切な体系でした。しかし時代が変われば 方法も変わるものです。 古いヒンドゥーの文法体系のメリットがいかに否定できないとしても、 もっと明快で、素早く、理性的な西洋の教え方に、それはうまく馴染むことが できないと思っているのは、私だけではありません。 ですが、常道から外れている事柄のうち、もっと許されないのは、 サンスクリットの語形に絶えず言及して、それと比較し、それから パーリの語形を導くということを、著者が必要と考えていなかったことでした。 こうして比較していく方法は、サンスクリットをすでに知っている人が パーリ語を学び始めようとするときには、確かに素晴らしく有用なことですが、 この本が対象としている学生の需要には、実用的な風には応えられません。 対象読者はサンスクリットのサの字も知らない若い学生ですし、 そのほとんどは、そのような勉強法をとろうとは少しも思わないからです。 さらに言えば、後々サンスクリットを学ぶ人には、二つの言語間の 密接な関係はおのずから明らかとなるでしょう。


(603) 節において、いわゆる「絶対主格」に言及しました。 これはラングーンで出版された Niruttidīpanī というパーリ語の 本で解説されています。M. Monier Williams もまた、 自身のサンスクリット文法書の序において、これに言及しています。


本職の文学の仕事をしなくてはならず、大変忙しくて、 私はこの第二版を出版することができませんでした。 代わりにラングーン大学の Maung Tin 教授が、とても親切なことに この面倒な仕事を引き受けてくれて、 全ての校正刷りを読んで直してくれました。 特にこの本のような性格の本の校正読みを経験したことのある人であれば、 私の古い学生が私のためにしてくれた仕事の大変さがわかるでしょう。 ですからここで彼に心から感謝させてください。


Chas. Duroiselle. 1915.

Mandalay にて


この文法書はラングーン大学の私の学生の仕事を手助けし、 パーリ語の勉強を容易にするために書かれました。 私の知る限り、サンスクリット語を少しも知らない学生の要求に沿う パーリ語文法書はありません。学生が Muller of Frankfurter and of Minayef のような、サンスクリット愛好家のために書かれた文法書に手を出すと、 手助けになるどころか混乱するだけです。それに、これらの文法書は 完全ではなく、名詞と動詞の屈折が載っているだけです。 現在出版されているものとして、James Gray 氏の文法書は、 同じ目的のために書かれていますが、長い間在庫切れです。 またその本には二つの難点があります。パーリ語が全てビルマ文字で 書かれていることと、学生が言語を完全にマスターするには初等的すぎることです。


私が思うに、ヨーロッパの本の中で、派生を系統的に、完全に扱ったのは、 初めてのことです。構文の章も、そんなに包括的ではありませんが (そうしようとすると、一巻を特別に割かなくてはいけません)、 新しい特徴です。過去に構文が扱われたのは一例だけ (パーリ語文法, H. H. Tilby, ラングーン・バプテスト大学, 1899) しかありませんし、 それもとても短くて、規則を説明するのに一つの例も挙げられていませんでした。


最も困難だったことの一つは、いくつかの語形 (主に同化と動詞) を、 サンスクリットの手を借りずに解説することです。 パーリ語をこのように解説すると、いくつかの場合において、 理解できないとは言わないものの、恣意的に見えるものがあるということが、 学者には理解できると思います。ですから、 サンスクリットを少しも知らない学生に向けて書くことが私の公言する目的ではありますが、 この本のあちこちにサンスクリット関係の解説を少しずつちりばめれば、 いくつかの語形がよりよく理解できるようになると思いました。 しかし、学生はそれらを読み飛ばして、与えられるままにパーリ語の語形を 受け入れても全く構いません。しかし二度目に読み返すときは、 それらも追うことをお勧めします。


規則の一つ一つは、jātaka やその他の本から採ってきた例を 豊富に使って解説しました。段落には番号を打ち、 規則を探す手助けになるように、必要なときにはいつも、 その番号を載せました。実際に読んでいる学生にとって、 その部分の文法を学ぶのがより容易になるようにです。


文法学的な新しい発見は期待しないでください。しかし学者たちも、 ヨーロッパのパーリ語文法書に一度も現れたことのない事柄を、 今出版されるこの本の中に、少しく見つけることができるでしょう。


次のネーティブなパーリ語文法書を参考にしました: saddanīti, mahārūpasiddhi, mahārūpasiddhi ṭikā, akhyātapadamālā, moggallāna, kacchāyana, gaḷon pyan。


ヨーロッパで出版された、私の手に入る文法書もすべて利用しました。


Chas. Duroiselle.

Rangoon にて 1906年 12月 20日

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