旦那ちゃんと嫁ちゃん~もしも秘宝館に行ってみたら~
古き良き。
ここは鄙びた温泉街、地からもうもうと湯気がでるなんとも情緒豊かな場所である。
旦那ちゃんと嫁ちゃんは古びた旅館が立ち並ぶ坂道をのぼっていく、硫黄のツンとした匂いを鼻に感じつつ坂をあがりきる。
そこにはインドのタージマハルを思い起こさせるような、一見、この場に不釣り合いな建物があった。
「・・・意外としっくり来ている」
旦那ちゃんは言った。
「・・・どこが」
嫁ちゃんは呆れ顔だ。
「ここが秘宝館だよ。別名パラダイス」
旦那ちゃんは指さす。
「やめなさいっ!恥ずかしいから」
嫁ちゃんは赤面する。
「さぁ、いこうか!」
旦那ちゃんは嬉々としている。
「え~いくの~」
嫁ちゃんは溜息混じりに言う。
「イクんだよ」
「言い方・・・」
2人は、素っ気ないふりをしながら、周りに人がいないのを確認してから、こそこそっと秘宝館へと入って行く。
「いらっしゃい~」
入り口には、いかがわしいくも素敵な大人のお〇ちゃがショーケース(販売用)に並んでおり、その中におばちゃんが鎮座していた。
「お、大人二枚っ!」
「旦那ちゃん、声うわずってるよ」
「ほほほ、ようこそ、楽しんでいってね~」
旦那ちゃんは、おばちゃんの含み笑いが気になった。
(勿論です!)
堂々と答えたいのを我慢した。
まずは、無数のち〇この木製はりかたが、所狭しとお出迎えする。
「すんげ~」
「どれも旦那ちゃんのより、大きいね」
「・・・・・・」
彼はそっと涙を拭う。
マリリンモンロー風の蝋人形が、ガラスケースの中に展示されている。
そこには、ぽちっとなボタンが。
「なにこれ?」
「押してみそ」
ぽちっとな、下から風が吹き、モンローのスカートがめくれる・・・ええ、スッポンポン。
「ああね」
嫁ちゃんの目は死んでいた。
次は「白雪姫と七人の小人」の蝋人形。
「ぽちっとな」
蝋人形たちが動きだし姫と王子の行為を小人たちが覗いている。
「ふーん」
嫁ちゃんはただただ頷いた。
「なっ、すんげーだろ」
旦那ちゃんは子どものように喜んでいる。
「アワビを採る海女さん」の蝋人形。
「ああ、これは」
アワビを採る海女さんの服がはだけアワビが御開帳。
「ですよね~」
うんうんと頷く2人。
のぞき穴がある。
「見て見て」
旦那ちゃんが手招きをする。
嫁ちゃんが覗くと、たらいで行水する女性が見える。
勿論、ぽろんしている。
「昭和ね~」
嫁ちゃんは、中の周りの木の塀やホーロー看板を見て言う。
「でしょ、でしょ」
旦那ちゃんは、にこにこしてる。
昭和の映画館を彷彿とさせる小部屋では、にっかつロマンポ〇ノが絶賛上映中。
「今の人達がこれ見て興奮するかな」
「うーん、自分達の頃はプラス妄想力を働かせていたからね」
「ふーん、こういうのお世話になっていたの」
「モチのロン」
春画の展示や、世界の性事情なんぞを見学し、2人は外へ出た。
「どうやった?」
「うーん、いやらしいんだろうけど、そこまで感じなかったなあ」
「ドギツイ表現もあるけど、それが蝋人形だったりしているからね・・・ノスタルジック的なのもあるよね」
「古臭くて、懐かしい・・・手作り感?」
「そうだね」
「でも」
「でも?」
「旦那ちゃんのより、木型の方が大きかったよ」
「・・・そんなことは・・・」
「ある!」
「・・・・・・うわーん」
坂を転がるように走る旦那ちゃん。
「ちょっ、旦那ちゃん転ぶよ!・・・あっ、転んだ」
「人間起き上がりこぼし」
旦那ちゃんは見事に反転して立ちあがった。
ちゃん、ちゃん。
また、行ってみたいな~秘宝館。