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コペンハーゲン  作者: まんまるムーン
5/15

6-2




弘人はケータイを取り出して誰かに電話をかけた。



「あ、もしもし、おまえ今暇? ちょっと悪いんだけどさ…」


電話をかける弘人を花蓮はじっと見ていた。


ふと、自分が窮地に立たされた時、何故いつも助けてくれるのは弘人なんだろうと思った。


「…頼むな! 待ってるから。サンキュ!」


弘人は安堵のため息をついて、花蓮に微笑んだ。


「さっき、店側に時間を一時間ずらしてもらうように交渉したんだ。それで友達に頭数揃えて来てもらうようにした。小田って覚えてる? 高校の同級生の! あ、そういえば、斎藤の友達と付き合ってた…」


花蓮の頭に辛い思い出が蘇った。


高校時代の親友の葵と付き合ってた人…。


葵の事を思い出すと、今でも胸が痛い。


「あいつもこっち来ててさ、大学でフットサルやってるから、その友達かき集めてきてくれるって。最初眠いだの何だの言ってたんだけど、斎藤が困ってるって言ったら、任せとけってさ。」

弘人は思い出し笑いをしながら話した。


「ありがとう。中島君。ほんとに…感謝しかない…。」


「いいって。」


「中島君がいなかったら…どうなってたんだろう。考えるだけでも恐ろしい。」


「…。酷い目あわされたんだから、キチンと抗議しないとな。」


「…自信ないな…。」


「何も言わないで泣き寝入りしてたら、またやられるぞ。」


「…そうかも…。」


「斎藤なら冷静に対処できるはず…。だって!」


「…。だって?」


弘人は気まずそうに顔を逸らせた。


「いや…なんとなくそう思うだけ。というか、むしろそうあって欲しい。強く賢く美しく!」


「?」


「ま、俺の理想なんだけど…。」





しばらくして小田がフットサル仲間を連れてやってきた。


「斎藤さん久しぶり。」


「小田君…ほんとうにありがとう。それから、お友達の皆さんも、本当にありがとうございました。」


花蓮は深々と頭を下げた。


感謝の気持ちと申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになって、涙が止まらなかった。


「いいから、いいから! 俺たちもしばらく飲み会してなかったし、ちょうどいいタイミングだったんだよ。なぁ、中島!」


小田は弘人をニヤニヤしながら見た。



飲み会は盛り上がっていて、花蓮は安心した。


「斎藤さん、あれから葵と会ってないの?」


「…うん。」


「そっか…。あんなに仲が良かったのにね。」


「私、いまだに葵が私の事を嫌いになった理由がわからないの。小田君、そのこと何か聞いてる?」


「う~ん…。」


「教えてくれないかな。」


「あ~、どうなんだろ。俺なんかが言っていい事なのか…。しかも俺、葵とはもう別れてるしね。付き合ってた時の秘密を別れた後に勝手に言うってのも…。」


花蓮は困り果てている小田をまじまじと見た。


「あ~、なんかいい。小田君…そういう人だったんだね。葵が好きになるはずだ。」


「そう? 俺のイメージ、変わった? じゃあ斎藤さん、俺と付き合う?」


小田はニコニコして花蓮に言った。


「ん~、またイメージ変わったかも…。」


「なんだよぉ~。って、俺は斎藤さんとだけは付き合えないの!」


「ん? 何なのそれ?」


「斎藤さん、弘人とは付き合わないの? こっち来て、何度か会ってるんでしょ?」


「え? 中島君? 中島君と付き合うなんてないでしょ!」


「どうして? 今日だって助けてくれたでしょ? 普通ここまでしないよ。それに…」


「だって! 中島君、彼女いるでしょ? 前に一緒に腕組んで歩いてるとこ見たことあるし。それに高校時代だって、一度私と葵と小田君でデートしよってなった時に断ってたし。ていうか…、一度も誘われたことなんてないよ。中島君は私の事なんて何とも思ってないもん。」


「…。一気に言ったね…。弘人…今は誰とも付き合ってないと思うけど…。それに…」



「何俺の話で盛り上がってんの?」


二人の所に弘人がやってきた。


「担当直入に聞く! 弘人! お前はなんで斎藤さんと付き合わないの!」



小田はすでに酔いが回ってきていた。


「はいはい、お前飲みすぎだって! そのくらいにしとけ!」


「俺はシラフだ! お前昔から斎藤さんの事ばっかり見てただろ! 好きなんだろ!」


花蓮は弘人をじっと見ていた。


弘人は花蓮の視線に気づいた。


「男だったらはっきり言えよ~!」


小田が弘人の背中を押して花蓮の前に立たせた。



「…付き合いたいとは…思って…ない…。」


弘人は花蓮から視線を逸らせて言った。


「おまえ…、何言ってんの? 正気か?」


小田はそういうと、ダウンしてしまった。



花蓮は目の前にあったビールを一気飲みした。


「すいませーん、ハイボール!」


ハイボールが運ばれてくると、それもまた一気飲みした。


「飲みすぎ! やめとけって!」


弘人は花蓮を制止した。


「大丈夫。自分の限度は知ってますから。これで終わり。」


花蓮は酔っぱらって弘人にきつい口調で言った。



弘人は心配そうに花蓮を見た。


水をもらってきて、花蓮の横に座った。


「水飲んだほうがいい。」


花蓮は弘人のくれた水を一気に飲み干した。



「送っていくよ。」






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