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コペンハーゲン  作者: まんまるムーン
13/15

9-10




9.



 今晩会えないかな? 話があるんだ。


仕事中、花蓮のケータイに弘人からメッセージが入った。


花蓮は仕事が終わると、弘人が指定したレストランへ向かった。


時間よりだいぶ早く着いたのに弘人は先に来ていた。


「早かったんだね。」


「いろいろ切り上げてきた。」


「外、すごいね!」


壁いっぱいの窓の外に、みなとみらいの夜景が広がっていた。


「きれいだな。」


「うん。」


「…花蓮…」


「ん?」


「一緒に…コペンハーゲンに行かないか?」


「コペンハーゲン!」


「うん。俺、赴任することになったんだ。」


花蓮は少し驚いた。


 あれ… コペンハーゲンって… いつかどこかで…


花蓮はふとデジャヴュのようなものを感じた。


葵が言ったように、結婚話が出るかもしれないとは思っていたが、まさか海外赴任で、コペンハーゲンについて行くなんて…。


 …ん…?


 コペンハーゲンって…、どこの国だっけ?


「デンマークだよ! デンマークの首都! 花蓮、コペンハーゲンってどこの国って思ってただろ!」


弘人は思わずニヤニヤして、花蓮を見た。


そして真剣な表情に変わった。


「俺と結婚して一緒にコペンハーゲンに行ってください!」



窓の外には観覧車が輝きながら回っていた。


花蓮の目の前の景色も、輝きながら回りだした。





10



暖かくて柔らかい薄いピンクの靄の中に浮かんでいた。


このままずっとフワフワ浮かんで眠っていたいと思っていた。


いきなり花蓮の手を誰かがつかんだ。


横を見ると、弘人がいた。


弘人は制服を着ていた。


高校時代の弘人だった。


そして花蓮も高校時代の花蓮だった。


「下に俺たちが見える。」


弘人はつぶやいた。


目を凝らすと、靄がだんだん消えていき、校舎がはっきり見えるようになった。


そして校舎もだんだんと消えて行って、校舎の中が見えた。


廊下に弘人と小田が立っている。弘人は花蓮をじっと見つめていた。


「弘人、ずっと私の事見てるね。」


「…うん。この時だけじゃない。いつもいつも…花蓮のこと、目で追ってた。」


「何故見てたの?」


「何故って…。」


「大学の時、何度も付き合うかもしれないチャンスあったけど、付き合わなかった。私、好かれてないと思ってたよ。」


「そんなこと、ありえないよ。ただ…。」


「ただ…?」



「俺、思うんだけど…、果物とか美味しくなるまで寝かせとくでしょ。ワインなんかも。人間関係もそういうのってあるような気がするんだよな…。」


「…私は食べ物か?」


花蓮は眉間に皺を寄せた。


「いや、そういう意味じゃなくて…。でも、俺たちの場合、待つことが大事なんだ。俺にとっても花蓮にとっても…。」


「…、全く意味わかんない…。」


「ずっと花蓮と一緒にいたい。」



「ほんとに?」

「うん、ずっと一緒。死ぬまで一緒。だから我慢もするし待つこともいとわない!」



「見て!」


花蓮が見下ろすと、もう高校時代の二人はいなくなって、今度は大学時代に初めて弘人と話した喫茶店にいる二人が見えた。



喫茶 コペンハーゲン


「俺、めっちゃクールな顔してるけど、ほんとは嬉しくてニヤけてしまいそうなのを必死に堪えてたんだ。」


「そうだったの? そうしてくれてたらよかったのに。」


弘人はそう言って少し膨れている花蓮を愛おしそうに眺めた。


「あ! 今から大学生の俺が言うこと、しっかり聞いておいて! 潜在意識の奥底にたたきこんで!」


「え? どうして?」


「いいから! ほら、もう言い始めるよ!」


大学生の弘人は、弘人は窓の外に見えるカフェの看板を見ながら言った。



「コペンハーゲンか…。」



花蓮はしっかりと聞いた。


振り返って弘人を見た。


二人はしっかり見つめあった。


弘人の輪郭はだんだんぼやけていって、そして姿は消えていった。






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