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1. プロローグ

ふと小説が書きたくなったので書きました。更新は気分でしていきますのでご了承ください。

読み終わって「ええやん」と思っていただければ嬉しいです。

よかったら評価・感想をお願いします。僕がやる気になります。

【 忍者 】


──それは源平時代に始まり、室町時代から江戸時代の日本において、大名や領主に仕え、または独立して諜報活動、破壊活動、暗殺など様々な仕事を密かに行っていたとされている。


戦国時代までの日本には欠かせない存在の忍者ではあるが、江戸時代になると隠密、御庭番と呼ばれ始め、明治維新の頃にはすっかり、忍者と呼べる存在は次第に姿を変え、または消しながら他の様々な方面へと散って行った。


現代において、忍者というものに一番近いのはやはりスパイであると思う。しかし彼らは近いだけであって忍者とは到底言い難い。映画や小説の中でスパイは改造した車、秘匿された技術を使った装備などは使うが、忍術は使ったりしない。


 やはり忍者とは、忍術を使うからこそ、忍者たり得るのである──。




✿✿✿✿✿




──春の香り。緩やかな風に吹かれて散り落ちる桜の花びらを眺めながら、僕はこれから始まる新しい生活に大きな不安と少しばかりの期待を胸に、学校へ向かう川土手の桜並木道を歩いていた。今日の予定は高校の入学式。結婚式やお葬式など。昔から、ただ座っているだけ、ただ眺めているだけの行事は好きじゃないから行かなかったりもするが、自分の入学式には参加しないわけにはいかない。何とも面倒なものだとずっと思っている。


今までの学校生活はすべて私服でよかったが、これから入学する学校は制服を着なければいけない。慣れないネクタイをなんとかしめたはいいものの、少し右に寄ってしまっているが、これも話のネタになるかと思って諦めてしまった。ダサいけど、たかがネクタイひとつで朝から疲れるなんて真っ平御免だ。


そんなことを考えながら歩いていると、後ろから僕の左横を女学生が走り抜けて行くかと思えば、目の前で道に散る桜の花びらで盛大に滑った。



「──うえっ!?」 「──はっ!?」



僕は思わず右手を彼女のお腹に回して抱きかかえるようにして支えてしまった。しっかりと勢いを殺すように支えたから苦しくはなってないと思う。……多分。彼女の後ろで一つに結んだ髪から、ほのかに白檀の香りがした。



「うっ……あれ?」



転ぶと思って目をつむっていた彼女は、いつまでたっても衝撃が来ない事に気づいて疑問と共に目を開けた。自分のお腹を支える手を見て、まるでギギギギと音のなりそうな様子で振り向き、僕と目が合った。助けたはずなのにとても気まずい……。



「あ、あの……大丈夫、ですか?」


「ひっ……! あ……えと……こほん! 大丈夫です。ありがとうございます。」



彼女は俺の顔を見て驚いた後、咳払いをして半ば振り払うように俺に手を押し返した。制服に着いた汚れがないかはたいて確かめている。


ちなみに、彼女の目はずっと僕を睨みっぱなしだ。……もしかしたら顔から地面に突っ込ませた方が良かったのかな?と思ってしまう程度には強い眼力がある。やはり彼女に触れたことで逆鱗に触れてしまったのだろうか。それなら急いで謝らないといけない。



「えーと……怪我しなくて良かったです。支える為とはいえ咄嗟とっさに触ってしまってすいませ──」


「……他言無用でお願いします。」


「そりゃもちろん?」


「触ったことじゃなくて、私がコケそうになったこと! 誰にも言わないでくださいよ」


「は、はぁ……。」



俺が咄嗟とっさとはいえ (大事なことなので) 触ってしまった事に怒っているもんだと思って謝罪したのに、少しズレている気もする……。普通は「私に触らないで!」的な感じになるもんじゃないのか?まぁ下手に騒がれるよりは断然マシだろうけど。



「一応、助けてくれてありがとうございました。では私はこれで……ってあれ?」



少しつっけんどんな態度で俺に感謝を伝えて去ろうとした彼女は、何かを思い出したかのように辺りを見回している。何をしているのか分からなかったが、ふと彼女が滑った時を思い出して気づいた。持っていたカバンが見当たらない。


前のめりに滑った時、カバンを放り投げていたのを思い出したので、飛んで行った方向を探す。すると、桜の木の枝に引っかかっているのを見つけた。



「あのー、あそこに引っかかってるのって君のじゃない?」


「えっ? あ……あんなところに……。」



カバンは少し高い所に引っかかっていて、彼女の身長ではジャンプしても少し足りない。睨まれてたとは言っても困ってる人を見捨てるほど俺は落ちぶれちゃいない。ちゃちゃっと取ってあげることにしよう。多少彼女の睨みも和らいだりするかな? いやいや、下心なんでないですよもちろん。ええ。



「ちょっと待ってて。」



俺は自分のカバンから手ぬぐいを取り出して、足元に落ちている少し大きめの石を拾い上げると、片方の端を右手首へ回して固定してもう一方の端は右手に持つ。拾った石を布で包み、頭上で回して十分な速さがついたら端から手を放す。


 すると布から石が飛んでいき、思惑通り引っかかったカバンにあたって木から外れた。落ちてきたカバンに手を伸ばしてキャッチして、少し汚れをはたいて彼女に差し出す。



「はい、どうぞ。ちょっと手荒だったけどごめんね。」


「すごい……いやえっと、ありがとう……ございます。あの、さっきのって……?」


「どうかした? あ、もしかして石当てちゃなんかまずかった?」


「それはいいんですけど……。石拾って、回して、投げてましたよね……?」


「ああこれ、印地いんじっていうんだ。分かりやすく言うなら石つぶて、かな。聞いたことない?」


「いんじ……いしつぶて……?」



聞かれたことを答えたものの、どうやらあまりしっくりこない様子。この説明でしっくりこないならもっと根本的な所から説明しなきゃいけない、けどそれにはかなり時間がかかってしまう。どうしたものかと思いつつ、そういえばと気になったことを逆に問い返してみる。



「そういえば、なんか急いでるんじゃないの? さっき走ってたし。」


「あっっ、そうだった! 学校始まっちゃう!!」



どうやら学校の始業時間に間に合わせる為に急いでいたみたいだ。結局のところ、急ごうとして走ってこけて時間をつぶしてしまっていては本末転倒ではあるが……。



「あ、あの……ありがとうございました。それじゃ!!」


「あっちょ……もうコケないように気を付けてなー!」



彼女は急いで走って行った。彼女がいなくなっただけでとても静かになったように感じる。また、春の香りを強く感じるようになった。風が頬をなでる。さっきの騒がしいような出来事との差が、尚更俺に強く春を感じさせているのかもしれない。



「なんだか忙しい人だな、毎日大変そう……。俺も学校行かなきゃな。」



そうしてまた歩き出す。いまだに遠くに見つけられる彼女の後姿をぼんやり眺めながらふと思い出す。


 ──そういえば入学式って始まるのって何時からだったかな……。確か9時から教室に入れて半からクラスで説明会開始だったような気がする。ポケットからスマホを取り出して確認すると、現在の時刻は9時26分。どおりで通学路に他の学生がいないわけだ……。



「──そんなこと考えてる場合じゃねぇじゃんッ!! 急げぇぇぇ!!」



道に散る桜の花びらで滑らないように気を付けながら、俺は学校へ走るのだった。


印地いんじ

印地は、日本で石を投擲することによって対象を殺傷する戦闘技術、行為、行事である。手で投げることを始めとして、投石器を使用するもの、日本手ぬぐいやもっこをもってそれに代用するもの、女性が領巾ひれを使用するもの、砲丸投げのように重量のある物を投げつけるもの、など様々な形態がある。


忍術とは関係ないかもしれないんですが、さすがに桜の木に引っ掛かったカバンを取るのにクナイとか無理あるかな...と思ったので無難にこっちにしました。

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