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熊本ラーメン

書き溜めたものを連投してみました。


以前余裕のある時は結構描いてたんだなぁ……

第8食 ラーメン


「お待たせレナ!コレが父さん直伝ラーメンだよ。」


ギルド兼料理屋のこの店に何度足を運んだだろうか?

店主で勇者で領主で命の恩人な目の前の男が爽やかな笑顔で初めて見る湯気の立つ温かいドンブリを私の前に置いた。


私はブリジット・レナレウス、ヴァイスハルト国

の都市のセイルレイにある教会でお務めを

するシスターです。


突然ですが私はラーメンが大好きです。


"今の"私は食べた事が無かったんだけど大好きなんです…………、

ん?どういう事だって?


…… その事を説明するには1人の男の話をしよう、日本に住んでいた田所総士と言う男の話だ。


その男は平凡な男だった。

小学生の頃はただ少しかくれんぼが得意な正義感の強い少年だった。


少年は成長し、高校生の頃には部活で始めたライフル射撃でオリンピック選手の候補に選ばれるほどの腕前を手に入れ、かくれんぼが得意で正義感の強いライフル射撃が上手い青年になっていた。


その運命が変わったのは、総士が大学に入って少しした頃

ある日の帰り道、家の近所で幼なじみの神宮寺 咲が暴漢に誘拐される所を目撃した事が全ての始まりだった。


ワゴン車に押し込まれる咲を目撃した総士は、乗っていたバイクで尾行し、廃工場で停車して暴れる咲を無理矢理中に連れて行く男達に怒りを覚えながら助けるタイミングを計っていた。


途中で警察に連絡を入れていた事もあり、誘拐だけなら人質は傷つけないだろうと考えていた総士だったが、咲の前に立ったチャラい男が下卑た笑みを浮かべ咲の服に手を掛けると強引に引き裂いた。


咲の叫び声が聞こえ、目の前が真っ赤になった。

更に視界の端には眼鏡を掛けた男が注射器を持ってにやにやしているのが見えた。


最早我慢が限界に達した総士は5人の男達に立ち向かった。


結果は鍛えていた総士に5人の男達がボコボコに延されたのだが、総士は男達の執念を甘く見ていた。


延した1人の男がのろのろと立ち上がり、咲の身を案じて話しかけている総士の背後から拳銃で発砲、総士を狙ったが外れて咲の腹部に当たってしまった。


気がついた時、総士の手には拳銃が握られており、足下には拳銃の持ち主だった男が頭部から血を流して倒れていた。


警察に連絡を入れていた事もあり、その後10分くらいでパトカーや白バイが何台も現れて拳銃を持った総士は取り囲まれて捕まった。


総士は警察署で事の次第を話したが取り合ってもらえず、唯一の証言者となる幼なじみは意識不明の重体で話す事もままならなかった事も重なり釈放されなかった。


何日か同じ話を警察官にしていると、警察署の廊下で咲を襲っていた男達の1人が前から歩いてきた。

その男は手錠もしていなければ警察官に横柄な態度で接して居て総士は何かおかしいと感じた。


すれ違いざまに男が一言、


「テメェ覚えてろよ、俺たちの邪魔したこと絶対に後悔させてやるからな。」


と、言ってきた。


結局咲の意識が戻らず、俺は廃工場に遊びに来た大学生グループを偶然手に入れた拳銃で襲った殺人犯として刑務所に送られた。

何度も無実だと言っても取り合ってもらえなかったのは恐らくあの男達の中に警察に圧力をかける事の出来る人物でも居たのだろう。


それから1ヶ月、警察署でなんとか過ごしていると咲から手紙が届いた。

意識が戻ったのか、と安心して読んでいると何かおかしな事が書いてある。


つい先日、総士の自宅が火災にあい両親と妹が亡くなったと言うのだ。


そんな馬鹿な、と思い手紙の返事を書く。


更に3日後に帰ってきた手紙には依然として同じ内容と謝罪が書き連ねてあった。

目の前が真っ暗になった総士はそれから全く動かなくなり2日間寝込んでしまった。


牢屋の前で誰かが高笑いをしている。

此処は凶悪犯の収容施設の為、小部屋になっている筈だが?煩いと思い声の方に目を向けるとそこには、


「おっ?やっとこっちに気づいたか、久しぶりだな偽善者野郎、どうだ?後悔したか?」


と、嬉しそうにしている、取り巻きの男達も一様に同じ様な顔で総士を見ていた。


なんでこいつらが此処に居る?捕まった?いや、手錠もしていなければ私服のままだと?


混乱している総士にリーダー格の男が一言


「テメェのせいでオヤジには怒鳴られるしジジイには媚び売らなきゃいけねェし散々だったぜ、まぁテメェの母親と妹はあの時ヤリ損ねた姉ちゃんの替わりにおいしく頂いてヤッといたぜ!」


「あの時のテメェの妹の様子録画してあるから今度見せてやるよ!」


「わんわん泣き喚いて煩かったから容赦しなかったからな、まぁそれはそれで楽しめたんだがな?」


「母親も2人産んだとは思えねぇ上物だったなぁ勿体無いことしたな。」


コイツらは何を言っている?


妹の様子?録画?


母さん?何故コイツらが2人の事を?


考えるまでもなくコイツらが総士の家族に手を出したのは明白だった。

コイツらは腹が立ったと言うだけで総士の家族を蹂躙し、家に火を着けて殺したのだと気がついてしまった。


それからだいぶ暴れたのだろう…総士には更に厳重な警戒がされていた。

しかし、総士には才能があった…"隠れんぼ"の才能が…。


生まれながらに持っていた不思議な力で脱獄し、男達に復讐していった。


最後の1人となった時、総士は神出鬼没の暗殺者として世間に認知されていた。


最後の1人は南米で麻薬組織の一員になっているらしく総士は1人でその組織に侵入していた。


これで最後、コレが終わったら俺も死のう。

そう考えながら進んでいくと、忘れもしないあの声が聴こえてきた。


「で?ボス?ホントに打っちゃっていいんで?ヤバイっすよ核は?」


核?何のことだ?と思い聞いていると、


「問題ない、我らの同志がそれを契機に表に出る。そうすれば世界は我々のものだ。キミにも良いポストを用意しよう。」


「此処は近いけど大丈夫なんですよね?」


「大丈夫だよ、その施設は核シェルターになっていて発射と同時に一時閉鎖されて安全だ。

君はそこから大国の崩壊する様子を眺めていると良い。」


了解っす。と、軽く返事をする復讐相手


何やら大変な事になってるなと思ったが復讐する事に変わりは無く、ついでに妨害してやろうと決心した。


奴が移動する、隠れんぼの才能を使い尾行していると総士の他にも奴を尾行する存在を確認した。


「声を出すな…敵じゃない…お前は奴の仲間か?」


尾行者の背後に回り問いただすと、驚き肩をビクッとさせた後首を横に振る。


「アナタは何者ですか?もしかして此処に来る途中の見張りが何人か居なくなっていたのはアナタがやったんですか?」


尾行者の質問に肯定の意思を示す為首を縦に1回だけ動かし目は奴を見続けている。

すると奴は総士が工作する迄は厳重な警備を施されていた扉の前で立ち停まる。


ーピッ、ピッピッピ……ピーー


奴が電子ロックを解除するとドアが左右に開く

尾行者と共に隠れんぼの才能を使いドアが閉まる前に侵入する。


目の前の光景は何だ?


何だこのミサイルの量は?


混乱していると、尾行者が、情報通りか…と呟いた。


格納庫らしき場所の天井に陣取り奴の行動が見えて動きがあったら止められるぐらいの距離で漸く一息ついた総士達は此処で始めて自己紹介をした。


相手は退魔?組織の人間らしく何でも人間を滅ぼそうとする妖がこの施設を運営していて調べにきたらしい

随分若いので年齢を聞くとまだ16だと言い名前は将生 十蔵君と名乗った。


俺らの様な裏の人間には名乗らない方が良い、と忠告してあげると、ありがとうございます。などと素直に礼を言って来る。


総士もこの後死ぬつもりだったので名乗ると十蔵君はたいそう驚いたのか声を出さずに目を丸くしながらこんな事を言ってきた。


「アナタが有名な"霧隠れ"さんでしたか!あの…サインして貰えませんか?」


どっからか取り出したサインペンとノートを総士に差し出してきた。


呆れながらもサインを期待している彼にサインを書きながら奴の方を監視する。


「……そう言えば、霧隠れってどういう事だ?俺は指名手配されている筈だが…」


それを聞いた十蔵君は不思議そうに首を傾げ


「えっ?知らないんですか…」


と総士の名前を知った時の様に驚く


理由を聞こうとした時、視界の隅で奴が動いた。


唇の動きから、「今からミサイルを発射する」と言っていたので素早く動く。


呆気にとられて出遅れた十蔵は総士に遅れて着いて行く


「じゃあ!俺を認めない世界にサヨウナラ〜!そして!!ようこそ!俺の天下!!」


ミサイル施設の一室で男は高笑いをあげながらコンソールを操作する。


そこに、


ーバキッバキッバキッバキッ……ドーンー


自分が先程入ってきた扉が枠ごと壊され、外には黒髪に蒼い目をしたぼろぼろのコートを羽織った男が立っていた。


「何だテメェ!此処が何処で俺が誰か分かっててやってんのか!!あぁ?!」


男は怒りをあらわにしながら総士に問いかける。


「……分かっているさ10年前のあの日から…キサマが唯の……クソ野郎だって事がなぁ!!!」


詰め寄る男の顔に全力の拳を叩きつけると吹っ飛び壁に叩きつけられた、そして男は何かブツブツと呟く。


その瞬間、危険な気がして背後に跳ぶと先程まで自分の立っていた場所がズタズタに切り裂かれていた。

何故?と思い男を見ると姿が豹変していた。

腕に無数の鎌のような物が付いた体格も大きい"

鬼"とでも言うべき存在に。


「ガァァァ!!!ニンゲンゴトキガァ!」


追撃が来た、死を覚悟した総士の前に刀を持った十蔵君が立ち、一言


「やはり人では無くなっていましたか…斬!!」


まさに一閃、奴?は十蔵君に斬られると黒い煙のようになって消えた。


呆然とする総士を余所に十蔵君がコンソールを見ているがよく分からないみたいだ。


総士は1人で行動していた為なんでもできる必要があったのでコンソールを起動して操作ログなどを確認する。


結果としてはミサイルが発射される事は無くなったが、妨害された場合には妨害者諸共この施設を自爆させる様に設定されていた。

案の定自爆シークエンスが開始されているのを確認した総士は十蔵にその事を伝えて逃走を開始した。


出口直前になって十蔵が総士に質問する、


「総士さんは日本に戻っても逮捕されません!保証します!それより総士さんは日本に帰ったら何を食べたいですか?」


総士が10年程抱えていた問題を何でもないと言う様に食べ物の話をする十蔵。


「……そうだな…近所のラーメン屋のラーメンを食べたいなぁ……熊本の黒い油の入ってる少し変わったラーメンなんだが、美味かったんだよなぁ…。」


つい思い出して口走ると、「じゃあ一緒に行きましょう!」と走りながら元気に笑う十蔵君に心の中で謝罪しながら走る。


大きな扉の前に一つだけある小さな部屋に入る

逃げる際に必ず通らなければならない部屋だ。


「十蔵君、ちょっとだけ操作が必要だから先にその扉から出ていてくれないか?」


出口が開いていてそこから出ている様に促すと素直に言う通りにする……だから気をつけろと言ったのに。


十蔵君が扉を出た瞬間扉が閉まる。

そこで異常に気がついた彼は総士に声をかける。


「総士さん?何で扉を閉めたんですか!」


叫ぶ十蔵に驚く程清々しい気持ちになった総士が答える。


「…悪いな、だがその扉…1人しか出られないんだよ、さっきコンソールいじってて気づいたんだ。」


扉の外から金属音が聞こえる…恐らく刀で開けようとしているのだろう。


「そのままで良いから聞いてくれ、俺は人を殺しすぎた。時には巻き添えで善人も殺してしまった事だってある。

そんな人間が今更大手を振っておもてを歩けないよ、何より…俺には復讐を果たしてしまって後悔も未練も無い、十蔵君のお陰で最後の1人…1鬼?も殺せたしな。」


心底可笑しそうに笑う総士に十蔵が問い掛ける。


「でも!ラーメンを食べたいと言った貴方の言葉に偽りはなかった筈だ!」


確かに総士は死ぬ前にもう一度だけあの味を味わいたかった言うなればたった一つの後悔だ


「それでも…さ、最後に君の様な人間の命を救える事を誇りにこのまま逝かせてくれ、それに後10分もすれば自爆が始まってしまう。さぁ早く此処を出るんだ。」


チャキッと刀を納める音がすると


「何か伝言する事はありませんか?」


と、聞いてきた。


「……特には……あぁ、俺の幼なじみに一つだけ伝言を頼む、神宮寺咲と言う女だ…あの時ちゃんと守ってやれなくて悪かった……と、俺が言いに行くのが筋なんだろうが頼む。」


「分かりました!命に代えても必ず!……ありがとうございました!!」


礼を言って走って行く音が聞こえた、命に代えたら駄目じゃないか?と考えて笑う。

そう言えば、笑ったのも礼を言われたのも何年ぶりだろう、気分が良いのも相まってさらに笑う。

それから数分経って施設が完全ロックされた事が館内放送された。


ひどく時間がゆっくりと流れている様で目の前の扉が紅くなり、溶けていき、隙間から青白い光が漏れ出す……あぁこれで死ぬのか、と思ったら先程の十蔵君との会話が思い出される。


後悔も未練も無い


…もう一度だけあの味を


…幼なじみの女の子に伝言を



何だ……後悔も未練もあったじゃないか。


そう思った瞬間全てが白に溶けていった。






























ん?俺は死んだんじゃないのか?


身体が動くのが分かる


あの場所にいて生きているとしたら俺も奴の様に化け物になってしまったのだろうか?


恐る恐る目を開けるとそこには金髪の美人がいて一緒に居た金髪の鎧姿の男?が嬉しそうに俺を抱き抱えた。


「おはようレナ!今日も元気にしていたか?」


「あなた?レナが驚いているわ、ほら目を丸くしているもの…ねぇレナ驚いたわよね?」


レナ?誰の事?などと考えるのは辞めた。

明らかに目をこちらに向けているし、俺が大人だとしたらこの人達は巨人になってしまう。

大学時代の友人がよく読んでいた転生系という奴なのだろう胡蝶の夢かもしれないが楽しませてもらうとするか……とりあえず寝よう…Zzz……。


それから色々あったが今は割愛しておこう、ラーメンが伸びてしまう。


「それにしてもお父さん、普段料理作らないのに何でラーメンだけはあんなにこだわるんだろうね?」


夏休みを利用してリストアールに来ていた店長兼領主の克馬の妹である棗がレナにラーメンを出して厨房に戻ってきた克馬に質問すると、


「ん?何でも命の恩人が食べたかった物らしい、としか母さんから聞いてない。何でも母さんに逢う前の話らしい。」


そんな会話を余所に嬉しそうにラーメンをすするレナ


「ん?レナのやつ来ておったか、ほぅ"上手くすする"もんじゃのう、妾もまだ出来んというのに。

いつもあれぐらい大人しければ可愛げがあるものを、隙あらば克馬を誘惑しよるからの。」


と、給餌をする狐っ子に思われていた。


読み返すと料理の表現が少ないエセ料理SSだなぁ……と思うが……気にしない(°▽°)

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