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親子丼

仕事多忙の為、長らく更新できませんでした。


今後も更新が滞るかもしれませんが続けていきますのでどうかよろしくお願いします。

…ざわざわ…ざわ……


神奈川県東部のとある山奥にある村


村人の殆ど全員が武道の有段者であり、武道で名を馳せたものが多い事から武将村と呼ばれる村。


「…ホントに……が戻ってくるのかねぇ?」


「んだども、将紀んトコの……は3年前から連絡つかねぇって言ってねがったか?」


「他でもねぇ、巫女になった棗ちゃんの受けた御神託じゃろ…違いねぇんじゃろかの?……おぉ、噂をすれば……。」


村でも最年長の3人の老人が、神託で示された村はずれに有る物置小屋の前で雑談を交わしていると、村の端にあるバス停の方から全力で走って来る少女が見える。


木の生い茂る山道をまるで運動場のトラックを走るかの如く疾走してる少女が見える。


「皆様お疲れ様です!!将紀棗!参上です!」


3人の雑談する物置小屋に辿り着いた棗は長い黒髪から汗が流れて制服の胸元が少し透けて見えているが、気付かずに戦隊モノの様なポーズを決める


「?!ジジイども見るんじゃないよ!!」


鼻の下を伸ばした2人の爺さんに目潰しをくらわせた老婆は自身の上着を取り敢えず棗に着せた。


「??どうしたの佐伯の婆様?私寒くないですよ?」


何故か肩に掛けられた上着に疑問符を浮かべる棗に佐伯の婆様は溜息を吐きながら、


「………良いから着替えといで、鞄に体操着くらい入ってるんだろう?」


「うん、入ってますけど?…まぁいいや着替えてきますね?」


「行っといで」と、送り出すと目潰しを受けた2人が復活して抗議をしてくる。


「ちっ!クソババア!!せっかく棗ちゃんのサービスショットを!!」


「全くじゃ、老い先短い老人の細やかな楽しみを奪うとは何事か!!」


抗議を受けた老婆は冷たい目で一言「潰すよ…」と言うと顔を青ざめさせながらすごすごと引き下がり、老婆の背後の小屋から体操着に着替えた棗が出てくる。


「どうしたんですか?何かありました?。」


「いや…何でもないんじゃ、気にせんでくれ。」


「うむ、…………そうじゃ!そう言えばそろそろ時間じゃなかったかのう?」


棗に心配された老人達は、ばつが悪そうに気にするなと言い、急に話題を変えた。


「そうですね……そろそろ時間何ですけど誰も来る気配が無……!?」


老人の言葉に周りをキョロキョロと見回しながら気配を探るが、動物の気配のみで人の気配は目の前の3人のもの以外は全くと言っていいほどなかったが、目の前のひらけた空間に光が集まり2メートル程の薄い光の板の様なものが現れた。


棗は突然現れた為に警戒しながら竹刀袋に入れた神刀”神楽舞”を構える。

老人達は驚いているが何処か懐かしいものを見る様な眼差しで見ており警戒はしていなかった。


「何です?!こんなに近付くまで気がつかなかった?くっ、妖の類ですか!」


警戒する棗をよそに老婆は「ほーー久しぶりに見たねぇ……60年ぶりくらいかの?」などと感心しながら眺めている。

すると光の板が歪んで中から何かが出て来たので、棗はいつでも居合いが放てる様に気を張っていると…




「おおっ!!此処は婆ちゃんの家の裏山じゃないか!と言うことは此処は本当に地球か?」


克馬が小学生の頃に作った案山子を発見して感動していると玉藻が服の端を掴み克馬に警戒を促す。


「お前さま…如何やら敵意を感じるでの、感激しておるのは分かるが、もう少し警戒してくれんかのう?」


転移門の魔法が消えていくと反対側で刀を構える少女と老人達の4人が見え、玉藻が鉄扇を構えながらリアを背後に庇うように立つ


克馬の方は老人達3人に見覚えがあったので警戒を完全に解いて近づくと、刀を構えた少女がこちらを威嚇してきた。




中から出てきたのは何処か見慣れた感じがする男性で、その背後から金髪の“少女“が2人出てきた。


男性の方は完全に人の気配なのだが、少女達の方は妖の気配を感じた為に警戒を強め目の前の3人の一挙手一投足に注視していると、ふと光の板が消えていく。


完全に消えると、先頭の扇子を構えた少女が背後の少し背の高い少女を庇うように立ち、最後尾に男性が無警戒で立っていたがこちらを確認すると近付いてくる。


「お待ちください、あなた方は何者ですか!」


妖の気配がする少女達の先頭に居る方には如何やっても叶わない事を自覚しながら、いつでも刀を抜ける様にして居ると男性が止まって話しかけてきた。


「ん〜?……お前…棗か?なんかあんまり変わらないな?俺だよ兄ちゃんだよ。」


気さくに話しかけてきた男性はどう見ても自分の兄より年上であるが兄の面影もある為どうしたらいいか背後の老人達に確認しようと後ろを向くと


「おー、克馬かぁ〜?大きゅうなったのう〜。」


「ふむ、稲荷様の面影があると言うことは稲荷様の眷属かのう?まぁ妖の類ではなさそうじゃな、敵意も……これ棗!刀を引かんか。」


老人達は目の前の人を兄だと認めて警戒を解くように怒られる。



「理不尽です…棗は皆様を護ろうとしただけなのに…………だいたい!兄様も兄様です!何でそんなに大人になっておられるのですか!」


頬を膨らませてぷりぷりと怒りながら急に成長した兄に対して文句を言う棗に


「まぁ、12年も経てば歳も取るだろうよ…と言うか、何でお前はあんまり変わらないんだ?お前、もう27だろ?何で山向こうの学校の体操着を着てるんだ?………いい歳してコスプレか?」


自身の感覚ではあちらの世界で12年すごして、子供も10才になってる事を考えて、当時男の子向けの戦隊ヒーローモノにはまっていた妹が変な趣味に目覚めたのか?と思って聞くと、棗は無言でプルプルと震えて握り拳を作って兄の目の前のまで歩いて行き、


「………ん?どうし!…痛っいなぁ!何で殴るんだよ!」


「あっ……当たり前です!棗はまだ16才ですよ!!通っている高校の体操着を着て居て何か問題でもありますか!!」


幼い頃から憧れていたが朴念仁の兄の言葉に怒りの鉄槌を下した。


そんなやりとりをして、棗は服の裾を掴まれる感覚がしてその相手を確認する為にふりむくと、


「あ…あの…お父さんの兄妹ですか?」


兄と一緒に現れた金髪少女姉(棗判断)が質問してきた。


「えっ?お父さん?……そうだよ、棗は将紀克馬が妹の棗だよ、よろしく?……えーと、お名前は何て言うのかな?」


「ひ、ひゃい……お父さんの娘でシルフェリア・ジル・D・将紀と申します……よろしくお願いします棗姉さま。」


リアの挨拶を聞いた棗はあまりの可愛さに驚愕して無言で脇に手を入れると自身の顔の上まで抱き上げて満面の笑みで「可愛い〜!!」と、言いながらくるくると回り出してしまった。


「で?此方の方はどなたかね?何やら儂等じゃ叶わなそうだしのう…」


「まぁ、御神体様の巫女があれ程気に入っておるし大丈夫じゃろう。」


「そうじゃな、取り敢えず無事に克馬が帰ってきたんじゃ……克馬、取り敢えず祈のとこ行って、ただいまと言っておやり、祈は夕餉を作って待ってるはずだよ。」


老人達に囲まれて口々にまくしたてられたと思ったら、自分の祖母が待っているはずだから家に帰れと言われ、その言葉を皮切りに老人達3人はバラバラの方向に去って行ってしまった。


落ち着いたのかリアが目を回したからやめたのか分からないが棗がリアを背負って近づくと玉藻に話し掛ける。


「ゴメンね〜お姉ちゃん取っちゃって!リアちゃんが起きたら貴女もやってあげるからね!」


玉藻がジト目で棗を見ていることに何かを勘違いしたのか、棗はそう声を掛ける。

すると、玉藻は鼻をフンッと鳴らして憮然とした表情で、


「妾は玉藻じゃ。妾はリアの母親ぞ?あのような子供騙しを妾にしようなら、妾が魔法で其方を空の彼方まで飛ばしてやるぞ、義妹よ?」


と、言い放つと棗は目をグルグルと回しながら


「アレ?リアチャンガ兄様ノムスメデ玉藻チャンガ兄様ノ奥サン?えっ?エッ!…………………。」


混乱していた。


混乱して遂には気絶した棗を克馬が背負って先頭を歩き、その後ろに先程気がついたリア、続いて玉藻が歩いていると大きな武家屋敷が見えてきた。


「久しぶりだなぁ……まさかまた帰って来られるなんて………ん?どうした、棗?…。」



感慨深くなって入口の前に立っていると少し前に気がついた棗に手を引かれて門をくぐる。


「お帰り兄様!」


振り返りそう言った妹は、今日一番の笑顔だった。


ーガラガラー


入口の引き戸を開けると外まで漂っていた美味しそうな匂いが充満しており、懐かしい匂いに惹かれていくと台所に着いた。


「あら、克馬お帰りなさい。ずいぶん遅かったねぇ、もうすぐご飯だから準備手伝いなさい?」


其処には祖母である祈が異世界に行く前と同じ様に料理を作っている姿があった。


「お祝いですこし豪華な食事にしようかと思ってあれこれ悩んだのだけど、結局は克馬の好物だった親子丼にしちゃったわ、貴女達もどうぞ召し上がれ。」


座卓に俺、ばあちゃん、棗、リア、玉藻の順で円になって座ると目の前に置かれている親子丼の蓋を取った。


「おおっ!これっ!これだよ!!俺が食べたかった親子丼だ!!」


ふわふわでかつ半熟、そして出汁の旨味を多量に含んだ柔らかくジューシーな鶏肉に斜め切りされた長ネギの合わさった具がご飯の上に乗っている。

自分史上最高の丼モノ、親子丼

コレを食べたくて、リストアールでコカトリスやフレスベルグ、フェニックスを何度か狩りに行ったことは苦い記憶だ………なにせ食感が、味が、全てが良い意味で鶏肉を上回ってしまいこの親子丼に辿り着けなかったんだから…………。

一瞬回想をしてしまったが、冷静になると周りの家族が暖かい目で見ていることに気がついた。


「さぁ!食べようか!頂きます!!」


俺は恥ずかしさを隠すため大きな声で言いハシを手に取り


出汁の濃厚な匂いを嗅ぎながらふわふわな卵と固すぎず程よい食感の鶏肉を米と一緒に掻き込む。


「ふぅ、妾も満足じゃ…お祖母様ごちそうさまでした。挨拶が遅れて申し訳ございません、妾はこちらとは別の世界、リストアールという大陸にて此方の克馬さんと結婚させて頂きました、玉藻・D・将紀と申します、どうかよろしくお願いいたします。」


食べ終わると玉藻が三つ指ついて祈に向き直り挨拶をすると祈は笑いながら「此方が挨拶の機会を与え無かったようなものだからいいんですよ。」

と俺を退けて玉藻の横に行き「此方こそ不出来な孫ですがどうかよろしく………それで……そちらのお嬢さんはもしかして?」


祈は玉藻に似ているがすこし大きい娘を見ながら玉藻に伺いながら聞いてきた。


「えぇ、リアこっちへ来なさい、お祖母様にご挨拶するのじゃ。」


リアに声を掛けるが返事がない事に疑問に思った玉藻がリアの方へ振り向くとリアは棗に猫可愛がりされており身動きが取れずに居た。

それを確認すると祈は、玉藻と克馬が視認できないほどの速度で移動して棗の頭をはたき、リアを解放した。


「ごめんなさいね?うちの棗は可愛い子が居るとどうも落ち着きがなくて。」


「いいえ私お姉ちゃん欲しかったんで嬉しいです、会ったばかりなのにこんなに良くしてくれて……あっ…私、シルフェリア・ジル・D・将紀と申します……よろしくお願いします、お祖母さま?」


リアは祈の質問に答えた後、挨拶がまだだったことを思い出し挨拶をするが父の祖母ならひいお祖母様と呼べば良いのかそれとも普通にお祖母様と呼べば良いのか分からず疑問形でお祖母さま?と呼んでみると、


「まぁ!可愛い!これが曾孫というものなのね!!」


と、棗以上に猫可愛がりを始めてしまった。


「お祖母様は、ああなったら止まらないからねぇ〜、で?玉藻さんがお兄様の奥さんでよかったんだよね…ですよね?」


と、棗は祈に叩かれた場所をさすりながら玉藻と克馬に質問する。


「そうだよ、玉藻が俺の奥さんでリアは俺と玉藻の娘だ。」


「………ふーん……兄様はロリコンだったのか…だから先輩達……あれだけ誘惑して不発だった理由がそれじゃ……さすがに分からないですよね………。」


それから30分後


「フゥ………あら?ごめんなさいね、余にリアちゃんが可愛くて我を忘れてしまったわ、それで克馬さんと玉藻さんには少しお話があるのだけれど良いかしら?棗さん、リアちゃんを客間で寝かせてあげて下さいな。」


俺と玉藻と棗の3人で、ばあちゃんが飽きるまで雑談をしているとリアを堪能したのかツヤツヤしたばあちゃんが真面目な顔をして確認してきた。

リアは疲れと緊張からか寝てしまったようで、棗にお姫様抱っこされて客間に連れていかれた。


「実は克馬さんが彼方に行き、此方に戻ってくることは3年前のあの日に分かっていたのです。しかしそれを克馬さんに伝える事は”あの方”に禁じられていましたので話せずにいました。」


棗とリアが居なくなった部屋で祖母は俺と玉藻に対して真剣な表情のまま言葉を紡ぐ。


「しかし、帰って来たら連れて来るように言われていたので、疲れているかもしれませんが今から裏の神社に行きましょう。なにせ”あの方”は200年程お待ちだと言っていましたしね。」


そう祖母に促され、祖母、俺、玉藻と3人で連れ立って家を出て、我が家が管理する神社へと向かった。


因みに、バックスォームはリアのアイテムボックス内で寝ている設定です。

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