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シーサーペントの蒲焼き

ストックが無く、10話前後から更新が遅くなりそうですがなるべくエタる?このとのないよう頑張ります。



第3食 シーサーペントの蒲焼き


森の中を少女が走っている。


「お腹空いたなぁ………でも…この辺りに魔族OKな街なんてあったかなぁ……。」


紫色の長い髪をポニーテールに纏めた160cm位の身長をした少女は自分のレオタードの様な服の上からお腹をさすりながら呟いた。


「ふぅ……フェンリル様も無茶振りしてくれるよね〜〜、何せ「どんな魔症も治せる薬が隣の大陸には有るそうだ、探してこい!」……だもんなぁ…。」


空腹から、こんな事になったそもそもの原因である自分の主人の言葉を思い出し怒りを覚えるが、グゥ〜と鳴り続けるお腹の音に怒りが霧散する。


「うぅ、本当にヤバい…このまま人族に襲われたら”加減できなくて殺しちゃうかもしれないしなぁ……”。」


そう口にする少女の下半身を見ると”8本の長くて黒い蜘蛛の様な”足が高速で動いていた。


「人化の魔法は残りの魔力じゃ出来ないし…かと言って盗むのは私の尊厳が許さないし…………ん?明かりが…やった!大きな街なら大使館とか有るだろうし何とかなるかも!!」


大きな街の明かりが見えた少女は最後の力を振り絞って更に速度を上げて走って行った。


街に近づくと検門があり、審査を受けるが偽名を用紙に記入して銀貨を払うとすんなり通される。

不思議に思いながらも空腹に耐え切れず気にしない事にした。

少女が街に入るとその街が異様な空間である事に気がついた。

何故なら人族と魔族が街中で”笑い合っている”のだ。


途中の色街の様な街区で「キレイなねーちゃんだなぁ!金なら有るからいいことしねぇか!!」などと声を掛けてくる人族も居てアラクネである私を怖がっている様子すらない。

私が軽く「商売女じゃ無いんだけど?」と、言うとあっさり引いて、美味しい料理を出す店を聞くと”祈”という食堂を教えてくれて迷惑を掛けたからと迷惑料までくれた。


異様な光景に違和感しか感じなかったが、街の中心部に近づくにつれて良い匂いが漂ってくる。


匂いにつられてふらふらと歩いて行くと大きな白い煉瓦造りの建物が見えてきた。


「何これ?セイブラウの魔国大使館より立派じゃない?……グゥ〜〜〜〜〜……。まぁ!とにかく入ろう!」


驚いて食堂らしき建物を見上げていた少女は自らの腹から響く悲鳴にハッとなり周囲の生温かい目に羞恥を感じて足早に店内に入った。




「いらっしゃいま「姫様!?」せ?」


私は来店してきた女性に挨拶をすると、挨拶の途中でその女性客は驚いた様な声と大好きな母がお化けを見たときの様な顔をして驚いていた。


「いや、姫様のわけが…いや、30年も経てば?…いやいや、ないない……ごめんなさいねお嬢さん、ちょっと知り合いに似ていたものでね。」


女性は不思議そうな顔で思案していたが勘違いだった様で謝ってきた、私が何か粗相をしたわけではないと分かり安心して女性客を席に案内してメニューを渡す。


「此方がメニューになります。ご注文が決まりましたらお呼びください。」


と、声を掛けて立ち去ろうとすると女性客が声を掛けてくる。


「ねぇお嬢さん?私この街初めてで私を見ても誰も怖がらないんだけど、この街って魔族…うぅん、アラクネ族を見ても普通に接してくれるのね?」


と、言ってきたので私は、


「うーん……私はこの街以外あんまりわからないんですよね…でもこの街は人族とか魔族とかあんまり気にしてないと思いますよ。」


「………そうなんだ……。さっきのお詫びに何か1つ頼みごとタダで聞いてあげるわ、私は安夜禍あやかっていう名前で、魔国じゃちょっと名の知れた冒険者でも有るんだ、お嬢さんはなんて名前なの?」


「安夜禍さんですか…何処かで聞いた事があるような……あっ!私はシルフェリアと言います、この食堂の娘で一応冒険者やってます。」


安夜禍と名乗った女性は嬉しそうにそう言ってきたが、頼みごとが思い浮かばなかった私は考えておきますとだけ伝えた。


「それにしてもシルフェリアちゃん?この街の中まで漂う良い匂いは何なの?」


「リアで良いですよ安夜禍さん、この匂いは昨日お父さんが倒したシーサーペントの蒲焼きですね。」


と、返すと安夜禍さんは来店したときの様な顔で立ち上がり、


「シーサーペント!?小型でも軍の中隊が動くレベルのモンスターじゃない!」


と、驚いていた。

魔法で遠くからなら私でも倒せるけどなぁ?と思ったがお母さんから「リアは父上と妾の魔力を受け継いでおるから特別じゃ」と、言われていたことを思い出したので何とかお茶を濁して注文を受ける。



「お父さん!シーサーペントの蒲焼きひとつ注文入ったよ!」


娘の元気な声にはいよ!と返事を返して厨房に声が響くと身体が勝手に動き出す。


もう捌いて串打ちまで終わったシーサーペントの身を炭火で焼きながらタレに漬ける、何度か繰り返すうちに余分な脂が落ちて身はタレを吸って良い色に染まっていく。


昨日、ヴァイスハルト国王でもある親友のケインクロードから依頼を受けて狩ったシーサーペントがあまりにも大きかった為、今日のサービス料理として出していたが残りあと一つがなかなか注文が入らなかった。

リアにシーサーペント完売だから表のボード消して来てくれ、と頼んで仕上げをする。


「…丼に載せてっと…良し出来た!リア3番テーブルの蒲焼きあがったよ!」


と言って娘に渡す。



シーサーペントを料理しようとは…ここの店主はなかなかに豪胆の持ち主だな…まぁ、私はお腹が満たされればいいが…


空腹から鳴り続けるお腹を思考で誤魔化していると私の座るテーブルに料理が運ばれて来た。


「どうぞ!シーサーペントの蒲焼き丼です!」


リアという姫様に似た少女が、丸い器を開けるとそこには、茶色い多分シーサーペントの身を焼いたと思われる物の下に、確か人族の主食の一つで米というものが敷き詰められた食べ物が現れた。

どうぞごゆっくりと言っているリアちゃんを尻目に、私は箸を手に取り茶色い蒲焼き?なる物を口に入れる。


「?!何これ!すごく美味しい!!コレがシーサーペントなの!!ふっくらしててこの甘辛のタレがなんとも言えない味で私すごい好き!」


一心不乱に食べるといつの間にか丸い器は空っぽになってしまった。

もうひとつ食べたかったなぁ…と思っていると店主らしき男性が私に近づいてきて、


「お客さん、良い食べっぷりだね良かったらおかわりするかい?」


と、聞いてきた。


最後の、という会話が聞こえていた私は、


「でも、さっきので最後って言ってたわよね?」


と、残念そうに聞くと店主は、賄い用に少し取っておいたのがあるからそれで良ければお出ししますよ?と、言ってきたので二つ返事でお願いした。


「ふぅ〜〜〜満足だわ……ごちそうさま、美味しかったわ……………これでやっとフェンリル国王様に薬をお渡しに向かえるわ。」


と、一息ついていると聞いていたリアちゃんが顔色を青くさせながら、


「フェンリル?フェンリルお祖父ちゃん何処か悪いんですか?この間行った時は元気そうだったのに…無理してたのかな…」


と、小声で言っていた。


「???お祖父ちゃん?それってどうい…」


ーバンッー


急に入口の扉が開け放たれたと思って顔を向けると、


「リア!!お前さま!!其奴から離れるのじゃ!!其奴は元魔軍十六将の1人で父上がおかしくなり始めた頃に姿を消した奴じゃぞ!!」


紅いオーラを漂わせくないを両手で構える”見慣れた”紅い着物を着た女性が立っていた。


「えっ?姫さま?元って?姿を消したって?何で戦闘態勢なんですか?」


只々混乱する私を見て何かを感じ取ったのか食堂の店主が姫様に近づく、危ない!と、思った私は咄嗟に飛び出そうとするが、リアちゃんが大丈夫ですよ?と、言って退いてくれない。


「ん?…………そうか、お前さまがそう言うなら………」


姫様に近づいた店主は姫様の耳元で何かを言う

と、オーラは霧散し矛を収めた。


この後、私は任務でまたこの街に来ることになるとはその時は思っていなかった。




その後、ギルヴィフスク城謁見の間


「うむ、まずは長旅ご苦労であった。」


「はっ!ありがとうございます。………ところで主人様?私は任務で別大陸に赴いていた、と記憶しているのですが、何故か姫様に刃を向けられました、どう言うことでしょうか?」


誤解を解いてフェンリル様直筆の命令書を見せて納得すると姫様が転移門の魔法で王城迄送ってくれた。

そこで急遽フェンリル様、姫様、私、他の魔軍十六将(当時とは顔ぶれが大分変わっている)で謁見となり、私の立場がどうなっているのか尋ねてみた。


「むぅ…………………………。」


フェンリル様は眼を閉じて眉間にしわを寄せて何かを考え込む様な仕草をして固まってしまった。

異様な沈黙の中、痺れを切らしたのか姫様がフェンリル様の隣から、


「如何したのじゃ父上?安夜禍は父上直筆の命令書を持っておったし教会の魔女の精神感応と妾の感、リアの感にも悪意は感じられんかったぞ?」


と、聞くとフェンリル様は意を決した様に眼を開き一言こう言った。


「安夜禍が居て、儂が暗殺命令出したらほぼ必ず成功してしまうであろう?よって当面戻ってこれない様な任務を適当にでっち上げた、そしてその事を今の今まで忘れておった。…………すまん…な?」


その言葉を聞いた古参の十六将は納得した様にうなづき、新参の十六将は疑問顔に成ったが殺気は無くなった。

そしてフェンリル様は横に立って居た玉藻姫様に思いっきり頭を叩かれていた。



更に数日後


魔軍十六将の席が埋まっており、居場所が無くなった私は姫様の提案で、リアお嬢様の護衛兼将紀家メイドとして働く事になった。

依頼でよく家を空けてしまう姫様と旦那様の代わりに店を営業できる様に料理も一通り覚えた。姫様に「何でそんなに上手いのじゃ!理不尽じゃ!」とか喚かれたが…。



「リアお嬢様、おはようございます。姫様はまだお布団の中ですか?」


旦那様の代わりに朝食の準備をしているとリアお嬢様が住居側の扉から顔を出した。


「安夜禍さんおはようございます。うん、お母さんはまだお布団の中で気持ち良さそうに包まってます。」


お嬢様が苦笑しながらそう言うと、ちょうど出来上がった鍋の火を止めてエプロンを外しながら姫様を起こしに向かう。


「安夜禍さん?お母さん起こしに行くんですか?今日は穏便にお願いしますね?」


と、お嬢様に不安そうな顔でお願いされるが、


「大丈夫ですよリアお嬢様……今日は眷属を20匹ほどにしておきますから。」


と、言って私はスキルの透明化と高速移動、更には壁走り、無音移動術を併用し、姫様が寝ている部屋の天井に到達すると毒のない眷属を布団の中に潜り込ませるのだった。


「ふふっ、姫様?ご自宅とはいえ油断大敵ですよ?」


天井に蜘蛛の足で逆さまに立ってる安夜禍は嬉しそうに微笑んだ。

こっちを書いているともう一つの趣味が進まないのですがこっちはこっちで楽しいので良いんですがね。

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