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蝶の紅涙  作者: 佐伯 梓
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いつもの席に座る彼女を見つけた。

「おはよう」彼女は一瞬キョトンとした顔をしたが、こっちを見て

「おはよー」と返してくる。以前はこの車両の向かいの距離が果てしなく遠かったのに、一歩、二歩で挨拶を交わせるくらいの狭さだと分かる。

「今日は学校?」会話を振る。

「うん、だるい、朝は眠くてさ。いつもこの時間なの?」欠伸をするかのように彼女は口を手で押さえ眠たそうな表情をした。

「そうだね、結構一緒の時間だったりするのかな」

「私もこの時間だよ、今まで気付かなかったね」

「ほんと、すごいね運命みたいだ」

「大袈裟だよ、学校の授業時間が一緒のだけでしょ」彼女は笑いながら言うとレモンティーを一口飲んだ。

「レモンティー好きなの?」

「好き!朝はこれって決めてるの」

君がそのレモンティーを週五で飲んでいるのを僕は知っている。

「へぇー好きなんだね。僕は紅茶はあんまり飲まないかな」

「コーヒー派?あ、じゃあ今度イシュメルに行こうよ。新作のラテが美味しそうなの、ピーチ何とかって」

「それ美味しそう。イシュメルならキャラメルのやつが好き。いっつもキャラメルの頼んじゃうんだよね」

「分かる!キャラメルの美味しいよね!」

本当はイシュメルにあまり行かないし、行っても値が張らないアイスコーヒーくらいしか頼まない。

「結構趣味合うね、あ、もうすぐ着いちゃう。連絡先教えてよ」

「え?いいの?」

「イシュメル行くなら連絡とらないとダメでしょ?電車で会えるとは限らないし」

携帯を取り出し操作しながら、僕に告げた。

彼女は電車で毎日会えることを知らないから、当然といえば当然の話だ。連絡先を聞かせてしまったことを情けないと感じた。好きな人の連絡先を聞くことができなかったことが、情けない。

「これ私のQR読み取って。早く早く」

僕が彼女の連絡先を読み取ると電車は彼女の降りる駅に着いた。

「じゃ、また連絡してきてね、待ってるから」

彼女はパタパタと忙しなく電車から降りて行った。連絡先を交換してくれるってことは少なくとも前のデートは悪くなかったってことだ。携帯を開き、何て送ろうか考えて文を打つ。初めが肝心だ。僕は書いては決してを繰り返し、何て送るかを三駅の間迷い続けた。











イシュメルはスター○ックスみたいな場所だと思ってもらえれば。

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