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恵比寿のあかずきん  作者: 八七味
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前編

あるところにナウでヤングなとても可愛いらしい女の子がいました。

ある時、その女の子のお婆さんが赤色のカーテンで女の子がかぶるずきんを作ってくれました。

最初は「こんなダサイのいらないわ」と思っていましたが、朝の情報番組の特集で「赤のずきんがイマドキ!」といことを聞いてからはお婆さんが作ってくれた赤色のずきんをかぶるようにしました。

その赤色のずきんをかぶっている女の子を見てみんなが「16世紀のヨーロッパでもないのにずきんはないっしょ!だから垢抜けないのよ」と心の中で思いながら「似合うぅ~」と言っていました。そして、垢抜けないと赤いのずきんをかけて「あかずきん」と呼ぶようになりました。

ある日の事、お母さんはあかずきんを呼んで言いました。

「あかずきんや、お婆さんが病気になってしまったのよ。お婆さんはあなたをとっても可愛がってくれたんだから、お見舞いに行ってあげなさい。きっと喜ぶから」

「わかったわ、ママ」

「それじゃあ、このテキーラとウイスキーを1本ずつお婆さんに届けておいで」

あかずきんがお婆さんの所へ1人で行くのは初めての事だったので、お母さんは心配でたまりません。

しかしお母さんはシングルマザーで昼は喫茶店、夜はバーの飲食店を切り盛りしているので忙しくて一緒に行けないのです。

「いいですか、途中で道草をしてはいけませんよ。それから、いつも言っている通り男は皆オオカミだから用心するのですよ。男は欲望に任せて何をしてくるかわからないから、話しかけられても知らん顔しているのですよ。そうでないと私みたいに......」

「大丈夫よ、ママ」

お母さんの地雷を踏んでしまったことに気がついたあかずきんはこの場を切り抜けるために、

「いってきまーす!!」

と、言って、そそくさと出かけて行きました。


お婆さんの家は、ここから4駅先の駅の近くにありました。

その日はスイカを忘れてしまったので券売機で切符を買っていると、そこへ不信な男が現れたのです。

「こんにちは。可愛いお嬢ちゃん」

 男はニヤニヤしながらあかずきんに話しかけました。

 あかずきんはお母さん言われた事を思い出しましたが、人を疑うことを知らない綺麗な心、

いや、周りから嫌味であかずきんと呼ばれていることにすら気が付かないほど鈍感なあかずきんには男が悪い人には見えませんでした。

「こんにちは」

 あかずきんが返事をしてくれたので、男はハァハァしながら尋ねました。

「赤ずきんちゃん、今からどこへ行くの? たった一人で」

「あのね。おばあさんのお家よ。お婆さんがご病気だから、お見舞いに行くの」

「そうかい。それは偉いねえ。・・・おや? その鞄の中には、何が入っているのかな?」

「テキーラとウイスキーよ。お婆さんのご病気が早く良くなる様に、持って来たの」

「なるほど、高濃度のアルコールで治る病気は初耳だけど。それでどこだい? お婆さんのお家は」

「新宿二丁目で1番有名なバーよ」

「二丁目か……」

オオカミは、ちょっと考えました。

(それは婆さんじゃなくて爺さんじゃないのかな。まぁいい、そこで待ち伏せしてこの子を食っちまおう。だが、もう少し時間がいるな。よし!)

「お嬢ちゃん。お婆さんの家に行く前に渋谷を見てごらんよ。109や竹下通りがあるよ。せっかくだから、楽しく遊びながら行ったらどうかな。例えば洋服を買うとか」

あかずきんは、男の言う通りだと思いました。

赤色のずきんを買っていけば、私とふたごコーデもできるしお婆さんはきっと喜んでくれるに違いありません。

「そうね、おじさん、あなたの言う通りだわ。あたし、109に赤色のずきんを買い行くわ」

赤ずきんはさっそく、渋谷駅で下車して赤色のずきんを探し始めました。

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