destiny
街のイルミネーション光輝く世界。通り過ぎていくのははしゃいでいたあの日の僕らだ。
去年の今頃あゆの大好きな夢の世界が凝縮された遊園地で少し早いクリスマスを過ごした。
2006年11月25日僕らにとってはこの日がクリスマスだった。
2005年12月25日あゆの大好きなお母さんが事故死してしまった。
あの時僕はそばにいることしかできずにいた。
さすがにその日に二人で盛り上がるのはどうだろうと思った僕のできることは
クリスマスをずらすことだけだった。
あゆとの出会いは2004年12月11日土曜日だった。
「今度お前にぴったりの子紹介してやるよ!」そう笑いながら言ったのは高校時代の親友河西だ。
僕はどうせ口だけだろうなって思っていたから、「そりゃ楽しみだ」って半ば信じていなかった。
だが三日後にその子を含めて三人で遊ぼうということになった。暫く彼女のいなかった僕は心底河西に感謝した。
当日はとてつもない期待感に胸を躍らせていた。なぜならその子のプリクラはすでに見せてもらっていたからだ。
そこに写っていた彼女は色が白く満面の笑みで、完璧な好みの顔ではなかったが好印象を持っていた。
踊る心をいや、これはプリクラのマジックだと自分に言い聞かせるように唱えていた。
待ち合わせ場所に現れた彼女はプリクラなんかよりも全然良かった。僕はその日すぐに恋に落ちていたのだろう。
まずは軽く自己紹介。久しぶりの感覚に僕は笑いを取らずに普通に
「小山将太です。」と挨拶をしてしまった。
それに対して彼女は
「あゆみです、あゆでもあゆみちゃんでも好きな風に呼んでね」と言われ、焦った僕はすぐさま
「しょうちゃんって呼んでね」と言っていた。
乾杯をした後河西と僕の完全なる内輪のトークになってしまい、しまったっと思ったがあゆは笑ってくれた。
お酒もとても強いなとゆーのが最初の印象だった。
全く飲めない僕の印象だからどこまでが強いのかは正直のところわからないが。きっと強いのだろう。
二時間居酒屋で過ごしたあと、河西は気を使ったのか
「仕事があるから先に帰るわ、楽しんでね」と言ってお金を幾分か置いて店を出て行った。
河西が出て行ったあとすぐに多少の気まずさが残り、僕らは後を追うように店を出た。
そのとき携帯に一通のメールが届いた。河西からだ。
『あゆも小山の写真見て好印象持っていたから今日決めちゃえよ!』
っと書かれていた。正直あゆがどう思っているのかは気になっているところだったからこのときもまた河西のアシストに感謝をした。
相手の気持ちを知っている時こそ強気に出られることはない。店の外でこのあとどうしようかとなった時に、帰るという意見は出さなかった。
ただ会った初日なので一応気を使い、「親とか厳しいの?」と聞いてみた。あゆは即答で「全然!むしろうちは軽いほうかも」と笑ってくれた。
そう答えられればこちらのもんだと思い「じゃぁもう一軒行く?飲んじゃう?」と笑いながら話しかけた。
「飲めないくせによく言うよ!歌いに行こうよ!」とこちらも笑いながら言ってきた。
このときすでに二人には初対面という言葉はなく、昔からの知り合いみたいな感覚だったと思う。
さすがに終電までには帰らなくてはなと思っていたのでぎりぎりの時間に店を出た。
駅への道でふと「電車間に合うかね〜」と話しかけた。
すると「ん〜でもせっかくすごい楽しいしまだ帰りたくないかなぁ。しょうちゃんは帰りたい?」
思いもよらない言葉に一瞬戸惑ったが「帰りたくない」と答えた。
街はすでにイルミネーションでクリスマス一色。キラキラと俺らを照らしているかのように2人だけの世界みたいだと感じていた。
手を繋ごうと思えば出来ただろうが、このとき僕は柄にもなく緊張をしていた。
お店を出るときにトイレに行きたかったのだが駅でしようと考えていたのでコンビニへ行くことにした。
用をたしたあと暖かい缶コーヒーを2本買い変な胸騒ぎを感じながら待っているはずのあゆのもとへ急いだ。
もちろん1人にしてしまっていたので自然と足早になっていた。こんなときの嫌な予感は割と当たるものでそこにあゆはいなかった。
そこにあゆがいないのは目の前の信号待ちの時から気づいていたが近くにいるのだろうと自分に言い聞かせていた。
あたりを見回したが彼女はいない・・・「なんなんだよ」自然と出た言葉だった。時計はすでに0時半を回っていた。もちろん帰る手段がない。
となればこの辺をうろうろしているのか、それとも変な奴に絡まれて連れて行かれてしまったのか。とりあえずもう少しあゆを探してみよう。
そう思いもう一度コンビニに戻り同じ道を往復してみたけど彼女はいない。
その時になんで携帯聞かなかったんだろうって今更の後悔をしていた。
もう一度あゆが待っているはずの場所へ向かったがやはりいない。
すると少し離れていたところで僕を呼ぶ声が響いたがその場所はどこなのか僕にはわからなかった。
「ここだよー」と今度はどの方角なのかがわかり180度反転して声の主を見つけた。
少し離れた歩道橋の上の真ん中で大きく手を振っている。かなり大きい声で名前を呼ばれ、電車のない時間といえど土曜の深夜。場所は渋谷。
周りの視線を気にしながらもそちらに手を振り歩いて行く。近くにいた人達にはあれがしょうちゃんだと思われていたに違いない。
歩道橋を駆け上がり、怒る気持ちを押し殺して「もー心配しちゃったじゃんかー」と微笑んだ。
「携帯聞かないからいけないんだよ」会ってから2回目の予想外の返事だった。
僕が怒られるとは思いもしなかったからだ。彼女はそんなきょとんとした僕の眼を逸らさずに続けた。
「私ね河西君から写真を見せて貰ったときあって思ったの。しょうちゃんはやっぱり覚えてない様子だったからずっと言わなかったんだけど。
実は今日話すの初めてじゃないんだよ?私たちが高二のときに話したのが最初。その時もしょうちゃんは今日と同じように優しく話してくれて、
その優しさに5年ぶりに包まれたんだ」そう言うとあゆは俯いた。
僕はどこで会ったのかを必死に思い出そうとしたが全く思い出せなかった。
僕の通っていた高校は東京にある私立の男子校だ。中高一貫で他に商業と女子校の姉妹校もあった。
高校から入ってくる外部のクラスは3クラス中学から上がってきた内部は5クラスあった。
1年の時は外部内部を分けていたが、2年からは混ざり合った。河西と会ったのは2年の時。クラスに外部出身は40人中の7人その7人の中に僕らは含まれていた。
社交性のある河西はすぐに内部生と仲良くなっていたが、僕は3か月かかった。
男子校というだけあって毎日のようにクラスの中では「昨日のコンパどうだった?」という会話で盛り上がり「今日もあるけど行く?」などと笑い合っていた。
僕は積極的にコンパには参加していたのでもしかしたらあゆとはそこで出会ったのかも。それならば覚えているはずがない。
コンパをし過ぎて正直1週間前の女の子たちの名前ですら当時は覚えていなかったからだ。だが河西と行ったコンパなら覚えている。
たくさんこなしたが河西と行ったのは1回しかないからだ。河西と一緒というのが新鮮だったからか女の子たちの顔も出てくる。
しかしあゆの顔はでてこない。となるとコンパで知り合った子ではないのだ。
そうなると文化祭か。男子校は学校に女の子を呼ぶためにチケットを渋谷や池袋などで配って歩くくらい必至だった。
どうどうと女の子と校舎の中で喋れるのはこの日しかないからであろう。
しかしもちろんそんな前の文化祭のことなど殆ど覚えていなかった。たくさんの女の子と喋っていたというのが本音だが・・・
僕のクラスは占いという名目のコンパ室を作っていた。結局女の子に話しかけて教室に連れ込んで、ぺちゃくちゃ喋る。
どっからどう見てもコンパだった。
ふと考えさせられた高校時代に情けなさを覚えた。結局情けなさを感じただけであゆとの接点が思い出せなかった。
「ごめん、、、思い出せないや」「やっぱなぁ」あゆは笑ってくれた。
「まぁ覚えていたほうがすごいけどね。河西君が付き合っていたひとみの友達だよ。文化祭のときに廊下でしょうちゃんが河西君と歩いていてひとみが呼びとめたんだけどね。その時に隣にいたのが私」
すべてが頭の中で結び付いた感じがした。ひとみとは河西が高校の3年間の青春を捧げた相手だ。
何度か3人で遊んだこともありひとみとは僕も仲が良かった。
そんなひとみと校舎の中で話すということは一度しかなかったしそのときの内容にもインパクトがあるので覚えていた。
当時僕が付き合っていた子の携帯を勝手に見られて喧嘩になるだの、結局は女がらみのネタではあったが、
確かにその時に携帯を見るのはありえないと反対していてくれた女の子がいた。
そのあとも4人で校舎を出て近くのファミレスでうだうだしたのを鮮明に思い出した。
必死に携帯を見るような子とは別れるべきだと説得してきた。その子が今目の前にいる子と結びついた。
「しょうちゃんあの時は、僕しょうちゃん、将太でもしょうちゃんでも好きなように呼んでね!ってかなり親しみやすかったなぁ。」
そこでもはっとさせられた。今日のあゆの最初の挨拶がまるっきりこれだったからだ。
思わず僕は吹き出した。「だからあゆあんな風に挨拶してきたんだぁ。あれのお陰ですごく緊張が解けたもん」
「昔はしょうちゃんがあんな感じだったのにね〜人って変わるんだね」とすごく嬉しそうに笑っていた。
しかしすぐに真剣な顔になり、「私あの頃しょうちゃんのこと気になっちゃっててさぁお陰で彼氏いない歴4年間だよ。
まぁこれは大袈裟に言ってだけどさ。今日しょうちゃんと会えてね初めて二人でお話したけど、私しょうちゃんのこと好きになりそう」いきなりの告白に僕は戸惑わなかった。答えは出ていたからだ。
「そっかぁなんだか俺のせいで彼氏できなくてごめんよ」と笑いを誘い
「俺なんか今日1日であゆのこと好きになりそうだよ。これからお互いがもっともっと好きになるようにいっぱい遊ぼうよ」
寒さも手伝ってかあゆの涙線はかなり緩んでいたらしく、頬をつたっているのがわかった。僕は何も考えずに抱きしめた。
次の日も2人は初めてのドライブを楽しんだお台場にイルミネーションを見に行ったり、寒空の中でもベンチに座り手を暖めあうようにぎゅっと握っていた。
そして初めてキスをした。まさに2人は幸せの絶頂の世界を生きていた。
その日までは・・・
2007年6月2日僕は今日もいつもの待ち合わせ場所に着いた。いつもは僕よりも少し早く着いているあゆの姿がない。
あゆは携帯小説にはまっていたため待ち合わせ場所に早めに着いては携帯を凝視していた。
たまにあゆは涙目で迎えてくれたり、少し怒りながら待っていたり、僕にとってはいい迷惑でもあった。
しかし今日はその姿はない。だからこそ僕は待ち合わせ時間を10分過ぎただけでも携帯電話を手にした。
呼び出してはいるがすぐに留守番電話に切り替わる。最初は不安にかられたが、さすがに2時間後には怒りに変わっていた。
その怒りの中でも日にちを間違えているんだろう、だからきっとバイトかなと思っていた。
たまにあゆは手帳に書き間違えて多々このようなミスをしては泣いて謝ってきたことがあるからだ。
夜になっても連絡はなく電話しても出ない。家の番号を知っていれば電話したのだろうがもちろんこの時代に家の番号なんて滅多に聞かない。
次の日もまた次の日も連絡は取れない、河西にも頼んで電話をしてもらったが河西の電話にも出ないらしい。
とうとうあゆの携帯は電池が切れたのだろう。
電源を入れていない時のアナウンスが耳から耳へと通り過ぎて行った。何かあゆの身に起こったのか、それともただ僕がこういった形でふられたのか。
暫くは頭の中がパニックになった。彼女の地元を歩き回ったがお母さんが亡くなって引っ越してからの家を知らない僕は殆ど駅周辺をうろうろしていただけだった。
少しでも似た子がいるとどきっとして、悲しさが込み上げてきた。
結局学校帰りに殆ど毎日通い続けたがあゆには会えず、駅のすぐ近くの交差点でお花を添えている女性が印象に残っただけだった。
7月に入り僕は大学のテスト期間を迎えていた。もちろん勉強には身が入らなかったが、あゆのことを忘れようとしているかのように勉強することにした。
いよいよ明日からテストという7月16日携帯に知らない家の電話から着信があった。最初は不審に思い無視をして勉強していた。
しかしすぐ同じ番号からかかってきた。なんだよと思い通話ボタンを押して無愛想に電話に出た。
「どなたですか?」「高瀬あゆみの父ですが、小山さんですか?」予想外の相手に僕はどきっとした「はい、そうですが。」
「あゆみと付き合ってくれてありがとうね」
「はい?僕の中では今でも付き合っていると思っていますけど」少し皮肉って答えた。
過去形にされたのが頭にきたからだ。
「あゆみさんと話がしたいので変わってもらえますか?」
「それはできないんだ。連絡が遅くなってごめんね。私も受け入れること出来なくてね。あゆみは死んでしまったんだ」
あまりに淡々と言われたのと言葉に感情がないせいか冷静に「何故ですか?」と尋ねた。原因は交通事故らしい。
あゆが自転車で渡っているところバイクにひかれたらしい。訳が分からず頭の中はまったく整理ができないでいた。
僕のせいだとも思った。あゆは僕との約束を守るために自転車に乗り駅に向かっていた。
しかしあゆのお父さんは僕を責めずに今日来られないかと尋ねてきた。気が動転しながらも住所をメモしすぐに向かった。
久しぶりに会うあゆのお父さんは思っていた以上にやつれていた。
第一声に「あゆみと付き合ってくれてありがとうね。あゆみは嬉しそうに将太君の話をしていたよ」と言ってくれた。それだけで救われた気分だった。
短い家の廊下を通り抜け突き当たりの部屋へ案内された。あゆの部屋らしい。1カ月ぶりのあゆとの再開はあまりにも辛かった。
満面の笑みで迎え入れてくれたあゆは小さな小さな箱の中で眠っていた。
あゆのお父さんは気を利かせてくれたのか部屋には僕とあゆだけだった。暫く満面の笑みのあゆを見つめ手を合わせた。
この間まで一緒に笑って手を繋いで温もりを体いっぱいで感じていたのに。今感じるのは頬をつたう冷たさだけ。
体が覚えているはずのあゆの全てを感じることはできなかった。
「ごめんね」やっとでた声だった。
扉を開けるとあゆのお父さんが待っていた。僕を部屋に戻し机の引き出しから本みたいなものを取り出した。
「私も知らなかったんだけどあゆみは日記を書いていたみたいでね。将太君と出会う前の日から書き始めたみたいだ。」
そう言ってその日記を2冊手渡してきた。僕は一呼吸おいて1ページ目をめくった。
2004.12.10 Fry
明日はいよいよしょうた君と会う日。河西君に感謝感謝(笑)
この日記が今日で終わりませんように!
何着ていこーかなぁ
明日この4年分の思いを思いきりぶつけるぞぉぉぉぉ!!
まぁ会ってみたらこの気持ちが変わるかもだけどね・・・(涙)
そしたら青春を返せってどなってやろう。
2004.12.11 Sat
きゃぁぁぁ!!やばい今わたし幸せすぎるかも
しょうちゃんは・・・って1日でしょうちゃんと呼べていることにまた幸せだったり(笑)
全然変わってなかった!いや少し可愛くなってた
会ってすぐ青春にまたもや河西君に感謝感謝
書きたいことはいっぱいあるけどありすぎてこの辺で終わりにしておこう。
だってまた5時間後にはしょうちゃんと。。ふふふ
2004.12.12 Sun
またまたきゃぁぁぁぁぁ!!もう超幸せって感じです
昨日付き合うことになって次の日に初デートとか最高
手もつないじゃったしちゅーもしたし(うきゃ)
もう1日にやにやしっぱなしだったな私
このままじゃ嫌われちゃうから引き締めていこう
2004.12.13 Man
う〜む授業に身が入らん。しょうちゃんのことしか考えらんない。
これはダメだぞあゆみ。
2004.12.14 Tue
今日はしょうちゃんからちょぉーうれしいメールが届いたのだ
やばい!俺あゆのことどんどん好きになってくわぁ。授業に身が入らん・・・
なんだぁしょうちゃんも一緒なのね。それだけで嬉しいーーーー
僕はここまでしか読まなかった。いや読めなかった。
こんなにも僕のことを想っていてくれていたのかと再び涙が頬をつたってきた。「これは将太君がもっていてくれるかい?」何も言わずに頷いた。
「お墓には10月にに入れようと考えているからいつでも会いに来てあげてくれ」返事のできない僕にお父さんはすごく優しい声で話しかけてくれた。
帰りの電車の中でも今日の出来事が夢なのではないかと信じたくなかった。
その期間のテストがボロボロだったのは言うまでもない・・・
僕は毎日でもあゆに会いに行きたかったが流石に迷惑だろうと思い2週間に1度だけ行くことにしていた。
いよいよ今日は納骨の日。お父さんは俺も誘ってくれた。
帰り際あゆのお父さんから夕飯の誘いがあった。きっと何か話もあるのだろうと思い僕は素直に受け入れた。
行った場所はあゆの地元にある少し静かな感じのレストラン。一応遠慮してあまり高くないものを注文しペロッと食べ終わった。
するとお父さんが話し始めた。
「将太君は今でもあゆみのことが好きかい?」
「そうですねやはりすぐには忘れられません」
「そうか」
そういうと一口ワインを口に含み一呼吸置いたあと
「将太君はまだ学生で年齢も若い。あゆみのことを考えてくれるのはとても嬉しいがあゆみは喜ばないんじゃないかな」言っていることをなんとなく理解していたが
「何故ですか?」と言った。
「将太君はこれからまだまだ沢山の出会いと別れを繰り返すことができる。簡単に言うとあゆみのことを忘れてくれとは言えないし、忘れてほしいとも思うことはできない。
あゆみが好きになった人なのだからね。でも進んでほしいんだ。君は自分のせいだと塞ぎ込んでいるのも知っている。だがそれは違うよ。将太君は全く悪くない。
悪い人なんていないんだ。もちろんバイクに乗っていたやつは許すことが出来ないけど…これがあの子の運命であり寿命だったのだよ」
涙を堪える様にまた一口ワインを口に含みぎゅっと目をつむっていた。
「運命ってあるんだろうか?」
僕は戸惑った。ついさっきは運命でもあるって言ったばかりなのに。
「あゆみもお母さんも同じように逝ってしまった。こんな運命があっていいのだろうか・・・愛されるものを皆奪われ俺だけが残ってしまったよ。
これからは誰の為に働けばいいんだろうな」
そう言うと一気にワインを飲みほした。
「少し愚痴を言ってしまったね。すまないね。」
僕は首を横に振ることしかできなかった。
そのとき、僕なんかよりずっと苦しんでいるんだと感じた。
「徐々にお父さんが言っていることは理解していこうと思います。僕のことまで気にかけてくれてありがとうございます」
そう言いながら深く頭を下げた。
続けて「これからも何度か一緒に御飯を食べましょうよ!」
同情の気持ちでもなく目の前に座っている人を本当のお父さんに思えてきたからだった。
「そうだね、是非付き合ってもらおうかな」
久しぶりに笑いかけてくれた。
また今年もこの季節が廻ってきた。君がこの景色からも去って行き
この景色とともに僕だけが残されていた。涙あふれ瞳を閉じてみるとそこには君がいる。
君の全てを瞼の裏側で表現した、「あゆみ」ふと君の名前を呟いてみた。
同時に冷たい真冬の風が冷え切った体を通り過ぎる。
少し暖かく感じたのは気のせいなのか、それとも君が通り過ぎたのか
まだ消えそうもない痛みを握りしめポケットにしまいこんだ。
もう一度と聖なる夜にお願いしてもしょうがないのはわかっている
こんな寒い日には隣の温もりが欲しい
今僕の左側は幸せそうなカップルたちが見える
君がいた頃には見えなかった世界
イルミネーションに背を向けて歩きだそう
この冬が終わる頃には少しは進んでいるだろう
君のいない新しい世界へと
さようなら そしてありがとう
君と出会って僕は人を愛する苦しみ、喜びを知ることができたみたいだ。




