第五話
読んできただきありがとうございます。
やっと第5話できました。
何度も書いている気がしますが、本当に描写がうまくなりません……
「さて……どうにかこいつに勝てたわけだけど……」
木に体を預け暫く休息を取った後、ある程度体から痛みが引いたのを確認したタイチは自分が倒したサーチラビットの元へと歩き寄る。
「っと……まずは念のために……《隠密》」
サーチラビットがそうであったようにこの森ではいつ襲われるかわからない。 タイチはその危険を少しでも下げるために周りを見渡しながら〔隠密〕を発動させる。
「じゃあ、早速頂くとしますか」
タイチは合掌をした後、サーチラビットに触れると小声でドレインと唱える。
「……っ!?」
すると、サーチラビットに触れていた手から腕を通して何か大きな玉のようなものが迫り上がってくる感覚が伝わる。 その不気味な感覚にタイチは思わず手を引き戻す。
「っ!? 《ドレイン》が発動したことに関係しているのは確かなんだろうけど……」
先程自分の身に起こった不可思議な感覚に、ドレインした手に異常はないかとタイチは二・三度握る動作を繰り返す。 だが、そこにはいつも通りの見慣れた自分の掌しかない。
「スキルはドレイン出来てるよな……?」
目で確認できないと安心できない質の太一は不安になりながらもステータスを確認する。
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古嶌 太一 (コジマ タイチ) 【lv1】
人間:男 年齢:19
【筋力】:2
【耐久】:3
【魔力】:1
【魔防】:1
【敏捷】:2
・通常スキル
〔識別眼〕 〔言語理解〕 〔瞬動〕 〔探知〕 〔跳躍〕
・固有スキル
〔創造〕 〔ドレイン〕 〔隠密〕 〔隠蔽〕
〔アイテムボックス(無限)〕 〔奪取不可属性付与〕
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確認したステータスにはしっかりとサーチラビットから奪ったスキルが存在していた。
「……ふぅ。スキルはドレイン出来てたな。 ってことはあの変な感覚をドレインする度に味わうのかぁ……」
余り心地よいとは言えないドレイン時の感覚を思い出し、タイチは苦い顔をする。 だが、すぐさま頭を振り、次にやるべき事へと意識を向ける。
「次はスキルの詳細を……っと」
タイチは《識別眼》を発動させると、ステータスのスキルを注視してみる。
すると、
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〔瞬動〕・・・物体を高速運動させることが可能になる
運動速度は調節が可能。
〔探知〕・・・自分の周囲を自動索敵する。
〔跳躍〕・・・自分の跳躍力を大幅に強化する。
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サーチラビットからドレインしたスキルの詳細がステータスの下部に表示された。
「詳細は出たことは出たけど……スキルも十分にチートの領域じゃないか……」
取り敢えずドレインで手に入れたスキルの詳細が確認できたタイチは続けて能力値のドレインに移る。
「さっきと同じようにして……《ドレイン》」
タイチは再びサーチラビットの体に触れると再び《ドレイン》と唱える。 だが、
「ん? 何も起こらないぞ……?」
スキルをドレインした時と同じように何か体に起こるのかと身構えていたタイチではあったが、特別体に異常が起こる事は無く、タイチは首を傾げる。
「取りあえずドレイン出来たのか?」
今一つ効果を実感できず、実際に見たほうが方が早いと思ったタイチはステータスを確認する。
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古嶌 太一 (コジマ タイチ) 【lv1】
人間:男 年齢:19
【筋力】:2
【耐久】:3
【魔力】:1
【魔防】:1
【敏捷】:2
・通常スキル
〔識別眼〕 〔言語理解〕 〔瞬動〕 〔探知〕 〔跳躍〕
・固有スキル
〔創造〕 〔ドレイン〕 〔隠密〕 〔隠蔽〕
〔アイテムボックス(無限)〕 〔奪取不可属性付与〕
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だが、表示された自分のステータスの能力値には一切の変化がなかった。
「……ドレイン出来てない?」
何か間違ったのかとタイチは顎に手を当て考える。 もしかすればスキルドレインの時は何も考えずに行ったが、能力値の場合は〔創造〕と同じくイメージしないと拙かったのだろうか。
そう考えたタイチは今度は手の触れた場所から力を吸い取るイメージをしながら〔ドレイン〕を行ってみる。 すると腕を通して何かがタイチの体に行き渡る感覚が伝わってきた。
「良かった。 どうやらドレイン出来たみたいだなっ?!」
体の感覚からしてドレインが成功したことに安堵の溜め息を吐くタイチ。だが、次の瞬間タイチの全身に激痛が走る。
「……何だ、よっ!、これ!」
突如として襲った激痛にタイチは咄嗟に薬草を飲み込み、急いで休息を取っていた木に凭れかかり、痛みが引くのじっと待つ。 だが、反対に時間が過ぎていくにつれ、体を襲う痛みは強さを増していく。
「どう!……なっ!……てんだ!」
例えるなら何かが体の中を這いずり回る感覚だろうか。 肉が、骨が悲鳴を上げる。全身から今まで受けたことのない痛みを味わったタイチは堪らず地面に跪き頭を垂れる。
「……!? ごふっ! がふっ! げふっ!」
急に喉奥から鉄の匂いがした液体が迫りあがり、タイチは口を押さえる。 だが、その程度では迫り上がってくる勢いを止めることは出来ず、咳き込むと同時に指の隙間から血が滴っていく。 タイチの目の前には口を押さえているにも関わらず、瞬く間に血溜りが出来上がっていた。
「っっっっっっ!?」
あまりの激痛に指先から血が出るのにも関わらず、もう片方の手で強く地面を掴み痛みに耐えるタイチ。 だが、其れでも尚時間が過ぎる毎に増していく痛みにタイチは倒れ込み、遂には声を上げることすら出来なくなる。
「……ッ……………………ッ!」
あまりの激痛に額に汗が浮かび、呼吸が浅くなっていく。タイチは逃げようのない痛みにのたうち回りながらも歯を食いしばり、薄れていく意識を繋ぎ止め続ける。
心の中で魔物が来ないことを必死に祈りながら。
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「はぁ、はぁ……だいぶ、落ち着いて、きたな……」
1時間ほどは経っただろうか。 ようやく薬草が効果を発揮し体を襲っていた痛みが引き始め、体を動かせるようになる頃にはタイチは地面に座り込み、疲労困憊と言った様子で荒い呼吸を繰り返していた。
「う……。 服が悲惨なことに……」
汗と泥と血。 それらを多分に含み肌にべったりと張り付いた服を タイチ苦い顔で摘みあげる。
「どうやって落とせばいいんだよ……水もまだ見つけてないのに……」
つまみあげた服の汚れ具合をみて、タイチは若干的はずれな感想を漏らす。
「今度からは安全で極力綺麗な場所でやるようにしないとな……。 っと、そういえば結局ステータスはどうなったんだ? ……《ステータス》」
依然として荒いままの息を少しずつ整えながら、タイチは自分のステータスを再度確認する。
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古嶌 太一 (コジマ タイチ) 【lv24】
人間:男 年齢:19
【筋力】:1052
【耐久】:873
【魔力】:20
【魔防】:17
【敏捷】:1362
・通常スキル
〔識別眼〕 〔言語理解〕 〔瞬動〕 〔探知〕 〔跳躍〕
・固有スキル
〔創造〕 〔ドレイン〕 〔隠密〕 〔隠蔽〕
〔アイテムボックス(無限)〕 〔奪取不可属性付与〕
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「ステータスが……凄いことになってる……」
自身のレベルアップによる上昇は些細なものだが、サーチラビットの能力値全てが加算された自分のステータスにタイチは頭を抱える。
「そりゃ、半分くらいは増えるとは思ってたけどさぁ……」
まさか全て加算されるとは思っておらず、思ったよりも凄まじかったドレインの効果にタイチは上を向き何処か疲れたような声で呟く。
「と、取りあえず、ここから移動しておくとするか……ん?」
ステータスについてはまた後で向き合おう。 そう考えたタイチは他の魔物に襲われる前にここから移動する為に腰を上げる。 そしてタイチは立った瞬間に体のある異変に気付いた。
「……なんだ?」
ここに来たばかりのときよりも体が軽く感じる。 言い表すならば今までは水の中で歩いていて、今はその水の重みが無くなったといった所か。タイチはその事を不審に思いながらも取り敢えず体を軽く動かし、絶句する。
「うそだろ。おい……」
握力や脚力といった分かる範囲ではあるが、自分の身体能力がステータスの変化と共に遥かに向上していた。どうやらドレイン時に身体を襲ったあの激痛がステータス変化に対応するための即席の肉体改造だったらしい。
「まるでどこぞの総統になった気分だよ……いてっ!」
自分の身体に起こった摩訶不思議な出来事にタイチは思わずそんな感想を漏らす。 薬草により痛みが引き始めたとはいえ、まだ身体にはまだ相当の痛みが残っているらしく、時折身体を動かすと走る鋭い痛みにタイチは顔を顰める。
「このままドレインし続けていったらどうなるんだろうな……って」
そんなことを考えながらタイチはふと、あることに気付く。
この世界のステータスの平均値ってどの位なんだ? と
「下手したらもう化物入りしてたりしてしてな……」
まぁ、そりゃないだろ。と根拠もなく高を括るタイチ。 無論、このままで行けば化物と呼ばれる領域まで到達したりはしない。このままで行けばだが。
「それは置いといてさっさとここから離れるか」
地面に視線を向けるとそこにはドレイン時にタイチが吐いた血が赤々と広がっている。早くここから移動しなければこの血の匂いに誘われて別の魔物が来かねない。
そう思ったタイチはサーチラビットの死体をアイテムボックスに素早く収納すると急いでその場所を離れることにした。
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「ここら辺までくれば大丈夫か? というか、いろいろとすごいな。 この身体……」
汚れていた服は道中に〔創造〕で作り直し、念のため数十分かけあの場所から距離をとったタイチは終始走っていたのにも関わらず、あまり息苦しく感じていない自分の身体に愕然としていた。
「さて、あそこから離れるのに気を取られてたけど、今度はドレインしたスキルを試してみるか」
タイチは倒したサーチラビットから手に入れたスキルである、〔瞬動〕・〔探知〕・〔跳躍〕を発動させてみることにする。
「《瞬動》……!」
タイチが小声で唱えると体全体に凄まじい負荷がかかり、一瞬の内に視界内の景色が別のものに変わる。 振り返ってみると先程までタイチのいた場所から2mほど前の位置に移動しており僅かながら土煙が上がっている。
「!?……初めて効果が目ではっきりわかるスキルを使ったな……」
今までのスキルが目に見えて分からなかったこともあり、初めてスキルの効果を目の当たりにしたタイチ目を見開いて驚く。このスキルは一瞬の隙をついて逃げたり、一気に懐に入ったりなど様々な使いようがありそうだな。と土煙が晴れる様子を見ながらタイチは《瞬動》の使い道を幾つか思い浮かべる。
「んじゃ、次は《探知》だけど……これはさっきから発動してるのがわかるな」
スキルの説明にあった通り、これはドレインした瞬間から発動しているらしい。 簡単に説明すると自分を中心に魔力の波が半球型に広がり、その波にぶつかった物体を捉えるといった所か。
「にしても捉えてる数が多い……何とか絞れないか?」
《探知》に掛かった対象はなんであれ自動的に分かるようになっているらしく、パンクするのではないかと思えるほどの情報がタイチの頭に叩き込まる。 その量に辟易したタイチは対象を害意があるものに出来るかどうか試す。
「あっさり絞れたな……」
結果としてイメージひとつで対象の変更ができ、あれほど次々に来ていた情報がぱったりと止む。 予想以上に試みが上手くいった事にタイチは何故か釈然としない気持ちを心に抱きながらもサーチラビットからドレインした最後のスキルを使用する。
「《跳躍》……うおっ!?」
タイチは大きく跳ぶイメージをしながら地面を蹴って軽く前に跳んでみる。すると地面を蹴る感覚と共に浮遊感がタイチの身体を包む。 すぐ真隣には太い木の枝が有り、下を見るとタイチの体は地面から6m程の位置を浮いていた。
「……っと。 どれもこれもかなり使えるスキルだな……」
足を捻りかけながらもどうにか地面に着地したタイチは一通り試し終わった各スキルの使い勝手の良さに感嘆の言葉を漏らす。 と同時にタイチの腹からぐぅと間抜けな音が響く。
「……そういえばここに来てから薬草しか口にしてなかったな」
音を響かせた自分の腹を眺め、今更になってようやく空腹感に気づくタイチ。 何か食べる物はないかと周囲を見渡してみるが、特に食べられそうなものは見つからない。 倒したサーチラビットの肉を食べるという選択肢もあるものの、流石に火で焼かずに生で食べるのは抵抗があるため、それは最後の手段にしたいというのがタイチの率直な気持ちであった。
「よし。 次にやることはスキルの練習も兼ねて食料調達にでも行くとしますか」
無いのなら採ればいい。 そう考えたタイチは〔跳躍〕の練習がてら、食糧探しに出かけることを決心する。こっちには隠密があるし、最悪効かなかった敵がいたらスキルを使って逃げればだろ。と浅はかな考えを心に抱きながらではあったが。
「さて……っと!」
タイチはそう言いながら上を向くとその場で高々と跳躍し、そのまま立っても問題なさそうな太さの枝にどうにか着地する。そしてその枝から別の木の枝へと次々枝に乗り移りながらタイチは森の奥へ移動を始めていった。
いろいろと忙しすぎるため、次回の更新はまだ未定です。 申し訳ございません。