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素材を剥ぎ取ろう



 冒険者ギルドから受け取った資料によると、今回の討伐対象であるレッドスライム・ブルースライム・バットは、全てラグール山脈(初級)という地域に生息しているようであった。

 地図の通りに進んで行くとそこは何処か見覚えのある道であった。


(どう考えてもこの先は、オークの屋敷があったところだよな)


 悠斗は念のため《オークの槍》を鞄から取り出すと再び歩みを始めて行く。



 ~~~~~~~~~~~~



 バット 脅威LV2


「……っと。さっそく発見だ」

 

 脅威LVは2。

 レッドスライムよりも1ランク上の魔物であるらしい。


 体長はおよそ六十センチくらいだろうか。

 全体的には丸っこい可愛らしいシルエットをしているが、口の中から覗く大きな牙は、なかなかの殺傷能力を持っていそうである。


「キッ! キッ!」


 バットは悠斗の姿を発見するなり甲高い声を浴びて突進。

 当然と言えば当然の話だが、スライムと比較すると圧倒的にその動きは速い。

 並みの反射神経の人間では、今の攻撃は避けられなかっただろう。


(……よし。まずは1匹目)


 けれども。

 悠斗の手にした槍の先端には、キッチリと串刺しにされたバットの姿があった。


 相手から奪った武器を使用することを想定した近衛流體術を修めた悠斗は、槍術に関しても1流の腕前を誇っている。

 この程度の魔物であれば、鼻歌を唄いながらでも仕留められる実力が悠斗にはあった。


(えーっと。なになに)


 ギルドで受け取ったガイドブックによるとバットの討伐の証はこの魔物の牙であるらしい。


 使い捨てのナイフ@レア度☆

(冒険者ギルドが無料で配布しているナイフ。耐久性が低いため戦闘用の武器には適さない)


 このナイフは冒険者ギルドの受付で受け取った《初心者支援セット》に入っていたものである。

 初心者支援セットの中にはナイフの他にも水筒や手袋、街の周辺地図などの旅の必需品が詰められていた。


 悠斗は《使い捨てのナイフ》を使ってバットの死骸から牙を剥ぎ取ることにした。



(……しかし、この作業は地味に時間がかかりそうだな)



 バットの口腔を開き、使い捨てのナイフによって歯茎の肉を地道に削り落としていく。

 これがゲームの世界であれば、魔物が煙のように消失した後、アイテムだけがその場に残る便利仕様になっているところだが現実は世知辛い。


「よし。1本目」



 バットの牙@レア度☆

(特定の薬を調合するための素材。討伐クエストでは2本で1体分とカウントされるため注意が必要)



 作業に区切りが付き悠斗が一息吐こうとしたそのときであった。

 突如して轟音。


「……ッ!?」


 振り返って現状を確認。

 先程の衝撃の正体がバットの群れが放ってきた《風魔法》であることに気付くまでに悠斗は、幾分の時間を要した。 


 バットの風魔法は遠距離から放ったこともあり、悠斗の体に命中することはなかった。

 けれども、完全に不意を突かれる形になったため、悠斗は額から冷や汗をかく。


 敵の数は八体。


 まさかいきなり魔物の群れと遭遇することになるとは予想外であった。


「「「キッ! キッ!」」」


 仲間の亡骸を目の当りにしたバットたちは悠斗に対して怒りの炎を燃やしているようであった。


「……おっと」


 瞬間、バットたちは連続して風魔法を放つ。

 今度はかなり余裕を持ってそれを回避することが出来た。


 先程まで悠斗がいた場所は、風魔法がぶつかった衝撃で軽く地面が抉られていた。

 攻撃が命中したからと言って即座に命の危機に陥るようなものではないが、確実に無傷では済まない威力だろう。


「人が作業に集中しているときに……やってくれるぜ」


 悠斗は槍を手に取るとすぐさま臨戦態勢に入る。



 ~~~~~~~~~~~~



 バットの群れとの戦闘は存外、呆気なく終了した。

 元より不意打ちにさえ気を付ければ、武装したオークの集団を相手に無傷で勝利する悠斗が手を焼くような相手ではないのである。


 バットたちは卓越した悠斗の槍術により串刺しの団子のようになっていた。


 けれども、悠斗はここで討伐クエストを甘く見ていたことを思い知る。

 もしかしたら未だに何処かこの世界のことをゲーム感覚で見ていたのかもしれない。



(このまま1人で戦闘していたら……直ぐにでも壁にぶつかりそうだ)



 最低でも1人はクエストを手伝ってくれる仲間が必要になってくるだろう。

 さもなければ素材を剥いでいる時は、どうしても無防備な姿を晒してしまうことになる。

 

 こんな戦い方を続けていれば、いずれは命を落とすことになるかもしれない。

 今回の経験を通じて悠斗は、『仲間』の必要性を痛感するのであった。



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