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移動手段を確保しよう



 ベン・マックルガー

 種族:ヒューマ

 職業:商人

 固有能力:なし


 目的の店に到着するなり悠斗のことを出迎えたのは、筋骨隆々の男性であった。


(……うわ。またガチムチの人だよ)

 

 その外見は年齢が多少若いことを除けば、アドルフに重なる部分が多い。

 野熊のような体型をした見るからに特殊な性癖を持っていそうな男であった。


「すいません。ギルド公認雑貨店のアドルフさんの紹介で来たのですが」


「なに!? アドルフ兄貴からの紹介だと……!?」


 アドルフの名前を聞いた途端。

 ベンの表情は急に真剣なものに豹変し、悠斗の足の爪先から頭のてっぺんまで眺め回す。


 直後。

 何やら満足気な笑みを浮かべて。



「……なるほど。良い男だな」



 そんな、意味深な言葉を口にする。

 一体、何が「なるほど」なのか悠斗には理解できなかった。


 そして悠斗は、自身の中に激しいデジャヴを覚えた。


「えーっと。今日はエアバイクを探しにきたのですが」


「ガハハ。エアバイクの品揃えならウチの店はロードランドでも1番だからね。ゆっくり見ていってよ」


「……分かりました」


 ベンの言葉通り、この店には様々な種類の乗り物が並べられていた。


 店の商品は悠斗がこれまで見たことのないデザインのものも多い。


 中でも取り分け目を惹いたのは、店の中央に展示されている奇怪な外見をした自動車であった。


「すいません。バイクとは関係ないんですけど、あの自動車は一体……」


 これまでにも女性用下着など、異世界っぽくないアイテムの存在に驚いていた悠斗であったが、、まさか自動車まであるとは予想外であった。


「おお! 自動車を知っているなんて兄ちゃんは物知りだね! ソイツはエアバイクと違って、屋根がある分、雨が降ってもお構いなしに走れるし、最大で5人まで搭乗可能なスゲー乗り物なのさ!」


「……いや。それはまあ、見れば分かるんですが、どうしてそんなに便利な乗り物があるのに普及していないのかなって」


 悠斗が疑問を投げかけると、ベンは腕を組んで。


「ふむ。まあ、理由は色々あるんだが、1番の問題はコストパフォーマンスが悪いっていうところにあるのかな。その自動車は、火の魔石を動力源にしているのだが、火の魔石は、風の魔石に比べて需要が高いから値が張るんだ。車体が重いから燃費も悪いし、こいつをまともに扱うことの出来るのは、よほどの金持ちしかいないだろうな」


「……なるほど」


 なかなか説得力のある理由であった。


 火の魔石と水の魔石は、既に悠斗にとっても生活必需品と呼んで差支えのないアイテムである。


 反面、風の魔石はあまり使用用途がパッと浮かばない。

 エアバイクの動力源になるくらいしか使い道がないから、安く買うことが出来るのだろう。


「ついでに言うと、1番金を持っていそうな貴族の連中は、考えが保守的で、未だに長距離の移動には馬車を使うことが雅なものだと考えている。そういうわけで現状で自動車を持っているのは、よっぽどの変わり者しかいないってわけよ」


「そういう事情があったのですか……」


 自動車に対して興味がないわけではないのだが、差し当たって必要なのはエアバイクである。


 ベンの説明を受けた悠斗は、店に並べられているエアバイクをくまなく調べることにした。



 それから20分後。

 思ったよりも早くエアバイクの購入候補を絞ることができた。


 それというのも悠斗が希望していた車種は、スピカとシルフィアを加えた、3人で乗ることの出来るタイプのものであったからだ。


 この店にあるバイクの中で3人乗りが可能なものは、サイドカーの付いている1種類だけあった。


 値段は1台、9万リア。

 日本円にしておそよ90万円である。


 なかなか良い値段で売られているような気がするのだが、これでもアドルフの紹介ということで特別価格ということらしい。



 高純度の魔石(風) レア度 ☆☆

(風の魔石を加工して作った高純度の魔石)



「それとこれはおまけだな。兄ちゃんは良い男だからな。高純度の魔石を3個ほどサービスしておくよ」


「……あ、ありがとうございます」


 例にとって『良い男割引』は、適用されるようである。

 なんだか複雑な気分ではあるが、貰えるものは貰っておくことにしよう。


 高純度の魔石は、一般的な魔石と比較して10倍以上の魔力を秘めており、値段は1つ1000リア。

エアバイクを動かすためには、このアイテムが必需品ということらしい。


 それから。

 悠斗はエアバイクの運転方法についてベンから説明を受けると、バッグの中に購入したバイクを強引に仕舞い、店を後にするのであった。



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