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リリナズキッチン



 その日の夕食は、悠斗にとって物珍しい料理が並んでいた。

 コイの洗い、フナの甘露煮、ナマズの蒲焼、などなど。


 市場で買ったばかりの新鮮な川魚のフルコースである。


「ぬおっ。これは……」


 川魚には苦い思い出しかない悠斗は、一瞬、苦悶の表情を浮かべる。


 けれども。

 美少女が自分のために作ってくれた料理であれば、男として食べないわけにはいかない。


 意を決した悠斗は、おそるおそると言った手つきで箸を伸ばす。



(あれ……? 意外に臭わないぞ)



 川魚特有のクセはあるのだが、食べることには全く支障のないレベルである。


「ユート。味の方は、どうだった!?」


 自分の作った料理が受け入れられるのか不安なリリナは、何処かソワソワとした表情であった。


「ビックリしたよ。川魚ってこんなに美味しかったんだな。これなら毎日でも食べられそうだ」


「私も。こんなに美味しい魚料理は初めて食べました!」


「恐れ入ったぞ! リリナ殿の腕前は、ルーメルの宮廷料理人にも引けを取らないものだろう」


「……そ、そうか。みんなにそう言って貰えると嬉しいよ」


 料理の腕を認められたリリナは照れ臭そうに頭を掻く。


 それから。

 夕食に舌鼓を打った後はデザートの時間である。


 悠斗はたった今、収穫したばかりの新鮮なフルーツをテーブルの上に並べることにした。


「わぁ……。これはまた贅沢な果物が沢山ありますね」


「うむ。これほどまでの御馳走は、ルーゲンベルクの家でも滅多に食べることは出来ないぞ」


「パナいのです! サーニャは甘いものには目がないのです!」


 テーブルの上のデザートを見て、3人の女の子たちはキラキラと目を輝かせていた。

 中でも好物ということもあり、サーニャは今にも目の前のモモを丸齧りしそうな雰囲気である。


 けれども。

 只一人、リリナだけは悠斗に対して怪訝な眼差しを送っていた。


「なあ。ユート。今日の市場ではこんなに果物を買っていないような気がするんだが、オレの思い過ごしか?」


「……まあ、細かいことは気にしないでくれよ」


 突如として出現した果物園に対し、リリナたちが驚くのは、もう少し先の話になる。


「それよりリリナ。そこにあるフルーツを食べやすい大きさにカットしてくれないか?」


「はいよ。了解」


 リリナは頷くと、おもむろにテーブルの上のリンゴに手を伸ばす。


 何処からともなく包丁を取り出すと、見事な手際でリンゴの皮を剥き始めた。


「「「「おぉぉ……」」」」

 

 そのあまりに華麗な包丁捌きを目の当たりにして、悠斗たちは感嘆の声を漏らす。

 時間にして5秒を切るかというほどの超スピードであった。


「なんというか、本当にリリナがウチに来てくれて良かったよ。リリナは将来、良いお嫁さんになりそうだよな」


「お、お嫁さん!? バカ言うな! オレにはそんなもん似合わねえよ!」


「「…………」」


 スピカ&シルフィアは口の中に果物を頬張りながらも、とあることに気が付く。



((もしかして私たち……食べてばかりで何も役に立っていないのでは!?))



 二人に複雑な心境を抱かせたのは、先程から主人に絶賛されているリリナの存在である。 


 容姿が美しい上に家事万能スキルを所持するリリナは、男が理想とする女性像なのだろう。


 けれども。

 先に契約を結んだ自分たちが、後から奴隷になった者に女としての魅力で負けるわけにはいかないのである。


 仮にこの先――。

 主人からの寵愛をリリナが一身に引き受けるようなことになれば目も当てられない。

 

「シルフィアさん。これは私たちも何か手を打った方がいいのでは?」


「……うむ。今夜あたりで何か策を弄することにしよう」


 悠斗に聞こえないように声のトーンを落として二人は密談を開始する。


 想定外の強力なライバルの出現を受けて、スピカ&シルフィアは焦りを覚えるのであった。


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