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邪神復活



 一方同刻。

 此処はエクスペインの中にあるスラムの廃墟。


 その中に魔族たちの間にその雷名を轟かせている2人の傑物の姿があった。


「ベルフェゴールよ。ここ最近のお前の行動には目が余るものがある」


 1人は巨大な刀剣を背負った銀髪痩躯の男。

 七つの大罪の《傲慢》を司るルシファーであった。


「んあ? ルシファーの旦那。わざわざそんなことを言うためにオレに会いにきたのかい?」


 もう1人は、腰にひょうたん型の酒ビンを身に付けた、だらしのない体型をした中年の男。

 七つの大罪の《怠惰》を司るベルフェゴールである。


「その通りだ。お前は以前からスラムを根城にして人間たちと接触しているようだな。忘れたか? 人間との関わりと持つことは、我々魔族にとって禁忌であることを――」


 鋭い眼差しで問い詰めるルシファー。


「ふん。別に忘れちゃいないさ。たださ、最近気付いちまったんだわ。《死戒の宝玉》に力を貯めるには、人間同士を争わせるのが1番効率が良いってな」


 そう言ってベルフェゴールが懐から出したのは灰色に濁った水晶玉であった。


 このアイテムは《死戒の宝玉》と呼ばれており、七つの大罪に属する魔族のみが所持することを許されるレアアイテムである。


 死戒の宝玉は人間たちの恐怖や絶望と言った《負の感情のエネルギー》を集めことで驚異的な魔力を蓄えることが可能であり――。


 七つの大罪のメンバーは、このアイテムを利用して、かつてこの世界に君臨していたとされている《邪神》を現世に蘇らせようと計画していたのであった。


 この邪神復活計画は500年前に人類との戦争に敗れて、辛酸を舐めている魔族たちにとって起死回生の策といえた。



「ルシファーの旦那。どうしたんだい? 傲慢を司るお前さんらしくないじゃないか。大体その取り決めは、オレたち魔族が人間との争いに敗れた直後に作られたものだろ? 

 500年前ならともかく今は条件が違う。オレたち魔族はここ100年で相当な力を蓄えてきた。今更どうして人間を恐れる必要がある?」


 邪神が復活して魔族たちが再びトライワイドを支配するようになった暁には、《死戒の宝玉》の中に貯めたエネルギーに応じて、七つの大罪のメンバーの間で領土を分配するという取り決めになっている。


 そのため。

 ベルフェゴールは人間たちを利用して、他のメンバーを出し抜こうと考えていたのであった。


「……驕りが過ぎるぞ。ベルフェゴールよ。人間は確かに個々の力では我々魔族には及ばないが、繁殖力や結束力では我々の遥か上を行く。かつて我々が人間との争いに敗れたのは、彼らの力を侮っていたからに他ならない」


「ブハハ! 驕りが過ぎるって! まさかお前さんの口からそんな言葉が出てくる日が来るとは思わなかったわ」


「…………」


 仲間からの忠告も何処吹く風と言わんばかりにベルフェゴールは笑い飛ばす。


 慢心を抱く仲間の姿を目の当たりにしたルシファーは不吉な予感を抱いていた。


(計画は全て予定通りに進んでいるはず。しかし、なんだ……? この胸の内から湧き上がる言われようのない不安は……?)


 このときルシファーの頭に過ったのは、エクスペインの街で偶然に見かけた1人の少年の姿であった。


 ルシファーの脳裏にはその少年の姿が焼き付いて離れなかった。


 何故ならば――。

 黒髪黒目の精悍な顔立ちをしたその少年は、500年前に人間たちを率いて魔族を滅ぼした英雄―—アーク・シュヴァルツの姿と重なるものがあったからである。



(……フッ。ベルフェゴールの言うことにも一理ある。たった1人の人間に恐れを抱くなど私もどうかしているな)



 自分としたことが、ガラにもないことを考えてしまった。

 

 そう判断したルシファーは、廃墟の中で自嘲的な笑みを零すのであった。



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