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「ほい。いらっしゃい」



 リカルツ・レオハルト

 種族:ヒューマ

 職業:商人

 固有能力:なし



 目的の不動産屋に到着するなり悠斗のことを出迎えたのは、筋骨隆々の男性であった。


(……うわ。またガチムチの人だよ)


 その外見は年齢が多少若いことを除けば、アドルフに重なる部分が多い。

 野熊のような体型をした見るからに特殊な性癖を持っていそうな男であった。


「すいません。ギルド公認雑貨店のアドルフさんの紹介で来たのですが」


「なに!? アドルフ兄貴からの紹介だと……!?」


 アドルフの名前を聞いた途端。

 リカルツの表情は急に真剣なものに豹変し、悠斗の足の爪先から頭のてっぺんまで眺め回す。


 直後。

 何やら満足気な笑みを浮かべて。



「……なるほど。良い男だな」



 そんな意味深な言葉を口にする。

 一体、何が「なるほど」なのか悠斗には理解できなかった。


「えーっと。実はこの辺りで住居を買いたいと思っているのですが」


「ふむふむ。んで。一戸建てとアパートのどっちが良いの?」


「それはまだ決めていません。色々と見て回りたいなと」


「ほうほう。予算はどれくらいあるの?」


「240万リアくらいは……」


「ぬっ……!?」


 悠斗の言葉を受けたリカルツは眼を見開いて驚いた。


「なるほどね。兄ちゃんは見たところ冒険者だが……その歳でこれだけの額を稼ぐとは大したもんだ。アドルフの兄貴が目をかけるのも頷けるよ」


「はぁ……。それはどうも」


「よしきた! 全て俺に任せてくれ! この街の最高の物件を兄ちゃんに紹介してやろうじゃないの!」


 リカルツは自らを鼓舞するかのようにバシリと己の尻を叩きながらも宣言する。


(色々とツッコミたいところはあるけど……ヤル気になってくれたみたいだし結果オーライということにしておこう……)


 悠斗はそう判断するとリカルツに連れられるままオススメの物件を見て回ることにした。



 ~~~~~~~~~~~~



 1軒目。

 リカルツが紹介したのは、小綺麗なアパートの一室であった。


 部屋は広い。

 これならばスピカとシルフィアの3人暮らしにはちょうど良いくらいの広さだろう。


 そして何より――。

 冒険者ギルドから徒歩2分の位置にあるのが魅力的であった。


「どうだい? ここはゴールドクラスの冒険者たちが愛用している高級アパートだ」


「良い感じです。特に冒険者ギルドに近いところが気に入りました。ちなみに幾らくらいするんですか?」


「そうだな。本来の相場は70万リアってところだが……兄ちゃんは良い男だからな。特別に60万リアでいいぜ」


「……あ、ありがとうございます」


 以前に何処かで聞いたことのある台詞であった。

 ギルド公認雑貨店と同様にこの不動産屋にも『良い男割引』は適用されるものらしい。


(そんな意味不明な理由で10万リアも値引きして大丈夫なのかよ……!?)


 等とツッコミを入れたい気持ちはあったものの、安く購入できることに越したことはない。


 悠斗はリカルツに連れられるまま次の物件に向かうことにした。



 ~~~~~~~~~~~~



 2軒目。

 リカルツが紹介したのは、閑静な住宅街に位置する一戸建てであった。


 新築2階建てのその家は見るからにリッチな雰囲気を醸し出していた。

 家の中も3人で暮らすには十分過ぎるほどに広い。


 加えて。

 冒険者ギルドまでの距離が徒歩10分以内の位置にあるのも魅力的である。


「この家は幾らになりますか?」


「そうだな。本来の相場は90万リアってところだが……兄ちゃんは良い男だからな。特別に80万リアでいいぜ」


「…………」


 良い男割引が適用されることについては気にしないことにした。


 1軒目と2軒目。

 どちらの物件も悠斗にとっては魅力的であった。


 けれども。

 悠斗は何故か心のどこかで引っ掛かりを覚えていた。


 その違和感の正体に気付いた悠斗はポンと手を叩く。



(そうだよ。俺の目標は……異世界で100人の美少女とのハーレムを築くことだったはず……!)



 ならば100人の美少女と同居が可能な住宅を購入するのがベストだろう。


 手持ちの予算は240万リア。

 この程度の資金では到底そんな豪邸は購入できそうにないが、そのときはそれで良しとしよう。


 今後の討伐クエストにより、地道に稼いでいけばいいのだから。


「あの。こんなことを聞くのは非常識かもしれませんが……100人くらいが同時に住めるような豪邸って何処かに心当たりはありませんか?」


「なに……!? 100人だって……!?」


 悠斗のリクエストを受けたリカルツは、驚愕しながらも頭の中から候補を絞り出す。


「1つだけ……心当たりがある。もっともソイツは……俺の知り合いが管理しているものでな。割引は利かなくなっちまうし、色々と難ありの物件でもあるが……それでも良いって言うなら見ておくかい?」


「お願いします!」


 悠斗の中に断る理由は存在しなかった。

 リカルツに連れられるまま悠斗は、次なる物件に向かうのであった。



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