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VS 吸血鬼1

 


 悠斗は奴隷商館で聞いた情報を頼りにギーシュのいる屋敷に向かうことにした。


「……ここか」


 アンドレア・スコット・マルニッシュの住居は、エクスペインの郊外に存在していた。

 大貴族の屋敷というだけあってその外観は壮大である。


 水の魔石を贅沢に使用して作られた庭の噴水は、現代日本でもなかなかお目に掛かれないほど見事なものであった。


(……念のため透過のスキルを使っておくか)


 庭に通じる門の前には見張りの人間などはいないようであるが、用心するに越したことはない。

 悠斗は透過のスキルを使用すると重くなった足を引きずり、屋敷の中に潜入することにした。



 ~~~~~~~~~~~~



(……妙だな)


 屋敷の中は人気がなく物静かなものであった。

 これだけの大豪邸であれば、最低でも10人以上は使用人がいそうなものであるが、今のところ全くその気配はない。


 悠斗はそこで場違いなピアノの音色を耳にする。


 閑散とした屋敷の中は、ピアノのメロディがよく響いた。

 音のする方に歩みを進めた悠斗は、屋敷の中でも一際大きな扉を発見する。


 トラップが仕掛けられている危険性を考慮した悠斗は、そこで透過のスキルを解除する。

 扉を開けると目的の人物はそこにいた。



「コノエ・ユウトくんだね。待ちくたびれたよ」



 ギーシュ・ベルシュタインは、ピアノの演奏を止めて悠斗のことを出迎えた。

 部屋の中には縄によって椅子の上に拘束されたシルフィアの姿があった。


「丁寧に呼び出してくれてありがとよ。けれども、まさかテメェのコンサートに招待するためにこんな真似をした訳じゃないよな?」


「はは。安心していいよ。この演奏はちょっとした儀式みたいなものだから」


「儀式?」


「ああ。キミは家畜に音楽を聞かせると肉質が向上するという話を聞いたことはあるかい? だから僕も時々きまぐれで……食事の前は贄となる女性にとびきりの演奏を聞かせてやることにしているんだ。もっとも……音楽を聞かせてやっても彼女たちの味にさしたる変化は見られないのだけどね」


「……いい趣味してるぜ」


 悠斗はそこで吸血鬼にとって人間という生物は、家畜と同様の存在でしかないのだということを悟る。


「~~~~っ!」


(ユウト殿! 逃げてくれ! その男は一介の人間が太刀打ちできるような相手ではない……!)


 シルフィアは悠斗の姿を見るなり縛られた手足を目一杯に動かして危機を伝えようとする。


 魔族の中でも強力な戦闘能力を有する吸血鬼という生物は、王国の騎士団100人掛かりで戦って討伐できるかどうかという強敵としてその名を知られていた。


 そのため。

 シルフィアはなんとかして悠斗に対して逃げるようにメッセージを伝えようとしていた。


「随分と回りくどいやり方をするんだな。隷属契約を利用すれば、わざわざ手足を縛る必要はないんだろ?」


「ふむ。まあ、合理的に考えればそうなるな。けれども、それでは味気ないだろう? 自らの意思を持たない傀儡を嬲ることは……自慰行為にも等しい」


 ギーシュは下卑た笑い表情に張り付ける。


「あまり認めたくはないが……その部分に関しては同感だな」


 隷属契約によって手足や言語の自由を奪ってしまうのは簡単であるが、緊縛された奴隷少女というものには特別な趣があった。


 それが金髪碧眼の巨乳美少女というのであれば尚更である。


(やりにくいんだよな……趣味の合う人間とは……)


 悠斗は近い性癖を所持するものとして、吸血鬼の男に不思議な親近感を抱いていた。



「さあ。ユウトくん! 見せておくれよ。キミの力を!」



 ギーシュはそこで腰に差した妖刀を鞘から抜く。

 悠斗はその動きに呼応するかのように自身の相棒であるロングソードを抜刀する。


 人間 VS 吸血鬼。


 その決戦の火蓋が切られようとしていた。









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