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奪還


 翌朝。

 目を覚ました悠斗は、ルームサービスで朝食を摂るとスピカを連れて外に出る。


 悠斗たちは冒険者ギルドに向かう前にシルフィアの様子を見るために奴隷商館に寄ることにした。


 

「これはこれは……ユウト様。お待ちしておりました」


「その怪我はどうしたんだ?」



 骨折でもしたのだろうか?

 ジルの左腕は、包帯でグルグルに巻かれていた。


「この傷は……昨晩アンドレア卿に殴られた時に負ったものになります。アンドレア卿は御乱心です。私の店の商品を無理やり奪って行ったんです」


「……おいおい。まさかその商品って」


「ユウト様の御察しの通り……シルフィアで御座います」


「…………」


 悠斗は困惑していた。

 向こうは連続誘拐事件の犯人である可能性が高い吸血鬼であり、目立った行動は避けるはずだと悠斗は推測していた。


 故に力ずくでシルフィアが連れ去られる展開は予想外のものであった。


「……貴族っていうのはそんな横暴なことをして許されるのか?」


「いえ。許されるはずもありません。現在は王都の騎士団に交渉中です。諸々の調査が終わり次第、アンドレア卿の身柄は拘束されるはずでしょう」


「ちなみにそれは何時頃になりそうなんだ?」


「さぁ……。犯罪者とは言え向こうは1国の大貴族。冤罪などはあってはならないことでしょうから、最短でも1週間は取り調べに時間がかかると予想しています」


「1週間……か……」


 今こうしている間にもシルフィアが危険な目に晒されているのかもしれないというのにそんな時間を待っている余裕はない。


「悪いが……アンドレア卿の自宅を教えてくれないか? 直接会って話したいことがある」


「……承知致しました。実を言いますとアンドレア卿からユウト様にこのような伝言を預かっております。女を返して欲しければ、自分の屋敷まで来るように、と」


 ジルの言葉を聞いた悠斗は困惑した。

 一体そんな伝言を残して向こうにどんなメリットがあるというのだろうか。


(……いや。今はそんなことを考えていても仕方がない)


 とにかく一刻でも早くシルフィアの元に向かうのが先決だろう。

 そう判断すると悠斗は足取りを早くして奴隷商館を後にするのであった。



 ~~~~~~~~~~~~



「ご主人さま! シルフィアさんの様子は如何でしたか?」


 奴隷商館から出ると外で待機していたスピカが悠斗のことを出迎える。


「ああ。うん。そのことだけど少し、事情が変わってな。スピカは先に宿舎に戻って待機をしていてくれないか?」


「……えっ」


 スピカは言葉を失っていた。

 正直に言って状況は全く呑み込めない。


 だがしかし。

 いつになく真剣な表情を浮かべる悠斗の姿を目の当たりにして、何やら只事ではない事態が起きているということだけは朧気に理解することが出来た。


「……承知致しました。けれども、1つだけ教えて下さい。ご主人さまは何処に向かわれるのですか?」


 主人の無事を祈るかのような不安気な眼差しでスピカは尋ねた。


「なに。大した用事ではないさ。ちょっとばかし……攫われた女を奪い取りにな」


 そう告げると悠斗は無言のままスピカの元から離れて行く。


 何が起きているか詳しいことは分からない。

 

 けれども。

 これから自らの主人が危険な場所に赴くのだろうということは、なんとなく推し量ることが出来た。



(ご主人さま……絶対に生きて帰って来て下さいね……)



 去りゆく悠斗の背中を見つめながら――スピカは切に願うのであった。





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