能力略奪(スキルテイカー)の秘密
以上がベルゼバブの能力によって、見せられた2人が《深淵の穴》に落ちてしまった経緯である。
その後、なんとか自力で穴から脱出できないか、試行錯誤をしていたのだが、2人の力では戦力が足りていなかった。
想像を絶するほど強力なモンスターにたち阻まれ、断念せざるを得ない状況に追い込まれてしまったのである。
「……すまない。ユート君。ここから脱出するためには、戦力が足りていないのだ。キミの力を貸してほしい」
「アタシたちが頼れそうな人って、ユートさましかいないんです!」
「なるほど。そういう事情があったのか」
唐突に知らない召喚された時は、驚いたが、一つ一つ状況説明を聞いてみると、色々と捉え方が変わってくる部分もある。
強面のオッサンはともかく、制服姿の美少女魔族に頼られるのは、悪くない気分であった。
「なあ。素朴な疑問なんだが、ベルの能力を使えば簡単に外に出られるんじゃないか?」
ベルゼバブの能力《悪食》は、何でも願えてくれる魔人を召喚する力である。
叶えられる願いには、およそ際限がない。
その気になれば死者すら蘇らせてしまえるほどの汎用性が、この能力にはあったのだ。
「無論、最初にそれは試した。だが、どうにも上手くいかなくてな」
「ごめんなさい。アタシの能力は燃費が悪いんです」
アスモデウス曰く。
この《深淵の穴》は入ることは簡単にできても、出ること難しい蟻地獄のような構造になっているらしい。
ベルゼバブの能力の唯一の欠点は、叶える願いの難易度に応じて、魔力を消費することにあった。
穴からの脱出を成功するのに必要な魔力を貯めるには、想像を絶するほどのエネルギーが必要になるらしい。
「なるほど。だから俺を呼んだのか。要するに、エネルギーを貯めれば良いんだろ。魔物を倒しまくって」
「……!? 流石はユートくん。その通りだ」
この時点で悠斗は何故、自分がこの場に呼び出されたのか、完璧に理解していた。
「作戦はこうだ。ワタシが敵の注意を引き付けている間に、悠斗くんが敵を弱らし、ベルの能力が死体を食べて、魔力を吸収。
このサイクルを繰り返していけば、数カ月後には地上に出られる魔力を貯められると思っている」
打たれ強さにかけては魔族の中でも最強と目されるアスモデウスであるが、攻撃面においては心持たない部分があった。
この地下で生き抜いていくためには、アタッカーとして秀でた、援軍が必要であると考えていたのである。
「……いや。数カ月と言わずに、数日、下手したら半日くらいで出られるかもしれないぞ」
その時、悠斗の脳裏に過ったのは、超高速で脱出することを可能とする革命的なアイデアであった。
「えっ……!?」
「なにっ……!?」
もっとも、この作戦には1つ、大きなデメリットがある。
それは、これまで誰にも語ることがなかった悠斗自身の秘密について打ち明けなければならないということである。
「教えてくれ。ユートくん。キミの考えた作戦を」
この非常事態に手段を選んでいられる余裕はありそうにない。
決意を固めた悠斗は、異世界に召喚されてから初めて《能力略奪》のスキルの秘密を他人に打ち明けてみることにした。




