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堕天した堕天使

 地獄は悠斗が魔界の最深部である《深淵の穴》に召喚される3日ほど前に遡ることになる。


 ここは、魔界の中でも最も歴史と権威のある建築物である《アインヴィッシュの城》という場所がある。

 

 かつての仲間に呼び出されたアスモデウス&ベルゼバブは、訝しりながらも、城の中に足を踏み入れていた。



「よく来てくれたな。我が友よ。お前たちの来訪を歓迎しよう」


「「…………!?」」



 その男は何処からともなく、唐突に姿を現した。


 恐ろしい。


 男の持つ、圧倒的な存在感を嗅ぎ取ったアスモデウスは、本能的に防御態勢を取ることになる。



(バカな……! これがルシファーなのか!? なんという魔力! 以前までとは、まるで別人ではないか!)



 久しぶりの再会を果たしたアスモデウスは驚愕していた。



 戦力分析@レア度 ☆☆☆☆

(対象の戦闘能力を数値化するスキル)



 アスモデウスの保有する固有能力の中には、《戦力分析》という対象の戦闘能力を数値化するスキルがあった。


 武器を持った人間の戦闘能力を一人力、魔族の平均の戦闘力を百人力とするならば、以前までのルシファーの戦闘能力はせいぜい五千人力くらいのものであった。


 だがしかし。


 現在のルシファーの戦闘能力はというと、軽く五百万を超えている。


 これほどまでに力を持った魔族は、過去に一度たりとも見たことがなかった。



「ルシファー! 今まで何処で、何をやっていたのだ! 我々が一体どれだけお前のことを心配したか!」


「……地獄を見ていたのだ。この世ならざる場所で、悠久の時を彷徨っていた」



 左目に装着した眼帯を手で押さえたルシファーは、意味深な言葉を返していた。



「だが、オレは地獄に打ち勝った! オレは今ここにいるのだ! 裏切ものたちは、全員始末しいてやったぞ! ハハハッ! フハハハハ!」



 誰に向けるでもなく、唐突に笑い始めるルシファー。


 その表情は一目で普通ではないことが分かり、正気を失っているかのように見えた。



「あのう。ルシファーさん。用があるなら、手短に言って下さいよ。アタシたち、こう見えて忙しいんですけど」



 痺れを切らしたベルゼバブが尋ねると、ルシファーはニヤリと口角を吊り上げる。



「単刀直入に言う。お前たち、オレの配下になるつもりはないか? オレの血を浴びれば、お前たちも、この力が手に入るのだ。どうだ。悪い話ではないだろう?」



 己の腕に爪を立てたルシファーは、ポトポトと地面に血液を垂らし始める。


 その血液からは、今までに見たことのないほどの超高純度の魔力を感じ取ることができた。


 邪神の力の最大の特徴は、その力の一部を他者に受け継がせることが可能という点にある。


 この力を利用して、過去に存在していた《闇の勢力》たちは、軍備の拡大を続けて行ったのである。



「ええ~。アタシは遠慮しておきます。なんかグロいし……」


「ワタシも同じ意見だ。堕ちたな。ルシファー。我々は決して、お前の軍門に下る気はない」



 ここでルシファーの指示に従ってしまうと、破滅の未来が待ち受けるような気がする。


 そんな予感を抱いた2人は、ルシファーの誘いを断ることにした。



「そうか。お前たちは所詮、その程度の存在だったというわけか……」



 2人の返事を聞いたルシファーは、退屈そうな表情を浮かべる。



「ならば用済みだ。お前たちもオレと同じ苦しみを味わうが良い!」



 異変が起こったのはルシファーが、パチリと指を鳴らした瞬間であった。



 ズゴッ!


 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!



 城の中に何やら奇妙な音が響き渡る。


 何事かと思い周囲を見渡すと、城全体が激しい振動に包まれて、次々と床が崩れ落ちているようであった。



「なに……これ……!? なんなの……!?」


「おい。城が崩れてゆくぞ……!?」



 自分たちが底なしの穴のような場所に落ちていることに気付いたのは、それから暫く後の話である。


 こうして2人の魔族は、一度落ちることになれば、脱出不可能と目される《深淵の穴》に閉じ込められることになったのである。




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