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戦利品

 


 オークたちとの戦闘を終えた直後。

 悠斗は自身の長期的な目標を『元の世界に帰る方法を探すこと』にしようと心の中で決めていた。


 悠斗は異世界に召喚されたという状況に対して少なからず胸を躍らせていた。

 何故ならば、この世界ならば自分の学んできた武芸を活かす『戦いの場』に困ることはないと判断したからである。


 けれども。

 だからと言って元の世界に帰る方法が見つかるに越したことはあるまい。


 この世界の医療水準がどの程度のレベルなのかは定かではないが、少なくとも魔物という存在が確認できる以上、現代日本よりも高いということはないだろう。


 例えば、この先――。

 異世界で生活している最中、現代日本に戻らないと治療できない病気を患らうというのも十分に有り得る。


 そういう可能性を考慮すると、元の世界に戻るという選択肢は、持っておいて損はないだろう。


 どちらの世界に生活の基盤を置くかは、この世界をゆっくりと見て回ってから考えても遅くはあるまい。



「……さて」



 そうと決まれば当然、『先立つもの』が必要になってくる。

 ベッドの上で寝ている途中に異世界に召喚された悠斗は、寝間着にしているジャージ以外、何一つとして身に付けていないのだ。


 幸いなことにこの場には十を超えるオークの死体が転がっている。


「何か価値のある物が見つけられれば良いんだけどな……」


 過度な期待をしないように心がけながらも、悠斗はオークたちの身ぐるみを剥ぎ始めるのであった。



 ~~~~~~~~~~~~



 それから十分後。


「……おぉ。これは思ったよりも収穫があったかもしれないな」


 悠斗は想定外の収穫に胸を躍らせていた。

 まずはオークたちが所持していた通貨から整理していく。


 鉄貨 × 45枚

(トライワイドの共通貨幣。1枚につき10リアの価値がある)



 銅貨 × 19枚

(トライワイドの共通貨幣。1枚につき100リアの価値がある)



 銀貨 × 7枚 

(トライワイドの共通貨幣。1枚につき1000リアの価値がある)



 金貨 × 5枚

(トライワイドの共通貨幣。1枚につき10000リアの価値がある)



 魔眼による解説が確かであれば、この時点でオークたちから59350リアの資金を巻き上げたことになる。



 果たしてここの数字がこの世界でどれほどの価値を持つのかは定かではないが、十人を超えるオークたちの所持金を全て合算したのだから、相応の額になっているものだと信じたい。


 次にオークたちが持っていた武器を整理していく。



 オークの槍@レア度 ☆ ×9本

(オークたちが好んで使用する槍。安価な素材で製造されているため、その性能は低い)



 オークの杖@レア度 ☆ ×1本

(オークたちが好んで使用する杖。安価な素材で製造されているため、その性能は低い)



「うーん。全部ランク1か……」


 収穫量こそ多いものの、一体どれほどの価値が付くのかは現時点では不明である。

 オークの杖は眼鏡をかけたインテリのオークが所持しているものであった。


 杖という武器が存在しているということは、この世界には魔法という概念が存在するのだろうか?


 もしかしたらあの戦闘は、《魔法》を目にすることが出来る機会だったのかもしれない。


「……クソッ。もう少し戦闘時に泳がせておくべきだったか。失敗だ」


 悠斗は悔しそうに臍を噛みながらも次の収穫物に目を移す。



 コボルトの煙管(キセル)@レア度 ☆☆☆

(コボルトたちが好んで使用する煙管。吹かすと煙草に独特の風味が加わるため、愛好者は多い)



 魔法のバッグ@レア度 ☆☆☆☆

(アイテムを自由に出し入れできる便利な鞄。制限容量は100キロまで)



 レアリティから考えれば、これらのアイテムは間違いなく当たりだろう。

 ちなみにこれらのアイテムは全てオークのボスから奪い取ったアイテムである。


 しっかりとレアリティの高いアイテムを所持しているあたり……オークとは言っても流石は奴隷商人のボスと言ったところだろうか。


 特に注目するべきは――この《魔法のバッグ》である。


 俄かには信じられないが、魔眼による解説文によると制限容量100キロまで自由にアイテムを出し入れすることができるらしい。


 悠斗は試しに地面に転がっている《オークの槍》をバッグの中に入れることにした。



「おぉ……」



 直後、長さ1メートルは超える槍がバッグの中に吸い込まれるようにして入っていく。

 これに味を占めた悠斗は、手に入れたアイテムを次々にバッグの中に納めていく。


 その結果――。


 手持ちのアイテムを全て《魔法のバッグ》の中に入れることに成功した。

 9本もあるオークの槍をどうやって持ち運ぶか途方に暮れていたところだったので、この収穫は嬉しい限りである。



「……これは便利なものを手に入れたな。このバッグさえあれば屋敷のものを盗み放題だろ!」



 周囲にオークたちの亡骸が散乱する部屋で悠斗は、思わずそのテンションを上げるのであった。


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