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VS グレゴリー・スキャナー2



 グレゴリー・スキャナーは我慢のできない男だった。

 無職の父親と娼婦の母親の間に生まれたグレゴリーは、絵にかいたような貧しい生活を送っていた。


 最初に人を殺したのは彼が6歳の時である。

 大酒飲みの父親は毎日のように夜の街を飲み歩いては、家の中で暴れ、時には家族に暴力を振るうことがあった。


 グレゴリーは横暴な父親の振る舞いに我慢するができず、手を出してきた父親を返り討ちにして殺してしまった。



(なんだよ……。何時も偉そうにしていた割には大したことないな……)



 血を流しながらも倒れる父親を見下しながらもグレゴリーは、そんなことを考えていた。


 もともと両親から愛情を受けずに育ったグレゴリーにとって、父親とは自分と無関係な他人も同然の存在だったのである。


 次に人を殺したのはその翌日のことである。

夫を亡くしてヒステリックに泣き喚く母親に我慢ができずに殺してしまった。


 この頃からグレゴリーは他人の死に関して、特にこれと言って何の感情も持たなくなっていた。


 人間はずっと自分1人で生きていかなければならないのだ。


 自分と無関係な第三者が死んだところで何も悲しむ必要がない。


 独自の死生観と天から与えられた卓越した戦闘センスを合わせて持ったグレゴリーは、瞬く間にスラム街のリーダーとして君臨するようになっていた。




(ハハッ! どいつもこいつも……弱ぇ弱ぇ!)




 異世界に召喚されるまでの間にグレゴリーが殺した人間の数は3ケタに上り、犯した女の優にその10倍にも及んでいる。


 グレゴリーの悪行は、悠斗の住んでいる日本にも聞き届いており、何時しかグレゴリーは現代の『ジャック・ザ・リッパー』と呼ばれ、人々から恐れられるようになっていた。

 


 ~~~~~~~~~~



 グレゴリーが仕掛けた『起爆札』による攻撃から数刻。

 地下聖堂の中は轟々と土煙が舞い、灼熱の業火に包まれることになっていた。



「主君っ!?」



 爆発に巻き込まれた悠斗を目にするのと同時に、シルフィアの頭の中は真っ白になっていた。

 瞬間、リズベルの鋭い攻撃がシルフィアの髪の毛を霞める。



「チッ……。外したか……」

 


 危なかった。

 あと少し反応が遅れていたら確実に喉にまで刃が届いていた。

 目が冴えるように冷酷なリズベルの一撃は、シルフィアに冷静な思考を取り戻させる。



「ふふ。私を相手に余所見とは……。お前も随分と偉くなったものだな」


「ちがっ。そんなことは……」


「甘い! 甘いぞ! シルフィア!」



 リズベルはシルフィアの隙に付け入るようにして立て続けに剣を振るっていく。



(……大丈夫。主君は絶対に生きている!)



 どちらにせよ、今自分にできることは目の前の敵を倒すこと以外に他はない。

 シルフィアは自分にそう言い聞かせ、集中力を研ぎ澄まして行くのだった。



 ~~~~~~~~~~



 爆発によって取り乱してしまったシルフィアとは対照的にサクラは冷静であった。


 これまで暫く行動を共にしてみて分かったことがある。

 近衛悠斗という少年は、少なくとも5つ以上のレアリティの高い固有能力を保有している。


 一体何故?

 どのような手段で悠斗が複数の固有能力を手に入れたのかまでは分からない。


 けれども、これまでに悠斗が起こした数々の奇跡の中には、固有能力の存在なしには説明のつかないものが幾つかあった。



(……大丈夫。おそらくコノエ・ユートは上手く攻撃を回避しているでしょう)



 悠斗の保有する固有能力の中には影の中を自在に移動することができる《影縫》のスキルがある。


 目の前の少年の反射神経があれば爆発の寸前に影の中に潜り込んで、攻撃を回避することは難くない。


 暗殺者として数々の修羅場を潜り抜けたサクラは、常人離れした洞察力を有していたのである。



「メイド風情が! 我々に歯向かうとは良い度胸です!」



 サクラは咄嗟にセバスの攻撃をスカートの中に隠していた暗器で受け止める。


 ガキンッ。

 手負いの状態とは言っても依然として吸血鬼のパワーは凄まじいものがある。


 サクラは咄嗟に体を半歩下げた、衝撃を逃す身のこなしによって、寸前のタイミングで致命的なダメージを回避する。

 


「……どうやら貴方は1つ勘違いしているようですね」



 武器を片手に宙を舞いながらもサクラは言った。


 ここまでのセバスの行動は全てサクラの想定の範囲内だった。

 少しでも注意を引き付けて、悠斗がグレゴリーと1対1の戦いに集中できるようにサポートすることが



「今のワタシはメイドではありません。『元』メイドです」



 地面に着地した次の瞬間。

 身に纏っていたメイド服を脱ぎ去ったサクラは、持ち前の早着替え術によって黒色のキャットスーツ姿を露にする。


 サクラがメイドとしてルーゲルンベルクの家で働いていたのは、半年以上も昔のことである。


 ルーメル政府に諜報員として雇われたサクラは以降、ひたすらに暗殺者としての技能を磨いていたのだった。



「殺っ――!」



 衣替えをしたサクラは手にした暗器で以てセバスの懐に踏み込んだ。



「なっ……! 早い……!?」



 セバスは驚愕していた。

 先程までの動きと比較をすると同一人物とは思えない。


 メイド服を脱ぎ捨てたサクラの動きは、明らかにスピードを増していた。

 

 ヒラヒラとしたメイド服は武器を隠しておくには都合が良いが、素早く動こうとする上では弊害となるのである。



「クッ……!」



 危うく喉を掻き切られそうになったセバスは額から冷たい汗を流す。


 非力な相手と思って油断することはできない。

 自身のパワー不足を補うべくサクラは常に手にした刃に毒を塗っているのである。



「小娘が! 調子に乗るなよ!」



 反撃とばかりに太刀を振るうセバスであったが、感情的になった相手の攻撃を避けることは容易かった。


 メイド服という拘束具を外してギアを上げたサクラと、手負いの状態で無理を重ねて体を鈍らせていくセバス。


 何時の間にか2人の力関係は逆転していた。

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