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反逆の王



 一方、その頃。

 ここはナルビアの住宅街に作られたルーメル反乱軍の地下アジトである。


 歯止めの効かない過疎化によってゴーストタウンとなったナルビアの街は、隠れ家となるアジトを作るのに事欠かない。


 今現在。

 アジトの最深部には、豪華な装飾の付いた椅子に座る1人の男と3人の部下たちが鎮座していた。


 

「それでリズベル。兵士たちの調子はどうだ」



 一段高い場所から部下に声をかける男の名前は、グレゴリー・スキャナー。

それぞれが物語の《主人公級》の力を持った《ナンバーズ》においてナンバー【08】の地位を与えられた男である。



「……状況は芳しくありません」



グレゴリーの前で膝を突く女の名前はリズベル・ウッドロッド

 シルフィアに剣を教えた師匠であり、ルーメル革命軍における総帥の地位に就く人物であった。


 本来であれば総帥であるリズベルがグレゴリーに膝を突くのは奇妙な話であるが、2人の関係には明確な主従関係があった。


 ルーメル反乱軍においてリズベルは傀儡のリーダーに過ぎない。



拡散する人形遊び(マトリョーシカ・マリオネット)レア度@詳細不明

(他人の精神を操作する魔法の糸を紡ぎ出すスキル。この能力は他人に付与することができる)



 異世界召喚の際にグレゴリーが獲得したのは、他者の精神を操ることに特化した特殊なスキルだった。


スキルを使って文字通り全てを裏で操っていたのは、グレゴリーの方だったのである。



「船に乗せてきた10万の兵のうち、既に1万人ほどは病で動けない状態になっています。現在、船はロードランドに向けて進行中ですが、到着までには兵の数が半分近くにまで減ると予想されます」


「ククク……。そうか。そりゃまぁ、長時間船の中に寿司詰めにされれば、そうなるだろうよ」



 船に乗せてきた兵士の大部分は、隣の大陸から強引に連れてきた一般市民が大半を占めていた。

 グレゴリーが時折ナンバーズのアジトに設置されていた『ワープ装置』を使用していたのは、隣国で兵力を蓄えるためだったのである。



「食糧不足も問題です。何処かでまとまった食糧を調達しないと、我が軍の兵は敵国と戦うまでに餓死するものと思われます」



 グレゴリーのスキル『拡散する人形遊び』は、他人の行動を意のままに操る精神操作系のスキルである。


 その気になれば不眠不休で働かせることが可能であるが、無理を続けさせれば何処かで肉体的な限界が訪れることは避けられない。



「おいおい。何を言っているんだ。食料なら船の中にあるだろ」


「いえ。そんなはずは……」


「リズベル。お前、顔は良いが、頭が悪いのが玉に瑕だな。先に病気で倒れた人間の死体を千切って与えとけば良いんだよ。これで食糧問題は一気に解決だな」


「…………」



 とても同じ人間の発想とは思えない。

 グレゴリーのアドバイスを受けたリズベルは、血の気の引くかのような恐怖を抱いていた。



「セバス。お前は暫くアジトに残り、オレ様の警護に当たれ。勘の鋭いやつらにオレ様の居場所を突き止めらたら面倒なことになるからな」


「ハッ! 仰せのままに!」



グレゴリーの指示を受けた執事服の男が、リズベルの横で膝を突く。


男の名前はセバス。

グレゴリー配下の兵たちの中でも、最高権力を与えられた幹部《3本槍》の1人である


 反乱軍《3本槍》の中でもとりわけ高い戦闘能力を誇るセバスは、グレゴリーの身の回りの世話と身辺警護を任されることが多かった。



(もう直ぐだ……! もう直ぐオレ様の悲願は達成される……!)



 究極の利己主義者であるグレゴリーにとって他人とは、自分に奉仕するためだけに生まれてきた存在である。

 

 生まれてこの方、一度たりとも自分こそが世界の頂点に立つべき人間だと信じて疑わなかったことはない。


 そんなグレゴリーにとって、自分より強力な戦闘能力を持った人間が集結したナンバーズという組織は、疎ましく思えた仕方がない存在であった。


 グレゴリーは今回の戦争を機にナンバーズのアジトを襲撃して、自らが世界の頂点に君臨する腹積もりでいたのである。



「最後にエストラ。例の女は用意しているんだろうな?」


「……しかり。ただいま連れて参ります」


 

 グレゴリーの命令を受けた禿頭の男は、立ち上がり、そっと部屋から立ち去っていく。


 反乱軍幹部《3本槍》のリーダーを務めるエストラは、その優れた判断力から組織の中では参謀役を務めている人間であった。


特別に優れた戦闘能力を有しているわけではないのだが、唯一、グレゴリーに助言が許される立場にあることから他の《3本槍》のメンバーの中から、一目置かれる存在となっていた。



「し、失礼します……」



 暫く待つとエストラは、1人の少女を連れてグレゴリーの前に現れる。


 少女は長い耳と赤色の眼が『赤兎族』と呼ばれる希少種族だった。

 普通の女性とは遊び飽きたグレゴリーは、世界各国の希少種族の少女たちをかき集めて、自分だけの奴隷ハーレムを作っていたのである。



「……3人とも席を外せ。ここから先はお楽しみに時間だ」



 妖しく唇を舐めたグレゴリーは、第一に《3本槍》のメンバーを部屋から追い出すことにした。


 ズボンを下ろしたグレゴリーは完全に臨戦態勢の状態になっていた。



「あぎゃっ……。ゆる、許して……」



 衣服を剥ぎ取られて、グレゴリーに首を締め上げられた赤兎族の少女は、苦悶の表情を浮かべる。

 究極の利己主義者であるグレゴリーは、女性と過ごす時においても自らの快楽以外のことは、何も考えていない。 



「そうだ……! それでいい! もっと苦しめ! もっとオレ様を楽しませるんだ!」



 どんなに助けを求めても救いの手を差し伸べてくれる人間が現れることはない。

 圧倒的な絶望を前にした赤兎族の少女の瞳は、暗く沈んだものになって行くのだった。


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