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「……これは一体なんの真似だ?」


 開口一番。

 シルフィアの口から出たのはそんな言葉であった。


「この程度のことで私に情けをかけたつもりか? 優しさを見せれば私が貴様に心を開くとでも? 

 笑わせる。これから自分のことを性奴隷として慰みものにしようという男に対して心を許す女など何処にいるというのだ」


 シルフィアは強い憎悪と軽蔑の視線を悠斗に対して向けていた。


「何か色々と誤解をしているようだが……第一に俺はお前のことを性奴隷として買うつもりはない」


「フンッ。誰がそんなことを信じる! 貴様たちロードランドの人間はいつもそうだ。自らの利のためなら他者を欺くことを憚らない外道ではないか!」


「…………」


 ここまでは大方、悠斗の予想通りの展開であった。


 自らの故郷を破滅に追いやった国の人物に対し、シルフィアが憎悪の感情を抱くのは当然の理である。


 問題はどうやってシルフィアの心を開かせるかであるが――。

 これについては一筋縄では行きそうにもない。


 そこで悠斗はリスクを取って賭けに出ることにした。


「あー。ちなみに俺は別にこの街で生まれ育った訳ではないし……そもそもこの世界とも無関係だから」


「な……に……!? どういうことだ……?」


「俺は異世界から召喚されてこの世界にやってきた。お前のことを買おうと思ったのは、お前なら元の世界に戻る情報について何か知っているのではないかと踏んだからだ」


 シルフィアは驚きで目を見開く。


「……バカなっ!? 仮に貴様の言葉が事実だとして……どうしてそれを私に漏らす? この世界における異世界人の扱いがどうなっているのか、貴様も知らない訳ではないだろう!」


「戦争のための道具として奴隷にさせられて国に利用されるのだろ? 知っているよ。

 けれども、だからこそだ。相手から信用を得るためには自分の『弱み』を晒すのが1番手っ取り早いだろう?」


「…………」


 付け加えて言うのであれば――。

 これまでこの商館で数々の前科を持ったシルフィアであれば、自分の秘密を漏らされても周囲の人間は戯言としか思わないだろう。

 

 という打算的な思惑が悠斗にはあった。


「なるほど。どうやら私は誤解をしていたらしい。これまで私はロードランドの男は1人の例外もなく脳内が淫猥な思考で埋め尽くされたクズだと思っていたが……。貴様はクズの中でも上澄みの……マシなクズということか」


「……酷い言い草だな」


 マシなクズ……という言い回しについては色々とツッコミを入れたいところではあるが、どうやら多少は信用を獲得することに成功したらしい。


「それで……貴様の目的は何だ? 自身の素性を明かしたということは、私と何か取引をしたいということなのだろう?」


「ああ。単刀直入に聞こう。シルフィアは異世界人が元の世界に戻るための方法を知っているか? 仮に知っているとすれば、俺はこれからお前に入札しようと考えている。

 俺が1番欲しいのは元の世界に帰るための情報だ。提供してくれた情報次第では、お前のことを奴隷身分から解放してやっても良いと考えている」


「なるほど。それは……この上ないほどに私にとって魅力的な取引だな」


 シルフィアは大きな胸の下で腕組みをしてそう呟く。

 彼女の双眸には僅かにだが、希望の光を宿っていた。



「――それでは結論から話すことにしよう。私は貴様の知りたい情報の一端について知っている」



 大きな胸を張って堂々とシルフィアはそう述べた。


(……どうやら見事に勘が的中したようだな)


 王族に仕えていた騎士の家系で生まれ育ったシルフィアならば何か知っているのではないかと期待していたのだが――。


 こんなにも早く日本に戻る手掛かりを手に入れられるとは予想外であった。


「……そうか。ありがとう。それなら帰りがけに入札を掛けておくことにするよ」


「私の言葉を疑わないのか?」


「ああ。だって嘘を吐くメリットがないだろう? 俺がシルフィアを買った後は、隷属契約により無理やり情報を吐かせることが出来る。

 仮に嘘を吐いていたことが発覚した場合、俺はお前をいくらでも酷い目に遭わせることだって可能な訳だ。嘘を吐いて俺の恨みを買うことはシルフィアにとって不利益でしかないからな」


「ふふ。たしかに考えてみればその通りだな」


 シルフィアは口元を押さえて微笑する。

 折しもそれは彼女がこの日――初めて見せた笑顔であった。


「なあ。差し支えなければ貴様の名前を聞かせてもらっても良いか?」


「近衛悠斗だ」


「コノエ……ユウト……」


 シルフィアは言葉の響きを確認するように繰り返し。


「抜け目のない男だ。個人的には貴様のことを気に入ったよ。それこそ……貴様のような男の下であれば、奴隷として仕えるのも悪くないと思ってしまう程度にはな」


「……それはどうも」


 シルフィアの言葉は悠斗の理性を揺るがすのに十分なものであった。

 

 正直に言えば――。

 悠斗は大金を払ってまで手に入れた奴隷を手放してしまうのは、惜しいと考えていた。

 

 だがしかし。


 可愛い女の子には優しく、そうでない女子はまあそれなりに扱うこと。


 という祖父から教えられてきた言葉は、悠斗の胸の中に深く根付いている考えである


 主人の立場を利用して嫌がる女の子を無理やりハーレムメンバーに加えるのは、悠斗の信条に反することであった。


 かと言って。

 このまま入札をしなければ、シルフィアは何処かの男の性奴隷として一生を過ごすことになるだろう。



 悠斗にとってそれは絶対に許せないことであった。



 正義感からではない。


 むしろその逆。

 悠斗が大金を払ってまで貫きたいと思ったのは『自分が目をかけた美少女を他の男に穢されたくない』という利己的な思想に他ならない。


 そのことを自覚して尚。


 1人の美少女の自由と元の世界に戻るための情報を同時に得ることが出来るのなら――。


 この投資は決して高くはないと悠斗は考えたのであった。



 ~~~~~~~~~~~~



 シルフィアと別れた後。

 悠斗はシルフィアの入札手続きを行うことにした。


「ありがとうございます。71万リアの御入札ですね。ではこちらの書類にサインをお願い致します」


 ジルは一礼をして悠斗に書類を差し出した。


 書類には競売のシステムに関するルールが記されていた。


 入札の意志表示をしたにもかかわらず提示した金額を期日までに払えなかった場合は、冒険者ギルドの出入を禁止されるなどの厳しい処置が取られるらしい。


 せっかく獲得した71万リアという大金であるが、シルフィアを落札すると決めたからには手を付けない方が良さそうである。


 それから間もなくして。

 入札手続きを済ませた悠斗は、奴隷商館を後にするのであった。



 ~~~~~~~~~~~~



「おかえりなさいませ。ご主人さま」


 宿屋に戻ると留守番をしていたスピカが出迎えてくれた。


「今日は競売品で得た資金を受け取りにいっていたのですよね? どれくらいの額になったのですか?」


「ああ。71万リアになったよ」


「な、71万リア!? それで……そのお金はどうしたのですか?」


「全部使った」


「使った!?」


「ダメか?」 


「い、いえ。ダメではないですが……ご主人さまはお金の使い方がダイナミック過ぎると思います」



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