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危険な穴場



 それから。

 悠斗たちパーティーの快進撃は続いた。


 前衛を剣を持ったスピカ、後衛を杖を持った悠斗が戦う鉄壁の布陣はラグール山脈(初級)に出現するモンスターを相手には、完全にオーバースペックであった。



 ブルースライム 脅威LV1


「ファイアボム!」



 水属性魔法を吸収する特性のあるブルースライムには火属性魔法が有効だった。

 悠斗の放った火属性魔法は前衛が打ち漏らしたブルースライムを一撃で燃やし尽くす。

 


 レッドスライム 脅威LV1


「ウォーターボム!」



 火属性魔法を吸収する特性のあるレッドスライムには水属性魔法が有効だった。

 悠斗の放った水属性魔法は前衛が打ち漏らしたレッドスライムを一撃で蒸発させる。


 一息ついたところで悠斗はそこでステータスを確認。



 近衛悠斗

 固有能力: 能力略奪 隷属契約 魔眼 透過 警鐘 成長促進 魔力精製 魂創造 魔力圧縮 影縫

 魔法  : 火魔法 LV4(12/40) 水魔法 LV7(0/70)

       風魔法 LV6(18/60)  聖魔法 LV6(37/60)

       呪魔法 LV6(6/60)

 特性  : 火耐性 LV6(16/60) 水耐性 LV3(9/30)

       風耐性 LV7(61/70)




 これまでに倒した魔物は、バッドが18体、レッドスライムが7体、ブルースライムが9体、グリーンスライムが5体――。


 1匹1匹から獲得できる経験値は少ないが、出現するモンスターの9割を2人で倒せているからか、期待していたよりも実入りの良い遠征になりそうであった。



「凄いです! ユウコさんは2つの属性魔法を同時に操るデュオの魔術師だったのですね!」



 悠斗の戦いぶりを目の当たりにしたスピカは尊敬の眼差しを一段と強めていた。

 

 何故ならば――。 

 トライワイドにおいて1人の人間が使用できる魔法は基本的に1属性と定められているからである。


 例外的に2属性の魔法を操る人間はデュオと呼ばれており、1万人に1人の確率で生まれてくるとされている。


 更に言えば――。


 3属性の魔法を扱う人間トリニティは100万人に1人。

 4属性の魔法を扱う人間カルテットは1億人に1人。


 といった具合にその希少度は100倍増しになって行く。



(本当は5属性全ての魔法を極めてしまっているのだが……黙っておいた方がいいよな)



 今回の遠征では『火属性』と『水属性』のみに絞った方が良いだろう。


 調子に乗って多属性の魔法を披露してしまうと、スピカに正体を勘づかれるリスクが跳ね上がりかねなかった。



「おいっ。どうするんだよ。ポッチョ! まずいことになっているぞ!」



 一方、その頃。

 パーティーのお荷物として完全に蚊帳の外に置かれたヒラリー&ポッチョは、悠斗たちに気付かれないように密談を交わしていた。



「このままだと俺たち、美味しいところ全部、ユウコっていう女に持って行かれちまうぞ!?」



 当初の計画では頼りになる姿を見せて、スピカのことをお持ち帰りしてしまおうと考えていた2人であったが、完全に予定が狂ってしまった。


 スピカ&ユウコのコンビは出現するモンスターの全てを危うげなく倒してしまうため、2人が助けに入る隙がないのである。



「へへっ。大丈夫だ。ヒラリー。ちゃんと手は考えているからよぉ」


「……本当か? お前の作戦だけが頼りなんだからしっかりしてくれよ」



 任せてくれと言わんばかりに自らの腹を叩いたポッチョは、休憩しているスピカ&悠斗の元に近づいていく。



「なぁなぁ。2人とも。ちょっといいかな」


「ん。なんだ? 金髪デブ?」


「き、金髪デブだと!?」


「ユウコさん! さ、流石にそれは失礼ですよ!」



 外見だけは美少女と呼んで差し支えないものだが、悠斗の言動には女性らしい可愛らしさが微塵も見られない。


 何時しかヒラリー&ポッチョは悠斗のことを敵視するようになっていた。



「実はオレ、この近くに珍しいモンスターが出る穴場スポットを知っているんだよね。良かったら寄っていかないか?」



 最近になって見つかった『その場所』は新人冒険者たちの中では、ちょっとした話題になっていたエリアであった。

 

 ラグール山脈に出現する魔物は、駆け出しの冒険者でも討伐可能な低ランクのモンスターのみとされているのだが、『その場所』だけは例外である。



(クククッ。特にこのユウコとかいう女には、少しばかり痛い目を見てもらわないとなぁ……!)



 2人がピンチに陥ったところを颯爽と助けに行けば、今からでも名誉挽回のチャンスはある。


 ポッチョの頭の中は既に2人の美少女とイチャイチャする妄想で一杯になっていた。



「いいぜ。案内しろよ。スピカもそれでいいよな?」


「は、はい。ユウコさんが一緒に行ってくれるなら何処へでも!」



 ちょうどラグール山脈(初級)のモンスターに対して物足りなさを感じていた悠斗にとって、ポッチョの提案は願ってもいないものであった。


 悠斗の一声によって4人は、強力なモンスターが出現すると噂されている穴場スポットに向かうのだった。


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