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一途な気持ち



「あそこです! あの柵の向こう側に北の山の温泉あります!」



 探索を続けること30分後。

 途中でアクシデントこそあったものの、悠斗たちは無事に目的地に着くことに成功する。



「それじゃあ。さっそく入りましょうか」


「せやな。のんびりしていると下山する頃には日が暮れてまうし」


「…………」



 現地に着いて確信したのだが、どう考えても目の前の温泉は男女で分かれているような雰囲気がない。



(も、もしかしてこれは自然に混浴プレイとなる流れでは?)



 期待していなかったと言うと嘘になるが、こんな理想的な展開になるとは予想外であった。


 悠斗はなるべく怪しまれないように気配を殺しながらソフィア&サリーの後についていく。



「ちょっと待ったぁぁぁ!」



 この展開に異議を唱えたのはミカエルであった。



「テメェ! コノエ! 何ナチュラルに入ろうとしているんだよ! お前はここでオレと留守番だ!」



 ミカエルの言葉は一見すると正論のようにも思えた。


 けれども、一方で日没までの時間が迫っているというのも事実である。

 男女で入浴時間を分けてしまうと帰り道の危険度が跳ね上がってしまう。



「困りましたね。私たちにはそんなに時間はありませんよ」


「オレは絶対認めない! 認めないからな! 年頃の男と女が混浴なんてするんじゃねー! 絶対にヤバイことが起こるに決まっている!」



 ミカエルの言葉を受けたサリーは不機嫌そうに頬を膨らませる。



「あのな。ミカエル。ウチらは真面目に武術の修行をしているんよ? そういう言い方は少し酷いんやない?」



 この7日間、誰よりも高い集中力で修業に取り組んでいた。

 サリーはそんな悠斗の姿を目の当たりにして、何時しか絶大な信頼を置くようになっていたのである。



「そうですよ。ユートさんはどっかのスケベなポンコツラーメンとは違います。紳士ですからね。私としても安心できます」


「大丈夫! バスタオルで隠すもんは隠しとるし、ソフィちゃんにはウチがついとるやん」



 もともと信用していたソフィア&サリーにとって、悠斗との混浴は吝かではないものであった。



「わ、分かったよ。その代り1つだけ条件がある」


「……条件?」


「オレも一緒に温泉に入る! まさかコノエが良くてオレがダメっていうことはないよな?」


「それはアカン。ミカエルはそこの柵の前で見張り役や」


「どうして!?」


「この温泉に含まれている成分は一般人にとっては毒やからな。エルフの秘薬に耐性のある人以外は入ることが禁じられているんや」


「温泉に入っている間、私たちは無防備ですからね。見張り役は必要だと思います」


「…………」



 ソフィアの貞操に対して誰よりも神経質であったミカエルは、分かりやすく落ち込んでいるようであった。



「大丈夫か? ミカエル」



 たった1人の男友達の異変に気付いた悠斗は、ミカエルの肩をポンと叩く。



「安心しろよ。今日の約束はちゃんと覚えているから」


「コノエ……!?」



 ミカエルは感動していた。

 ミカエルにとってはダメ元の相談であったのだが、悠斗がここまで真摯に受け止めていたとは思いも寄らなかったのである。



(……そうだよな。間違っていたのはオレの方だった)



 考えてみれば、恋人でもないのにソフィアのことを束縛しようとするのが誤りだったのだろう。


 この遠征が終わったら告白をしよう。


 恋人同士の関係になればコソコソと他人に釘を刺さなくても安心することが出来るに違いない。

 

 悠斗から励まされたミカエルは密かにそんなことを考えるのであった。


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