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パーティー結成




「つい先日のことです。《岩山の洞窟》に向かった冒険者パーティーが行方不明になる事件が発生しました」



 岩山の洞窟とは悠斗が以前にコボルトたちを討伐したエリアである。

 王都エクスペインからは徒歩圏内の距離に位置するので、駆け出しの冒険者が日銭を稼ぐ際に重宝していた。



「不審に思ったギルドは特別にチームを組んで調査を行いました。その結果……厄介なことに洞窟にオーガたちが住み着いていることが判明したのです」


「はぁ!? オーガって……あのオーガか?」


「俄かには信じた難いな。オーガというと、人里離れた山奥にしか生息しないと言われているのだぞ」



 エミリアの言葉は集まった6人の冒険者に対して衝撃を以て迎え入れられることになった。



「ラッセンさん。その……オーガっていう魔物はそんなに強いんですか?」


「ああ。高い知能。身長3メートルを超える巨体。何を取っても厄介なオーガは冒険者殺しの魔物として悪名高い」


「…………」

 


 となると気になってくるのは、どうして《岩山の洞窟》にオーガが住み着いたのか? ということである。


 一般的にモンスターの脅威度は、街に近いほど弱まっているとされている。


 オーガのような強力な魔物が大都市の近くに巣を作るなど異例のことであった。



「ギルドでは現在、岩山の洞窟に住み着いたオーガの生態に関する本格的な調査を始める予定でいます。しかし、その前にみなさんには……」


「なるほど。つまりオイラたちの仕事はオーガの数減らしっていうわけか」


「その通りです。ギリィさん。ギルドではオーガ1体につき20万リアの報奨金を設定しました。

 ここに集められたのは《彗星の世代》の中心となる実力派の方々です。どうか皆様の力を合わせてないでしょうか?」



 スライムを倒して宿代を貯めていた日のことが懐かしい。

 1体につき20万リアという報奨金を聞いた悠斗は、感慨深い気分に浸っていた。



「なぁ。エミリアさん。カネのことはどうでもいいんだけどよぉ……。もしこの依頼で1番に功績を挙げたら、オイラのことゴールドランクに推薦してくれよ?」

 


 エミリアの提示した条件に対して唯一不満を零したのは《百面相ギリィ》であった。


 冒険者として数多の実績を上げながらも、素行の問題でゴールドランク昇進が絶望的なギリィは自らの境遇に不満を抱いていたのである。

 


「そ、それは……」


「おかしいよなぁ。不公平だよなぁ。こー見えてオイラ、けっこーな実績を上げているはずだぜ? なのにどうして……何時まで経ってもゴールドランクに上がることが出来ないんだろうなぁ」



 困惑したエミリアに対してギリィは下卑た視線を送っていた。


 ゴールドランク昇進はエミリアの一存で決められる話ではない。


 ギリィはそのことを知った上で無茶な条件を振っていたのである。



「大丈夫ですよ。エミリアさん」



 どんな状況であれば美少女が困っている姿を見過ごすことはできない。


 そう判断した悠斗は静かに席を立った。



「――俺がいます! 絶対に俺が1番になって見せます! ギリィの要求が通ることはありませんよ!」


「ユ、ユートさん!?」



 果たして自分より年下の少年に助けられたのは何時以来だろうか?

 悠斗から力強い言葉を受けたエミリアは、悠斗に対してキラキラとした眼差しを向けていた。



「はああぁぁぁん!? 何を調子こいているんだよテメェ! ち~っとばかり強いからって良い気になるんじゃねーよ! 勘違いするな! 力だけでなんとかなるような仕事は、シルバーランクにはねぇんだよ!」



 ギリィの言葉はあながち間違いでもなかった。


 経験。知識。判断能力。協調性。


 ギルドから斡旋されている仕事は、その難易度が高まるにつれて、冒険者としての総合的な能力が求められる傾向にある。


 いかに戦闘能力が高くとも――。

 

 否。

 戦闘能力が高いが故に己の力を過信してしまい、命を落としてしまうこともあった。



(まったく……本当にキミは無茶なことをするんだな……)



 悠斗の言葉を聞いたラッセンは感慨深い想いに浸っていた。

 

 ――自分の気に入った女性を守るためなら手段を択ばない。


 その一本筋の通った行動は、超が付くほどの男嫌いのラッセンすらも感銘を与えるものであった。



「……ユートくんだけではないぞ。アタシがいる! 彼に足りない経験はアタシが補ってやるとしよう」


「私もいます! 私の力では微々たるものかもしれませんが、ユートさんのことを精一杯サポートします!」



 いかに自分の力に自信を持っているとは言っても3対1では分が悪い。


 立て続けに非難を受けたギリィは、押し黙ることしかできなかった。



(ケッ……。気に入らねぇぜ。コノエ・ユート。今に見ていろよ! オイラがテメェのこと地獄の淵に叩き込んでやるぜぇ……!)



 エミリアに対する嫌がらせを邪魔されたギリィは、密かに復讐の炎を燃やすのであった。



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